掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A  

3.測定における留意点

     3−1 測定において問題点はあるのか

     3−2 推力の測定における問題点は何か

     3−3 トルクの測定における問題点は何か

     3−4 推力およびトルクの変動は大きいが,実際はどうなのか

     3−5 切り込み深さの測定はどのようにするのか

     3−6 距離程の測定はどのようにするのか

     3−7 測定データの信頼性の検証方法はあるのか  


3−1 測定において問題点はあるのか

 式(9),(10)に,推力,トルク,切り込み深さを代入すれば,岩盤強度が求まる.しかし,その測定は必ずしも容易とは言えない.また得られた結果をそのまま式(9),(10)に代入して求めてしまいがちである.問い合わせのあった事例の中で,あまり合わないという事例の多くは測定上の問題であった.そのため,測定上の問題は重要であるため,この点について以下で述べる.


3−2 推力の測定における問題点は何か

 推力用シリンダの油圧に,シリンダ断面積を乗じて推力を求めることが多い.こうして求めた推力には,シリンダとピストン間やカッタヘッドと側壁間の摩擦力など,いくつかの摩擦力を主因とする誤差が紛れ込んでいる.カッタヘッドが切羽に接触していない状態で,ピストンを押し出せばこの摩擦力が求まりそうだが,摩擦力は運転条件や周囲の岩盤の状況などによって変化するため正確に求めることは困難である.そのため,例えば,摩擦力をリトラクト(後胴引き寄せ)力から類推できないかを検討している.従来の経験によれば,花崗岩ではディスクカッタに作用する荷重が大きいため,それ以外の力の影響は相対的に小さくなるので,摩擦力による誤差は小さい.しかし,泥岩などのように,推力が相対的に小さい場合には,摩擦力の影響が大きいので注意が必要である.


3−3 トルクの測定における問題点は何か

 式(10)におけるトルクは,掘削に要したトルクである.無負荷時にカッタヘッドを回転するのに必要なトルクが存在し,その値はかなり大きい.そのため,無負荷時のカッタヘッド回転に要するトルクを事前に算定し,それを引くことによって,掘削に要するトルクを求める必要がある.

カッタヘッドを回転させる方式として,電動機方式と油圧方式がある.電動機方式では電流よりトルクを計算するが,力率が変化するため,その影響を評価することが難しく,今後の改善が望まれる.特にインバータ制御で周波数を変化させてカッタヘッド回転速度を低速にした場合には,無負荷時のトルクが変化するため,注意が必要である.他方,油圧式の場合には油圧からトルクを算出している.電動式に比べ,油圧式の方がトルクは比較的,正確に求まる

3−4 推力およびトルクの変動は大きいが,実際はどうなのか

 掘削機械の掘削抵抗を測定すると,岩盤の変化による変動のほかに,短い周期の振動が観察される.TBMにおけるディスクカッタの移動速度は1 ms 程度で,ずりの大きさとしては最大で数cmであるので,1個のディスクカッタの推力およびトルクは十Hz 数十Hzの周波数で大きく振動する.推力やトルクの測定値は,全てのディスクカッタの積算値であるので振動は大幅に低減しそうであるが,実際にはかなりの振動を示すことがある.これまでの経験によれば,現在の測定器で無理のないサンプリング間隔(例えば数秒)でデータを採取し,数cm間(1分間程度)の平均値を用いれば,振動が除去された扱い易いデータとなる.


3−5 切り込み深さの測定はどのようにするのか

 切り込み深さは,主に次の2つの方法で求めることができる.

1)推力用のシリンダに変位計,カッタヘッドに累積回転計を設置する.

 切り込み深さ=シリンダ変位/その変位に要した回転数

 この場合,無負荷でカッタヘッドを回転した場合には差し引く必要がある.

2)推力用のシリンダに速度計を設置して,カッタヘッド回転速度から算出する.

 切り込み深さ=シリンダ速度/カッタヘッド回転速度

著者らが整理した結果,精度的には,現状のセンサーでは1)の方法の方が優れている.なお,分母の回転数は,当然ながら正確にもとめる必要がある.例えば,無負荷回転時の回転数を入れてはならない.2)では,シリンダ速度を速度計から求めるが,現在のところ速度計の精度的は,今1歩と思われる.


3−6 距離程の測定はどのようにするのか

岩盤強度の測定位置を正確に把握する必要がある.短距離ならば,TBMのシリンダ変位を積算して距離程を求めることができるが,距離が長くなると誤差が生じ易い.そこで,測量によって求められている距離程を用いて,時々補正する必要がある.

 シリンダ変位から求めた距離程により,地質記録と比較・検討していて,距離程が数m程度ずれているような事項がよく観察されており,あまりにも基礎的なことなので,見逃されがちだが,充分に注意する必要がある.

3−7 測定データの信頼性の検証方法はあるのか

 式(5),(6)より次式が得られる.

 /(0.5)=定数 (13)

式(13)では,岩盤強度の影響が削除されているため,正しく計測されていれば,/(0.5)は定数となる.そこで,得られたデータが正しく測定できているかを調べるため,推力,トルク,切り込み深さ,距離程などの測定項目に対して,/(0.5)が影響を受けているかを,図に描いて検討すればよい.

1)推力 岩盤強度が小さくなると,/(0.5)が小さくなることがある.例えば,膨潤性の高い岩盤を掘削した際,シリンダの圧力から求めた推力においてTBM本体側部の岩盤との摩擦力が無視できなくなるためである.この場合には,摩擦力を別の方法で測定し,推力を補正する必要がある.補正できない場合には,式(10)による推定を用いた方がよい.

2)トルク 岩盤強度が小さくなると,/(0.5)が大きくなることがある.例えば,粘着力の高い岩盤を掘削した際,ディスクカッタに岩片がくっついている場合やディスクカッタが偏摩耗しているような場合である.このような場合には,ディスクカッタを確認してそのような状況でないかを確認する必要がある.岩片を除去できない場合には,式(9)による推定を用いた方がよい.

3)カッタヘッド回転速度 カッタヘッド回転速度によって,/(0.5)が変化することがある.この理由としては,電流からトルクへの換算が正確でないことが考えられる.例えば,インバータ制御の電動式においてカッタヘッド回転速度を変化させると,このような事例をよく見かける.正確にトルクが求まるように改善する必要がある.

4)距離程 距離程によって,/(0.5)が変化することがある.例えば,カッタの形状や,掘削ずり排出用のスクレーパの形状を変えたりした時である.式(9),(10)でTBMの諸元が変化しない場合に限って比例定数とみなせるが,装備が変われば当然変化してしまう.そのような場合には,新たに定数を設定し直す必要がある.

 このように正しく測定していれば,式(13)の左辺は定数となり,式(9)および(10)から求めた岩盤強度は一致するはずである.しかし,異なる例が観察されることがあり,これを利用して異常を感知しようという試みがみられる.例えば,推力およびトルクから推定した岩盤強度を縦軸と横軸に図示することにより,視覚的に異常を検知している例がある.