掘削抵抗を利用した岩盤強度の推定に関するQ&A  

6.今後の課題とまとめ

    6−1 式(1),(2)でnが定まっていないことをどのように考えているのか

    6−2 機械データの測定に関する今後の課題は何か

    6−3 本手法の岩盤分類への適用で,今後目指すものは何か

    6−4 岩盤分類に対する今後の考えはどうか

    6−5 連続データとして岩盤強度が得られる利点はあるのか

    6−6 最後の一言  

6−1 式(1),(2)でnが定まっていないことをどのように考えているのか

 ディスクカッタを用いたTBMのみならず,ブームヘッダなどで使われる切削ビットでも,背分力が切り込み深さの1乗に比例するとする説と,0.5乗に比例するとする説があり未だ決着がついていない.この原因は,掘削ないし切削条件のみならずデータの採取方法,さらにはデータの整理方法によっても結果が微妙に変化するからである.この問題に対して回答する用意はないが,影響しそうな要因を列挙しておく.

1)カッタ先端形状

2)隣接溝間の連結の有無

3)掘削抵抗測定用ロードセルの剛性

4)データ整理にあたってピーク値を重く見た整理をするか,あるいは平均値を重くみた整理をするか

この問題は長年にわたって議論されているが,まだ解決されていない事項である.そのため,今後すぐに解決されるとは考えられず,地道な検討していく所存である.しかしQ9で述べたように,1としても.0.5としても求めた岩盤強度にはさほど大きな差がないため,実用的にはどちらを用いてもかまわないと考えている.便宜上,両者の中間的な値を用いることも考えられる.著者らは,系統的にデータを整理していくことを考えているため,当分の間1として扱っていくつもりである

6−2 機械データの測定に関する今後の課題は何か

 3章で測定における留意点を述べたが,いくつかの課題が残されている.

・推力 いくつかの摩擦力が紛れ込んでいるため,その除去をどのようにするのか.

・トルク 掘削に要したトルクをいかに正確に見積もるか.特に電動機方式に関して検討する必要がある.

 これらの課題はすべて,ディスクカッタに作用した力やトルクを正確に推定するためのものである.そのために現状の測定方法ではなく,ディスクカッタに直接,荷重計などのセンサーを設置し,測定する方法が考えられる.確かに現状より正確な値が得られることとなるが,センサーの受ける環境が劣化するため,耐久性からは問題があり,現実的でないと考える.そのため,比較的信頼性の確立した現在の計測手法を発展させ,問題点を解決する方向に進むことが望まれる.


6−3 本手法の岩盤分類への適用で,今後目指すものは何か

 岩盤分類はハンマー打撃試験や地質観察によって,主に人間が主観的に判断している.人間の主観的な判断の特性として,数m程度の近傍の変化に対しては鋭敏に察知する能力は高いが,かなりの時間が経過して数kmにもおよぶトンネルですべて同じように判断できるかといえばこれは難しいといえよう.そのため,岩盤分類には客観的な指標が必要である.

 客観的な判断ができれば,トンネルごとに個別に行っている分類基準を統一することが可能であり,今後設計・施工管理業務の簡略化の道が開けるものと思われる.また,トンネル掘進の自動化を想定した場合にも,切羽の岩盤特性把握は必要である.


6−4 岩盤分類に対する今後の考えはどうか  

 5-3,4,5で,推定した岩盤強度から岩盤分類を行う方法の例を示した.5-3と5-4では花崗岩に関して単純に岩盤強度を分類すれば,従来の方式で得られる岩盤分類を比較的再現できる可能性があることを述べた.5-5では安山岩に関して,推定した岩盤強度と,岩石強度(コア強度)をあわせた手法を紹介した.

 TBM工法では主に支保パターンを決めるために岩盤分類を行うので,支保パターンを念頭においた岩盤分類を行う必要がある.岩盤強度は岩石強度(コア強度)に亀裂・風化による劣化度合いが合わさったものであり,支保パターンと1対1対応するものではない.今後は,岩盤強度を分類要素の1つとして,他の分類要素と組み合わせて,より効率的な岩盤分類をしていく必要があろう.

6−5 連続データとして岩盤強度が得られる利点はあるのか

 本手法はTBMで掘削さえすれば,連続データとしてトンネル全体の岩盤強度が得られる.岩盤特性を評価する指標として,一軸圧縮強度が最も一般的であり,数多くのデータが存在している.しかしながら,トンネル全体からコアを採取して室内試験を実施することは困難であり,その代役としてシュミットハンマー打撃試験がある.しかしシュミットハンマー打撃試験でもばらつきが多い点と,簡単とはいえトンネル全体で実施することは非常に手間がかかる.そのためか,トンネル全体にわたって統一基準によって岩盤特性を定量的に表されてはいない.

 本手法により連続的で大量の岩盤強度というデータを取得することができた結果として今後,様々な応用が考えられる.例えば,地下構造物の設計では亀裂などの影響で,場所により強度のばらつきが存在することは認識しているが,どのような分布であるのかさえ把握されていないため,ばらつきの影響を取り込んだ扱いはほとんどなされてこなかった.本手法で得られた岩盤強度の分布を調べたところ,すべてのトンネルで対数正規分布をしていることがわかり,今後,これらに応用できるものと思われる.また,岩盤強度の距離的変化を調べることによって,例えば,亀裂による岩盤強度の変化以外に,数百mにもおよぶような周期も観測された事例もあり,地質的構造の解明にも一助できるものと思われる.これ以外にも様々な用途に利用できるものと思われる.


6−6 最後の一言

 なるべく現場の方に受け入れられやすいように,単純な式で表現しようと考え,式(9),(10)による岩盤強度の推定手法を提案した.式(9),(10)は,切り込み深さが大きくなれば掘削抵抗が大きくなり,岩盤が硬くなれば掘削抵抗は大きくなるということであり,定性的には非常に常識的なものである.式が単純であるためか,比較的多くのトンネルで整理していただき,その結果としてはよく一致したという意見から,全くだめであるという意見までいただいた.TBMでの掘削を考えた場合,非常に複雑な現象が絡み合った結果として,掘削抵抗が得られるため,決して式(9),(10)のように単純なものとはならない.しかしながら,上記で述べたQ&Aを考慮いただければ,ある程度の精度で岩盤強度は求まるものと考えている.これ以外に著者らがまだ気がついていない事項などが多数あると思われるが,今後データの蓄積が進むことによって徐々に明らかになるものと思っている.