岩石切削におけるビット摩耗と切削抵抗
1.はじめに

岩盤の掘削方法として発破と機械化掘削とがある.前者は従来よりおこなわれており在来工法と呼ばれることがある.この工法では,通常,さく岩機によって孔を空けた後,装薬,発破,ずりの排出・運搬といういくつかの作業を繰り返しおこなうので,いくつかの機械の入れ替えとそれに伴い無駄時間が発生する弱点がある.しかしながら,融通性に富むので種々の岩盤条件に適用可能である上,エネルギー効率がよく,熟練した作業員が確保できる場合には有力な方法といわれている.一方,安全性や速度に優るトンネル掘進機やブームヘッダを使用した機械化掘削・切削が徐々に増加しつつあるが,その際の問題点としてビットに関連する事項がいくつか挙げられている.例えば,ビットの摩耗の進行状況,ビットの摩耗に伴う切削抵抗の変化,適切なビットの選択方法などである(Verhoef, 1997).機械化掘削・切削の進歩には,ビットに関わる問題が極めて重要であるとの認識は多くの技術者や研究者の間でなされているが,この問題に対する適当な研究手段が開発されているとは言えず,未知のまま残されている事項の多いのが現状といえる.

ビットに関する問題を研究する手段の一つとして,旋削試験がある.この試験では,岩石を旋盤のチャックで把持して,ビットで切削をする.古くから行われていた方式では,円筒形の岩石試験片の側面を切削していたが,この方法ではチャックより離れた部分を切削しているときに,試験片が曲げにより折損することが多く,限られた岩種にしか適用できなかった.そこで,著者らは岩石試料の端面を切削(正面削り)する試験方法を開発した(大久保ら,1997).この方法を採用すると,短い試験片で済むし,折れやすい岩石の試験も可能である.既報(大久保ら,1997)にて,この試験方法で求められた岩石の摩耗能について論じたが,その結果によれば,岩石の摩耗能を調べるための有力な方法の一つと言えることがわかった.また,岩石の珪酸ないし石英の成分が多い場合や強度が大きい場合ほど,摩耗能は大きくなる傾向があることもわかった.

引き続き提案した試験方法を用いた検討を進めるため,切削抵抗(3成分)が測定できるように,試験装置を改良した.切削抵抗を測定することにしたのは,ビット摩耗による切削抵抗の変化に関する基礎データを収得することと,切削抵抗を観察することによりビットの摩耗の進行状況を連続的に把握できるのではないかと考えたからである.この改良した試験装置を用いた結果について本稿で述べることにする.なお,研究にあたっては,金属を切削したときとの相違に着目した.その理由は,@岩石の切削は特殊なものと考えられ,他の分野との交流が十分でない.本当に特殊なのかどうかを確かめる必要があると考えた,A金属の切削に関する試験結果は多く発表されているが(Boothroyd, 1975),ほとんどが冷却と潤滑用の切削油を使用した条件下での結果である.これを無くした条件下で,岩石の試験結果と比較・検討することは重要と思われるが,これに類する研究は著者の知る限りなされていない.金属と比較しつつ岩石の切削を論ずる点に本研究の特徴があると考える.