掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A  

4.設計・施工における留意点

    4−1 岩盤はどのように掘削されるのか

    4−2 カッタ間隔と切り込み深さはどのようになっているのか

    4−3 カッタヘッド回転速度を変化させる利点は何か

    4−4 カッタヘッド回転速度はどのように設定すればよいか

    4−5 カッタヘッド回転速度を可変とする理由は何か

    4−6 カッタ摩耗の影響はどうなのか  


4−1 岩盤はどのように掘削されるのか

 ディスクカッタが切羽の岩盤に食い込み,ディスクカッタ先端の直下が圧砕される.圧砕された破砕片はディスクカッタ直下より逃れようとして,周辺岩盤に圧力を及ぼす.その時,適当な距離に隣接溝があれば,隣接溝との間の岩盤が,薄い岩片となり飛び散ってside breakがおきる.side breakが生じる条件について,Roxborough(1975)は,(隣接溝までの距離)/(切り込み深さ)が7以下で,しかも(一軸圧縮強度)/(せん断強度)より小さければside breakが生じることを,理論と実験から示した.


4−2 カッタ間隔と切り込み深さはどのようになっているのか

 カッタ径にもよるが,カッタ間隔(隣接溝までの距離)は7 8 cm程度が多い.また,外周に近づくほど,カッタ間隔は狭くなることが多い.切り込み深さは,岩盤条件やTBMの操作によって変わるが,0.5 cm 2 cmの範囲の値をとることが多い.カッタ間隔を8 cmとすれば,切り込み深さが2 cmの場合には4で,カッタが通過する度に,side breakが生じる可能性が高く(single-path cutting)0.5 cmの場合には16となるのでside breakが簡単に生じるとは考え難い.0.5 cmの場合には,カッタが何度か同じ場所を通過し,溝が深くなってはじめて,side breakが生じる(multi-path cutting).この場合,同じ体積を掘るのに要する回転数が増えるので,ディスクカッタが摩耗しやすくなることが多いし,掘削体積比エネルギーが大幅に増加する.


4−3 カッタヘッド回転速度を変化させる利点は何か

 カッタヘッド回転速度を岩盤強度(岩盤特性)に応じて変化させることにより,次のような利点を得ることができる.@低速回転の場合には高トルクを発生させることができ,高トルクが必要な粘着力の大きい岩盤も掘削することができる,Aずりの取り込み量を制御することによって切羽の崩壊を防ぐ,B適切な回転速度を選んでカッタ摩耗を押さえつつ,目標とする掘進速度を実現できる.


4−4 カッタヘッド回転速度はどのように設定すればよいか

 これまで入手した測定結果では,岩盤強度が大きい時には,カッタヘッド回転速度を最大とし,推力あるいはトルクを制限値近くになるようにした例が多かった.逆に岩盤強度が小さいと推力やトルクに余裕があるので,可能な最大掘進速度はずりの排出や支保の建て込みなどの後続設備によって決まる.さらに,Aで記した切羽の安定性,Bと関連するビット消費量の観点から比較的低い回転を選ぶ傾向が見られた.

 施工現場において,安全にかつ高速にとの配慮から上記のような設定がなされることが多い.しかしながら,硬岩掘削と軟岩掘削を,どのような掘削条件で行うのがよいかというのは,意見の分かれるところであり難しい点を多く含んでいる.この点は掘削機械の設計に際して最も基本的な点であり,ここで答えを出すことはできないが,重要で今後検討を進めるべき点であることを述べておく.

4−5 カッタヘッド回転速度を可変とする理由は何か

 国内でのTBM工法の多くは軟弱な岩盤を含むため,支保を行うことを前提としている.そのため,掘削径によって変化するが,最大掘進速度は通常1 mms程度の数字となっている.他方,海外での事例で多いが,軟弱な岩盤がほとんどなく無支保を前提としている場合には,掘進速度はもっと大きな値を設定している.例えば,リバーマウンテントンネルでは,できうる限りTBMの能力を大きくし,それに見合う掘削ずりの排出システムを導入し,最大掘進速度を2.5 mmsに設定している.軟弱な岩盤がほとんどなく,無支保で高速掘進が可能となるような場合には,カッタヘッド回転速度を最大にして掘進速度が最大となるように掘削が行われる.そのため,カッタヘッド回転速度を変化させる必要性はなく,TBMの構造も可変となっていない.国内のように軟弱な岩盤が多く,支保を前提としてTBMが用いられている場合に限って,TBMの能力に余裕が現れるため,軟弱な岩盤では低速回転,硬質な岩盤では高速回転と,カッタヘッド回転速度を可変にすることに意味が現れる.なお,日本と海外との違いは,請負(契約)方式が異なるのが一因との声も聞かれるが,適当な資料を持っていないので,指摘するだけにとどめておく.


4−6 カッタ摩耗の影響はどうなのか

 カッタ摩耗が生じると,式(1),(2)の定数が変化することが室内試験結果では指摘されている.しかし,TBMの機械データから,カッタ摩耗の影響は検知できなかった.この原因としては,最近のディスクカッタ先端の形状が平らとなり,摩耗してもさほど先端形状が変化しないためと考えている.ただし,砂岩のように石英分を多く含む岩石を掘削した際には,逆に先端が鋭くなり,式(1),(2)の定数が減少する場合があると予測する.