岩石力学 > 内圧を受ける円形坑道の長期安定性の検討 > 4.考察
4.考察

シミュレーションで現れた次の事項は重要と考えられる.すなわち,最初緩み領域が坑壁より順次奥へと広がるが,その後内圧が増加すると緩んだ領域は半径方向に圧縮されて周方向に伸びようとする.その結果,内圧の上昇にともなってσθ(ri)が上昇する場合のあることが,シミュレーション結果で示された.これは,坑壁近傍のコンプライアンスが低下した状態で内圧が加わると,坑壁でのσθ(ri)が圧縮になる事を意味している.このような事がありえるかどうかを,図14のように簡略化したモデルによって検討する.

図14では,坑道径riよりrfまでがコンプライアンスが異なる領域であり,この部分のコンプライアンスをλi,ポアソン比をνiと記す事にする.rfより外径ro=300riまでのコンプライアンスλoとポアソン比νo=0.2は,初期値のままとする.このとき,rfにおける半径方向の応力σr(rf)は,次式で与えられる(日本機械学会,1977;鵜戸口ら,1968).

σr(rf)=A/B

A= 2σr(riiri2/(r2-ri2)+2σr(r0r2/(r2-r2

B=λi (1-νi)+λ0 (1-ν)+2λiri2/(r2-ri2)+2λ0r2/(r2-r2) (9)

(9)式から計算したσr(rf)を次式に代入すれば,坑壁でのσθ(ri)が求まる.

σθ(ri)=σ(ri){(r2+ri2)/ri2}/{(r2-ri2)/ri2}+2σ(r)(r2ri2)/{(r2ri2)-1} (10)

比較的わかり易いと思われるσr(ri)/σr(r)=2の場合について検討してみる.この場合,全域のコンプライアンスとポアソン比が一定ならばσθ(ri)=0のはずである.

ポアソン比は(8)式にしたがって変化するとして,(9)式と(10)式より計算した結果が図15である.横軸はλであり,r/riを1.1〜2.0まで変えて計算したときのσθ(ri)/σθ(ro)を示した.r/riが比較的小さい場合,計算結果は右下がりの曲線となる.r/riが1.7ではほとんど横軸に平行となり,r/riがそれ以上になると計算結果は右上がりの曲線となる.この計算結果より,r/riがある範囲内にとどまっていれば,外圧σr(r0)の2倍という大きな内圧σr(ri)を受けていても,坑壁の周方向応力σθ(ri)は圧縮となる場合があるといえる.この結果は,多くの場合,内圧が大きくなるとσθ(ri)が上昇するとのシミュレーション結果と傾向が一致しているといえよう.また,図13のように坑壁からかなり奥まで岩盤が損傷した場合には,σθ(ri)の上昇はあまり期待できないことの定性的な説明にもなっている.

計算機シミュレーションによれば,ポアソン比が計算結果に及ぼす影響が大きかった.これを定性的に検討するために,他の条件は図15の場合と同じとして,ポアソン比は全域で初期値0.2であるとした計算結果を図16に示す.この場合は,rが坑壁のごく近傍にとどまっている場合を除いてσθ(ri)は引張となることがわかる.計算機シミュレーションでも,ポアソン比を同様に0.2のままとすると引張破壊が奥まで進行した.図16に示した結果は,この計算機シミュレーション結果をある程度説明しているとみなされる.

(9)式と(10)式は多くの定数を含み,σr(ri)/σr(r)=2と仮定した場合でも,r/riやポアソン比の初期値の及ぼす影響について検討する必要がある.この内,r/riは,その値を大きくしても計算結果がほとんど変わらぬように300とした.ポアソン比の初期値を変えた場合も検討したが,初期値が大きいほど坑壁の周方向応力σθ(ri)が圧縮となり易いという予想通りの結果を得た.

なお,古くより内圧を受けた円筒の塑性が,検討されてきた.この場合は内圧が増加するのに従ってσθ(ri)は徐々に減少し最低値(引張応力)を取った後,上昇に転じる(Hill, 1971).本研究のシミュレーションと関係のある事項であるが,閉じた解析解はないので指摘するだけにとどめる.



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