掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A

1.はじめに

      1−1 はじめに

      1−2 TBM工法の長所と欠点は何か

      1−3 なぜTBM工法で切羽の岩盤強度を求めるのか

      1−4 海外と日本とでTBM工法における違いはあるのか

      1−5 切羽前方予測手法とその現状はどのようになっているのか

      1−6 どのような応用があるのか  


1−1 はじめに

 TBM(全断面トンネル掘進機)工法は,順調にいけば高速掘進が可能であるが,その反面トラブルが発生しやすい.そこで,著者らはTBMの掘削抵抗(推力,トルク)から,切羽の岩盤強度を求めることを提案した.求めた岩盤強度と,別途評価した岩盤特性とを比較・検討した結果,切羽の岩盤特性をある程度表現できるものであることがわかった.引き続き,岩盤分類への利用,支保パターンの決定,ゆるみ領域の推定,などについても検討している.過去に10本程度のトンネルのデータを解析した.さらに,問い合わせのあった事例も10本程度あり,その中には,あまり合わないという事例もあった.これまでの経験から,使用上,いくつかの留意点が存在することがわかったので,研究の途上ではあるが,その留意点などに関してまとめた.


1−2 TBM工法の長所と欠点は何か

 TBM工法の最大の長所は,掘進速度が非常に速い点である.その他,切羽での作業がないため安全なこともある.最大の短所は,切羽での岩盤観察ができないため,軟弱部に遭遇しても掘削を続行してしまい,掘削停止などのトラブルが発生しやすい点である.いったんトラブルが発生すると,補助工法を行うための空間が充分でないので,人力で拡幅してから補助工法を行う場合も少なくない.


1−3 なぜTBM工法で切羽の岩盤強度を求めるのか

 TBM以外の山岳工法では切羽を直接観察することが可能であるが,TBM工法ではテール部で初めて,地山を観察することができる場合が多い.そのため,軟弱な箇所を掘削しているのに気がつかず,かなりの距離を掘削してしまい,軟弱な岩盤にTBM本体が拘束されたり,切羽の崩壊が生じたり,などのトラブルが生ずる.これを防止するため,TBM工法では切羽での岩盤強度を把握する必要がある.なお,シールド工法では,掘削している地山は軟弱であればかまわない(礫は除く)との思想で機械や支保が設計されているため,切羽の岩盤強度を求めることはさほど重要なことと考えられていない.


1−4 海外と日本とでTBM工法における違いはあるのか

 TBMの施工報告をみると,海外ではほとんど軟弱な岩盤が現れていない.他方,日本では逆に軟弱な岩盤が現れなかったトンネルはほとんどなく,TBM工法の成否は軟弱な岩盤がどのように現れるかにかかっている.そのため,日本においては切羽の岩盤強度の推定は重要な情報となりうる.ただし,台湾での掘削においてTBMが軟弱層に阻まれたため,本手法に関する問い合わせがあるなど,場所によっては海外でも重要な情報となりうるものと考える.


1−5 切羽前方予測手法とその現状はどのようになっているのか

 切羽の前方探査技術に対する研究もさかんに行われている.このうち,TSPと呼ばれる反射法地震探査技術はTBM工法と相性がよく,広く利用されている.トンネル掘削方向に対して,弱面や地層面が垂直に近い場合には,TSPによって検知しやすいが,同方向ないしはさほど角度がない場合には,検知しにくいことが指摘されている.また,探査距離も100 m程度が限界であり,高い掘削能力のTBMでは数日に1回ずつ調査する必要がある.さらに,TSPの調査は施工を停止して実施されるため,事前調査で地質が悪いのではないかと予測されている点に限って実施されていることが多い.このような背景のもとで通常の計測項目である,推力,トルク,切り込み深さから,リアルタイムに求まる岩盤強度は重要であると考える.


1−6 どのような応用があるのか

  TBMでは岩盤分類に応じて支保を決定するが,切羽観察ができないため岩盤の評価は難しい.提案した方法で求めた岩盤強度から,岩盤を分類することは可能と考えている.その他,地圧が大きい場合には切羽前方が緩むので,見かけ上の岩盤強度が低下する.これを利用したゆるみ領域の推定は可能であろう.また,地層境界の検知も可能であろう.