掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A

5.推定した岩盤強度の応用

    5−1 シュミットハンマー試験と推定した岩盤強度との関係はどうなのか

    5−2 シュミットハンマーと岩盤強度では異方性の影響が現れるのではないのか

    5−3 花崗岩における岩盤分類に応用できるのか

    5−4 なぜ花崗岩では岩盤分類へ応用しやすいのか

    5−5 複数の岩種が混在する場合には,岩盤分類はどのようにすればよいのか

    5−6 切羽前方のゆるみ領域の推定に使えるのか

    5−7 地層境界を把握することは可能か  


5−1 シュミットハンマー試験と推定した岩盤強度との関係はどうなのか

 掘削抵抗より求めた岩盤強度は,シュミットハンマー打撃値から換算した岩盤強度と比較的一致する.シュミットハンマー試験で現れる岩盤特性は数cm程度の寸法の物性を代表しており,室内強度試験で使用される試験片と同程度の寸法である.室内試験では割れ目のない部分を選んで試験をするのに対して,シュミットハンマー打撃試験は割れ目を含んだ岩盤で行う.数cm程度の領域に割れ目が存在した場合には,割れ目の数・状態や風化度合いに応じて打撃値は当然低下し,これから求めた強度も低下する.よって,シュミットハンマー打撃試験では,割れ目間隔と風化度合いの影響を受ける.他方,TBMの掘削抵抗に影響を与える領域は切り込み深さの数〜10倍程度までと考えると,掘削抵抗から推定した岩盤強度は切羽から数cm程度の岩盤特性によってほぼ決定されると考えられる.また,この場合も,岩石強度(コア強度)に割れ目の影響(間隔と風化度合い)が付加されたものが,岩盤を掘削する際の掘削抵抗として現れる.このように,掘削における掘削抵抗とシュミットハンマー打撃値は,同程度の領域の物性を表していると考えている.

 シュミットハンマー打撃試験は,試験を実施する局所的な場所による,ばらつきが大きい.そのため,数回の平均値を用いるが,それでもばらつきがどうしても現れる.他方,掘削抵抗は数十個のカッタ抵抗の積算値として現れるため,比較的ばらつきは小さく,利用しやすい特徴を有している.


5−2 シュミットハンマーと岩盤強度では異方性の影響が現れるのではないのか

 掘削抵抗はトンネル進行方向に対しての岩盤特性であり,シュミットハンマー打撃試験はトンネル側壁で行っているため,トンネルの進行と鉛直な方向の岩盤特性である.割れ目は卓越した方向に集中するので,岩盤強度には異方性の影響が現れることが考えられる.そのため,掘削抵抗から推定した岩盤強度と,シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度とで差があると考えられるが,現段階ではその影響を見積もるまでには至っていない.


5−3 花崗岩における岩盤分類に応用できるのか

 岩盤分類は岩盤をいくつかの等級に分け,支保の選定などに役立てることが目的であり,TBM工法では岩盤分類と支保パターンはほぼ一致する.花崗岩(変成も含む)のトンネルでは,既報で岩盤強度をいくつかの等級に分けることによって,ほぼ実際の岩盤等級と一致することを示した.また,掘削抵抗より求めた岩盤強度は,岩盤の損傷度合いや湧水量によっても変化していることも確認しており,推定した岩盤強度により岩盤分類が可能であると考えている.


5−4 なぜ花崗岩では岩盤分類へ応用しやすいのか

 岩盤は様々であるが,支保などを施す場合等の便利さを考えて,順序づけることがしばしば行われる.ここでいう岩盤分類とは,こうして順序づけて,岩盤の評価をスカラー量とした,岩盤分類の中では最も単純なものを指す.岩盤の分類方法は多数あるが,その際,@岩石の強度,A割れ目の性状,はほとんどの岩盤分類で考慮されている.さらに,B岩石の種類であるとか,C岩盤が塊状か層状かなど種々の事項が考慮される.掘削抵抗より求めた岩盤強度には,BやCに関する情報は含まれておらず,@とAに関する情報のみ含まれている.

 花崗岩に限ればBについて考慮する必要がなくなり,Cは塊状として構わない.これまでに著者が整理した例は,いずれも風化の度合いが比較的軽微な花崗岩であり,@はさほど変化しておらず,Aにかかわる割れ目間隔とその近傍の風化度合いが,主として変化していた.この様に比較的単純な条件下であったことが幸いして,掘削抵抗より求めた岩盤強度と,従来の方式で求めた岩盤分類との相関がよかったと考えている.

5−5 複数の岩種が混在する場合には,岩盤分類はどのようにすればよいのか

 5−4で述べたように,掘削抵抗から求めた岩盤強度に含まれていないが,多くの岩盤分類で考慮されている事項があり,岩盤強度のみから岩盤分類を行うことは困難である.しかしながら,岩盤分類を行う際の有力な情報源となる可能性はある.例えば,岩盤強度を一軸圧縮強度で正規化した値は,5−4のAを表す指標である可能性が高い.既報では,強度の異なる2種類の安山岩(200MPa50MPa)が混在するトンネルにおいて,従来の方式で行った岩盤特性の評価結果と,正規化した岩盤強度を比較したところ,両者の相関は比較的良好であった.


5−6 切羽前方のゆるみ領域の推定に使えるのか

 TBMによる掘削ではカッタの交換・トラブルや休日などで,切羽の進行が一時的に止まることがしばしばある.切羽は数時間から数日程度無支保状態で放置される.岩盤が軟弱な場合には時間とともに切羽前方にゆるみ領域が拡大していくことが考えられる.既報では切羽の進行が一時的に停止した前後での,掘削抵抗から推定した岩盤強度について調べた.その結果,いくつかの箇所で停止前の値に比べ,停止後では岩盤強度が低下し,数cmから50cm程度掘削する間に停止前の値に戻っていた.このような現象は軟弱な粘板岩層で見られ,硬質な砂岩層では見られなかった.以上の事項から,掘削開始直後の岩盤強度の低下はゆるみ領域の拡大のためであると推定した.ゆるみ領域の推定は非常に難しい.施工中のTBMの掘削抵抗から推定できれば,今後有効な方法となるであろう.


5−7 地層境界を把握することは可能か

 Nelsonの文献には,トンネル方向に約6 mの間に,頁岩(平均的な一軸圧縮強度68 MPa)から石灰岩(130 MPa)に徐々に変化している(地層境界面はトンネル軸に対して約45゜傾斜)時の推力および切り込み深さが示されている.この結果から岩盤強度を推定すると,地層境界では頁岩の強度から石灰岩の強度へとほぼ線形に増加していた.この事例のように,地層境界を把握できる可能性はある.ただし,亀裂の影響などが混在している場合には,その影響も合わさるため,注意が必要であろう.