非対称シリンダを有するサーボ試験機での岩石試験の制御性
5.考察

5.1 シリンダ室の圧力の変化

2.2で示した無負荷時の周波数応答で0.1Hzの場合には、比較的載荷速度が大きく、油の漏れの影響は相対的に小さいと考えて、その時の圧力の振動の上限と下限を図8に▲で示した。図からわかるように、実験結果と、(11)、(12)式で計算した圧力とはよく一致している。0.01Hzの場合には、比較的ゆっくりとした速度であるため、油の漏れが生じ、0.1Hzに比べて圧力の変動が小さくなったものと考えられる。

無負荷時で変位を一定とした場合の圧力を図8に●で示した。図からわかるように、この値は(8)式の載荷速度が0の場合の圧力とほぼ一致している。

図9に載荷速度10−5−1の時の、シリンダ室の圧力と、岩石の応力の関係を示す。応力が0の時のシリンダ室の圧力に若干の差は見られるものの、岩石に関係なく、応力の増加に従い、シリンダ室の圧力はほぼ同じように変化している。図9には、(7)式で示した変位速度が0の場合のシリンダ室の圧力と応力の関係も示した。若干、(7)式の圧力の方が小さいものの、ほぼ実験結果と一致している。これは、載荷速度が非常に小さいために、サーボ弁を流れる流量Q、Qと、シリンダでの油の漏れや負重合による油の移動が同じとなり、 Ps=P+Pの関係がほぼ満たされていることに起因する。

次に、図10に載荷速度10−2−1の時の、シリンダ室の圧力と岩石に作用している応力の関係を示す。図には、(9)、(10)式で示した変位速度が大きい場合のシリンダ室の圧力と応力の関係も示した。4.で述べたように、(9)、(10)式は油の漏れがない場合のシリンダ室の圧力を表すため、シリンダが引きの場合には(9)式、押しの場合には(10)式に従い油圧は変化する。実際には油の漏れの影響があるため、(9)式はシリンダ室の圧力の上限を、(10)式は下限を表すことになる。すべての岩石で載荷直後から圧力の低下が見られるが、三城目安山岩、稲田花崗岩、秋吉大理石の順に圧力の低下が早い。(1)式に示されるような応力帰還試験での弾性領域では、載荷速度に(1+α)を掛けたものが、目標となる歪み速度となる。よってα=0とした秋吉大理石では、α=0.4とした他の岩石に比べて、目標となる歪み速度が小さいために圧力の低下が小さくなったものと考えられる。三城目安山岩と稲田花崗岩は、αの値が同じであるので、弾性領域での目標となるひずみ速度は同じであるが、試験片の剛性が稲田花崗岩の方が大きいため、設定通りに載荷することができず、歪み速度が小さくなる。このため、三城目安山岩に比べて稲田花崗岩の方が圧力の低下が遅くなると考えられる。

図10の強度破壊点以前では、シリンダ室の圧力の低下は(10)式で示される押し方向に載荷速度が大きい場合の曲線に徐々に近づくようになっていることがわかる。他方、強度破壊点以降では、三城目安山岩および秋吉大理石は(10)式に近いような経路をたどっているが、稲田花崗岩では急激に破壊したため、圧力はあまり変化していない。三城目安山岩では強度破壊点以降で応力が10MPa付近で急激に圧力の増加が見られ、(9)式に近づこうとしているのもわかる。これは図6(a)の応力−歪み曲線でこのあたりで急激にシリンダが引き方向となっているため、(9)式に示される圧力に変化しようとしているためである。

載荷速度が小さい場合には、岩石に関係なく岩石に作用する応力によってシリンダ室の圧力が(7)式で決定されるのに対して、載荷速度が大きい場合には、岩石によってもシリンダ室の圧力が変化する。またクラスT岩石では強度破壊点以降、進み位相となるため、変位速度が大きくなりやすく、(10)式で示される圧力に漸近しやすくなる。他方、クラスU岩石では、強度破壊点以降で、応力が急激に低下するため、(2)式で示される誤差信号は進み位相となるが、シリンダの圧力の変化が現れる余裕もなく、破壊が進行してしまうことがわかった。

5.2 非対称シリンダでの制御性の劣化

文献(阿波ら,1985)でも記されているが、サーボ試験機では非対称シリンダを有することは望ましいことではない。載荷速度を大きくする必要がある場合にはなるべくなら、対称シリンダを用いるべきである。その理由としては、以下の2点が挙げられる。

1)クラスT岩石で載荷速度が大きい場合には、強度破壊点を越えた直後は進み位相となり、かなり応力が低下した段階で進み位相を改善するために引く方向にシリンダは移動する。またクラスU岩石では、強度破壊点直後で押しから引きに変化させなければならない。このように岩石試験では、強度破壊点以降シリンダが押しから引きに移動方向が変化する。4章で述べたように、シリンダの押しではPs>P+P、引きではPs<P+Pとなる特性がある。そのため、押しから引きになるためには、シリンダ室の圧力は急激に上昇する必要がある。シリンダ室内の油の体積弾性率を考慮すると、圧力が完全に上昇するためには設定にもよるが数〜数十cm程度の流量が必要となる。この流量が供給されるには、かなりの時間がかかり、今回使用したサーボ弁では最大流量が流れても1s程度を要する。非対称シリンダを用いることによって、この時間遅れが余計に生じてしまう。

2)対称シリンダでは供給圧を上昇させると供給流量が増加し、見かけ上フィードバックゲインを大きくした効果が現れる。非対称シリンダの押しではPs>P+P、引きではPs<P+Pとなるため、この場合、押しに比べて引きではフィードバックゲインを大きくしているような効果が現れる。これはxの符号によりゲインが変化する非線形的な要素となり、中立点付近の制御性は劣化する。

しかし、容量などの問題で非対称シリンダを用いた場合には、なるべく、載荷速度を小さくすることが制御性の向上につながる。これは対称シリンダについても同じことがいえるが、載荷速度が大きい場合には対称シリンダを用いた場合より、上記の2つの理由で制御性が劣化する。そこでシリンダ室の圧力変動をなるべく小さくすることが望まれる。すなわち非対称シリンダを用いた場合、載荷速度が小さい場合の(7)式で示される圧力変動が理想的であると考える。漏れ流量を大きくするか、サーボ弁の負重合を大きくすることによって、(7)式に近い形となる。漏れ流量の影響を調べるために、中野(1963)ではシリンダの両側を通じさせる細孔をあけている。これにより漏れ流量を大きくさせることが可能である。ただし、あまり過度に行った場合には定常偏差を大きくさせる効果も現れるため、ゲインを大きくしてそれを防ぐなどの注意が必要である。

押し引きで圧力の変動を抑えるために、引き側に比べて押し側のサーボ弁の絞りを緩めて、流量定数を大きくすることも考えられる。理想的には断面積比と同じだけ変化させれば、押し引きに関係なくPs=P+Pを満足させることができる。

2)の押し引きで見かけ上、フィードバックゲインが変化する事項に関しては、シリンダ室の圧力に応じて、フィードバックゲインを変化させることが考えられる。すなわち、(5)式のように、圧力差の平方根に流量が比例するので、シリンダ室の圧力PとPの合計の平行根に比例するようにゲインを設定することが考えられる。