一軸圧縮荷重下での岩石の一般化した応力緩和特性

2. 一般化した応力緩和試験の物理的意味


図1に示すように,天盤を介して一定の荷重Fを受けている鉱柱(R)に弾性体よりなる支保(E)を打設する.すなわち,鉱柱に並列に支保を挿入した時を想定する.時間の毛かに伴い粘性的挙動を示す鉱柱の変位が増加する.その際,支保も同じだけ変形すると仮定する.変位の変化量をΔY,これに伴い鉱柱および支保の荷重の変化量をそれぞれΔF,ΔFとすれば以下の式が成り立つ.

ΔF +ΔF = 0 (1)

ΔF = k ΔY (2)

ただし,kは支保剛性である.(1),(2)式より次式が得られる.

ΔF = −k ΔY (3)

は正の定数であり,鉱柱の変位は増加するので,(3)式より鉱柱の荷重は減少することがわかる.ここで,弾性領域での鉱柱の剛性をkとし,

γ=ΔF/(k ΔY) (4)

とγを定義し,以降γを緩和方向係数と呼ぶ.(3),(4)式より

γ= -k/k (5)

であるので,緩和方向係数γは支保剛性と鉱柱の剛性の比であるともいえる.(4)式を書き換えると次式のようになる.

ΔF = γk ΔY (6)

(6)式よりわかるように緩和方向係数γは初期の応力−歪曲線の傾きを1としたときの岩盤の緩和方向の傾きである.γ=±∞は支保剛性が無限大の時に相当し,岩盤の変位が一定に保たれた状態(応力緩和)で荷重が次第に緩和していく.また,γ=0は無支保の場合に相当し,岩盤の荷重が一定に保たれた状態(クリープ)で,クリープ変位が次第に増加していく.実際の支保剛性は有限であるので,図2のABのように,応力緩和とクリープの中間の方向,すなわち岩盤荷重の減少と変位の増加がともに生じる.この場合,γは負の値である.

γ<0   (7)

次に,図1において支保のかわりに,強度破壊点以降の鉱柱(クラスT特性であるとする)を想定する.ただし,強度破壊点以降の鉱柱は粘性を示さず,負値の剛性を持つばねとして振る舞うとする.kE<0としても,(1)〜(6)式は成立し,変位が増加するに従い,強度破壊点以降の鉱柱は次第に支持能力を失っていく.これに伴い,強度破壊点以前の鉱柱は,図2のACに沿って変形を増す.すなわち,変位が増加するにつれて荷重が増加することになり,やがて破壊に結びつくことが多いと思われる.このような変形挙動は実際の岩盤構造物の破壊を検討する際に重要であると考えられる.この場合のγの範囲は次のようになる.

0<γ<1   (8)

次に,図3のように強度破壊点以前の鉱柱(R)と強度破壊点以降の鉱柱(E)が重ねておかれ,両端の変位が一定に保たれている場合を想定する.この場合も先ほどと同様に,強度破壊点以降の鉱柱は粘性を示さず,クラスT特性であり,見かけ上,負のばねの特性を示すとする.この場合,次の2つのい式が成立する.

ΔY +ΔY = 0 (9)

ΔF = k ΔY (10)

(9),(10)式より

ΔF = -k ΔY (11)

であり,(5)式のγを代入すると(6)式と同等の式が得られる.

強度破壊点以降の鉱柱では破壊が進行し,変位は増加し荷重は減少する.他方,強度破壊点以前の鉱柱の荷重は,強度破壊点以降の鉱柱の荷重と同じだけ減少する.強度破壊点以前の鉱柱と強度破壊点以降の鉱柱の両者の変位の和が一定であるので,強度破壊点以降の鉱柱の変位の増加に従い,強度破壊点以前の鉱柱の変位は減少する.この場合,図2のADに示すように,荷重と変位がともに減少する.この場合のγの範囲は次にようになる.

1<γ    (12)

これまでに次に示す3通りの場合について,例を挙げて説明した.
1)変位が増加し,荷重が減少する(AB)[γ<0]
2)変位が増加し,荷重が増加する(AC)[0<γ<1]
3)変位が減少し,荷重が減少する(AD)[1<γ]

1),2)の境界がクリープ状態(γ=0)であり,1)と3)の境界が応力緩和状態(γ=±∞)である.すなわち,一般的な時間依存性変形を考えた場合,クリープ状態あるいは応力緩和状態は特殊な場合である.

ここまでは,図1あるいは図3のように境界条件として,荷重一定と変位固定を想定したが,この境界自体が(6)式のように荷重,変位ともに変化する場合がある.しかし,この場合でも上と同様の計算を行うことにより,結局,粘弾性挙動を示す岩石の応力−歪関係は(6)式のように表現できる.