掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A  

2.基礎式と従来の研究

     2−1 従来の室内試験結果をまとめるとどのようになるのか

     2−2 岩石の一軸圧縮強度ではなく,他の物性値を用いた方がよいのではないか

     2−3 TBMの推力とトルクはどのようになるのか

     2−4 1としているのはなぜか 

     2−5 どのような式で岩盤強度を求めるのか

     2−6 岩盤強度とは何なのか.岩石の一軸圧縮強度との違いは何か

     2−7 推力とトルクから求めた岩盤強度の関係はどうなのか

     2−8 掘削抵抗の物理的背景は何なのか

     2−9 岩盤強度を求める式の定数はどのように決定するのか

     2−10 掘削体積比エネルギーとの関係はどうなのか


2−1 従来の室内試験結果をまとめるとどのようになるのか

 TBMの設計段階の基本的特性を調べるために,ディスクカッタを用いた室内岩石掘削試験が数多く行われている.ディスクカッタに作用する,主分力T(切削方向の力)および背分力F(カッタの推力)をまとめると以下の事項となる.

1)    背分力は岩石の一軸圧縮強度σCと比例する

2)    背分力は切り込み深さ0.5乗あるいは1乗に比例する

3)    主分力/背分力は,切り込み深さの0.5乗に比例する.

これらを式でまとめると以下となる.

=定数・σC (1)

=定数・σCn+0.5  (2)

ただし,0.5あるいは1.


2−2 岩石の一軸圧縮強度ではなく,他の物性値を用いた方がよいのではないか

 TBMの破壊機構は圧砕といわれ,隣接溝間の連結(side break)が重要なため,一軸圧縮強度ではなく,破壊じん性値やエネルギー解放率が妥当であるとの意見もある.しかし,従来の研究を整理してみると,岩石を代表する物性値として一軸圧縮強度を採用しているものが多い.本研究でも,切羽の岩盤の物性値として,なじみの少ない破壊じん性値やエネルギー解放率より,一般的によく用いられている一軸圧縮強度の方が妥当であると考えた.


2−3 TBMの推力とトルクはどのようになるのか

 ディスクカッタに作用する主分力の合計が推力となる.各ディスクカッタの回転半径と主分力の積の和がトルクとなる.式(1),(2)より

=Σ(定数・σC)  (3)

=Σ(定数・σCn+0.5) (4)

切羽での岩石の一軸圧縮強度が一定であるとすると,式(3),(4)は次式となる.

=定数・σC  (5)

=定数・σCn+0.5 (6)


 2−4 n=1としているのはなぜか

 切り込み深さのべき指数として,著者らは1として扱っており,式で示すと次式となる.

=定数・σC  (7)

=定数・σC1.5 (8)

 ここで1とした理由は,砕岩棒による数十cmにもおよぶ貫入試験において,推力と貫入量の間にほぼ線形関係がみられたためである.しかし,このべき指数を0.5として扱っている報告もみられる.式上ではかなり差が現れると考えられるためであろうが,「は1なのか,0.5なのか」という問い合わせが最も多い.物理的背景としてはかなり異なるが,実際,両者より求めた岩盤強度を比較してみるとさほど差がないというのが,実用上の答えである.これは,切り込み深さはさほど大きく変動しないため,=1としても=0.5としてもさほど影響は大きくないためである.違った側面からいうと,そんなに正確な判断ができるほど,この手法は精度がないといえるかもしれない.ただし,現在のトンネルにおける岩盤分類や支保パターンは4〜5分類程度であり,この程度の分類より精度はよいとの認識はもっている.


  2−5 どのような式で岩盤強度を求めるのか

 式(7),(8)を変形すると次式が得られる.

σC=定数・  (9)

σC=定数・1.5 (10)

上式において,定数さえ決定しておけば,掘削中に通常計測している,推力,トルク,切り込み深さより,リアルタイムに岩盤強度が測定できる.なお,Nelsonの提案したFPI(field penetration index)は,式(9)の右辺をカッタ数で除したものである.


2−6 岩盤強度とは何なのか.岩石の一軸圧縮強度との違いは何か

 式(1),(2)のσCは一軸圧縮強度,式(9),(10)のσCは岩盤強度である.TBMでは,亀裂,断層,風化などの影響を受け易いこと,また,式(9),(10)のσCは切羽全体の平均値なので,室内試験から求める一軸圧縮強度と区別して岩盤強度と呼ぶことにした.


2−7 推力とトルクから求めた岩盤強度の関係はどうなのか

 式(9),(10)から,それぞれ岩盤強度が求まる.両式から得られた値の関係を調べると,多少のばらつきはみられるものの,ほぼ同じ値となることが多い.両者が異なる場合には測定に問題があるか,ディスクカッタに岩片が粘着しているか,などの可能性があり,両式から求めた岩盤強度の比は異常を示す重要な情報といえる.


2−8 掘削抵抗の物理的背景は何なのか

ディスクカッタに作用する力は,1)岩盤の特性(岩盤強度として評価),2)TBMの操作(切り込み深さとして評価),3)TBMのデザイン(掘削径,カッタ数,カッタ間隔などにより決まる定数として評価),の3者の積とした.これは最も簡単な仮定であり,3者間の影響は十分考えられる.しかしながら,複雑にすることによって,たとえ正確な式ができたとしても,使用上使いにくい形となったりすることも予想される.そのため,ここでは簡単に積とした.


2−9 岩盤強度を求める式の定数はどのように決定するのか

 式(9),(10)における定数は,シュミットハンマー打撃値あるいは室内試験で得られた一軸圧縮強度と一致するように決定している.亀裂・風化の少ない区間において,両者を一致させることにより,比較的容易に定数を決定することができる.2-8で述べたように,式(9),(10)の定数は,TBMのスペック(掘削径,カッタ径,カッタ間隔など)によって決定される.既報では,TBMのスペックと,式(9),(10)の定数に関して調べた結果を述べた.まだ研究の途中であるが,式(9)の定数は,カッタ数およびカッタ径によって,式(10)の定数は,カッタ数,カッタ径および掘削径によって決定することができる可能性が高い.


2−10 掘削体積比エネルギーとの関係はどうなのか

 掘削体積比エネルギー(単位体積を掘削するのに要するエネルギー)により,切羽の岩盤特性を評価する場合がある.カッタヘッド1回転あたりのエネルギーは近似的に2πとなる.これを,1回転あたりの掘削体積πpD/4でわると,掘削体積比エネルギーSを得る.

=8/(pD       (11)

ただし,Dはトンネル径である.式(6)を代入すると次式となる.

=(定数)σC n−0.5            (12)

これからわかるように,0.5とすれば,σCは比例する.よって,掘削体積比エネルギーで切羽の岩盤特性を評価することは,式(6)において=0.5としていることと同じである.の値によって,の解釈が異なるので注意が必要である.