一軸圧縮試験における岩石からの電磁波の発生
2.実験装置及び試料岩石

2.1 実験装置

従来の研究では,観測された電磁波の周波数は数Hz 〜 数十MHzと広範囲にわたる帯域であり,特に卓越した周波数が存在するとの報告はなされていない.本研究の応用として将来的には岩盤構造物の崩壊予知を想定しているため,原位置での測定が容易な周波数を選択することとした.一般に周波数が高いほど,アンテナや測定装置の小型化が可能である.しかしながら,高周波数では減衰が大きくなることと,携帯電話・TV・ラジオなどの雑音源が多く存在するため,両者を考慮して,数百kHzの電磁波を測定することとした.この数百kHzにおいて効率的に電磁波を測定できるアンテナとして,図1に示すようなコイル状ループアンテナ(直径7 cm,高さ8 cmのアクリル製の円筒に100回銅線を巻きつけたもの)を自作した.

次に測定装置であるが,アンテナでの電位をオシロスコープやスペクトルアナライザなどで直接測定する方法もあるが,数百kHz付近ではラジオなどの特定周波数の雑音が大きいため,電磁シールド室で実験を行うなどして,雑音を除去する必要がある.例えば,Rabinovitchら(2000)は,鋼製のベッセルをシールド室としてその中で試験を行っている.これにより,室内試験は可能となるが,原位置への適用を考えた場合には,シールドを実施することは不可能であり,特定周波数の雑音が問題となる.そこで,本研究では,周波数帯域を限定した測定(バンドパスフィルタを入れた測定)が望ましいと考えた.この特性を持った妨害波強度測定器(協立電子工業社製KNM−2401)を使用することとした.妨害波強度測定器は,一種の周波数同調型高周波電圧計であるため,任意の周波数を選択でき,しかもバンドパスフィルタを搭載しているため,特定の雑音には対応しやすいとも考えた.実験室内の雑音を調査し,雑音の少ない帯域を調べ,本研究では500 kHzを測定周波数とした.

アンテナと妨害波強度測定器の測定系を模式的に示すと図2(a)のようになる.アンテナ部における電磁波の電界強度をE(μV/m),測定部における入力端子電圧をV(μV),アンテナの実効高をH(m),整合変成器の分圧比をk とする.H及びkはアンテナの構造,寸法,測定器のインピーダンスなどによって決まる値であり,周波数によっても変化する.入力端子電圧Vは,

V=E H/k

となる.ここで,K=H/k とおけば電界強度は,

E=V/K

で表される.K(m)は一般に校正係数と呼ばれる値である.

電界強度は,通常dB表示[ ]で表現する(清水・杉浦1995)ため,本研究もこれにならうこととする.Eの単位をμV/m としたので,dBμV/m として表現する.

妨害波強度測定器には,尖頭値,平均値および準尖頭値の3つの測定モードがある(仁田ら:1999).尖頭値モードは極大値を求めるモードであるが,経時変化が判読しにくい.他方,平均値モードは値をならしてしまい,電磁波が観測できなくなるおそれがある.そのため,本研究ではその中間的なモードである準尖頭値を用いることとした.500 kHzの周波数帯域における妨害波強度測定器の準尖頭値の過渡応答特性は規格で定められており,図2(b)に示すようなバンドパスフィルタの特性を有する.検波効率は0.970であり,検波された電界強度は,dB単位に変換された後,充電時定数1ms,放電時定数160 msのバッファに入力される.この動作によって単発的な電界強度でも検知できるようになっている.充電時定数に比べ放電時定数が大きいため,時定数160 msの1次遅れ系とみなすことができる.次に,妨害波強度測定器からの出力は電圧信号であり,その際,規格としてアナログメータの出力(動特性)と合わせるために,2次遅れ系が付加されている.以上のように,アンテナで受信した電界強度は,dB単位に変換された後,3次遅れ系となって出力されることとなる.すなわち,dB表示した電界強度の伝達関数は次のようになる.

1/(Ts+1)/(s+2ζωs+ω)  (1)

ただし,Tは放電時定数160 ms,ζは減衰係数比0.95,ωは固有円振動数5.0 s−1である.なお,この測定系に関しては,3章で改めて得られた結果を用いて再度検討することとする.

本研究で使用した実験装置の概略図を図3に示す.載荷装置としては,1500 kNサーボコントロール試験機(MTS社製)を用い,実験室内にはシールドなどの特別な雑音対策はとらず,通常の環境で実験を行った.実験を行う前に,実験室内の雑音を測定した結果,500 kHzの周波数帯域において, 65 〜 68 dBμV/m であった.発生した電磁波は,コイル状ループアンテナで受信し,妨害波強度測定器に取りこみ,その経時変化をオシロスコープ(横河電機製DL708)に取りこんだ.サンプリング時間は主に0.01 s としたが,実験条件などによっては実験時間が長期となるため,最大で1 s とした.

2.2 試料岩石

本研究で使用した試料は,稲田花崗岩,本小松安山岩,葛生苦灰岩,秋芳大理石,来待砂岩,三城目安山岩,モルタルの7種類である.各試料の物性値を表1に示す.稲田花崗岩は,茨城県笠間市に産したもので,中生代の黒雲母,長石,石英からなり,空隙率は1%程度である.本小松安山岩は,神奈川県足柄下郡真鶴町で産出される安山岩で比較的硬質な岩石である.葛生苦灰岩は,栃木県安蘇郡葛生町に産したものであり,大理石を形成する炭酸カルシウムのCaの半分がほぼ完全にMgに置き換わったものである.秋芳大理石は,山口県美祢郡秋吉台に産する古生代の白色大理石で,各粒子内にへき開割れ目が著しく発達している.来待砂岩は,島根県八束郡宍道町で産出される凝灰岩質砂岩である.三城目安山岩は,福島県西白川郡矢吹町字三城目に産し,空隙を多量に有する灰白色の凝灰岩質安山岩である.緑泥石,ガラス質の石英中に,大きさ0.1 mm 〜 数mmの輝石,斜長石の斑晶を含んでいる.モルタルはロックボルト用のケーエフシー製ドライモルタルを使用し,セメント:砂:水 = 1:0.5:0.5の混合比で調製したものであり,製作後,約20年経過したものである.

試験片の寸法は直径25 mm×高さ50 mmであり,端面の平行度は±0.02 mm以内である.また,試験片は整形後実験室に2週間以上放置された気乾状態のものを使用した.実験は,温度が20 ± 5℃,湿度が70 ± 15 %に保たれた実験室において行った.