一軸圧縮試験における岩石からの電磁波の発生
1.はじめに

岩石・岩盤の電磁気的特性を利用した地殻の調査(物理探査)は,石油や鉱物などの資源探査を目的として古くから研究されてきている.また,地震の発生に際して電磁気的な変化がみられることを利用して,地震の予知を行おうとする研究が,近年みられるようになってきた(Gokhbergら:1982,Warwickら:1982).例えば,VAN法と呼ばれるギリシャで実施されている手法は,地盤中の電位差の異常を観測し,経験的に発生位置や大きさの予知を行っている(Varotsos and Alexopoulos:1984,深尾・石橋:1996).日本でも,阪神・淡路大震災の直前に電磁気的異常が観測されたとの報告(Ikeya and Takaki:1996,深尾・石橋:1996)もある.地震以外の小規模な岩盤崩壊に関連した研究も最近いくつかみられ,Tomizawa and Yamada(1995)は深さ50 m程度のボーリングを行い,その中で発破を行った際に発生した電磁波を地上で観測するのに成功した.Frid(1997)は鉱山の坑内において100 kHz 付近の電磁波を観測し,それにより山はねの予知を試みている.

上記の現象を検討するために,室内での力学試験により,岩石の破壊過程における電磁気的特性を解明しようとする研究がみられる.例えば,Ogawaら(1985)は花崗岩をハンマーや重錘で打撃したとき,10 Hz 〜 100 kHzの電磁波を観測した.Cressら(1987)は,数種類の岩石を用い圧縮試験を実施し,900 Hz 〜 5 kHzの電磁波を観測した.Yoshidaら(1997)は花崗岩を用い,すべり破壊時の電位差の発生を観測した.Rabinovitchら(2000)は強度破壊点以前および以降の両方において100 kHz 付近の電磁波の発生を確認した.この他にも,数多くの報告で岩石の破壊過程において電磁波の観測が指摘されている.また,Rabinovitchら(1995)は,岩石の破壊過程において電磁波とAEを観測し,電磁波とAEはほぼ同じタイミングで発生しているとしており,この他にも同様の報告がいくつかみられる(例えばO'Keefeら:1995).電磁波の発生は,AEの発生機構,すなわち亀裂進展と深く関係しているとして,次のような仮説が提案されている.
1)圧電現象説(Nitsan:1977, Ogawaら:1985):亀裂の進展によって岩石内部に応力変化が生じる.石英のような圧電鉱物を多く含む岩石では,その応力変化による電圧変化にともなって,電磁波が発生する.
2)電荷分離説(Ogawaら:1985):亀裂が形成される際に,電荷が対向する亀裂表面上に不均等に分離されて電気的釣り合いがくずれ,双極子モーメントが作用するために電磁波が発生する.また,亀裂が開く際にも双極子モーメントが変化するため,電磁波が発生するという説もある
3)摩擦帯電荷説(Tomizawa and Yamada:1995):対向する亀裂面間の摩擦すべりによって電荷の分布が不均等となり,亀裂の両面の電気的釣り合いがくずれるため電磁波が発生する.

室内力学試験においてAEの発生を伴う亀裂進展と同時に,電磁波が発生することはわかっているが,どのような機構で電磁波が発生しているかについては特定されていない.そのため,室内試験の結果をどのように原位置に適用するのかに関しては不明である.例えば,本当に地震の前兆として電磁波が発生しているのかについて,まだ多くの議論が残されており,VAN法に関してもその真偽が議論されているところである(深尾・石橋:1996).

著者らの最終的な研究目標は,原位置での電磁波の観測により,鉱山や土木分野における岩盤構造物(坑道や岩盤斜面など)の崩壊予測法や危険度指標を確立することであり,既報において静的(前野ら:1998)および動的(福井ら:1996)に載荷した岩石の圧電現象に関する結果について報告している.

本研究では,一軸圧縮荷重下で岩種や試験条件を変化させ,破壊過程における電磁波の発生を観測した結果について述べるが,以下の点が従来の研究と異なる点であり,本研究の特徴と考える.
1)Cressら(1987)は,3種類(花崗岩,玄武岩,大理石)を用いて電磁波の測定を行っているが,物性値との比較は行っておらず,その他の報告の多くは1種類の岩石による結果である.本研究では7種類の試料を用い,電磁波の発生と岩石の物性値との関係を明らかにする.
2)Rabinovithら(2000)は,従来の研究では剛性の低い試験機を用いているため,強度破壊点以降急激に破壊している試験であり,剛性の高い試験機によって,強度破壊点以降の電磁波の発生状況を調べるべきであると述べている.このように,従来の研究では載荷方法による影響はほとんどわかっていない.本研究では載荷方法などの試験条件と電磁波の発生条件との関係を明らかにする.