一軸圧縮試験における岩石からの電磁波の発生
3.岩石ごとの特徴

本章では,岩石の種類による電磁波の発生状況の違いを調べるために,10−4 s−1の定歪速度で一軸圧縮試験を行った結果を,3つのグループに分けて述べることにする.


3.1 稲田花崗岩

図4に稲田花崗岩を用いた結果の一例を示す.載荷開始から強度破壊点にいたるまでの応力では,雑音より大きい電界強度は観測されていないが,強度破壊点を過ぎ,応力が急激に低下する際に電磁波が観測されている.強度破壊点を過ぎて完全に破壊した後では,載荷し続けても電磁波は観測されなかった.図5は,図4の強度破壊点付近の拡大図である.同図から本試験片では強度破壊点に達した直後に220 MPa から170 MPa まで応力が急激に低下し,それに合わせて,電界強度に1回目の極大値(81 dBμV/m)がみられる.その後,一旦応力低下が緩やかになって,応力が150 MPa 付近からほぼ0 MPa に達するまで,再度急激に応力が低下しており,そのとき,電界強度に最も大きな値(87 dBμV/m)が観測された.図5に示した例では2回の急激な破壊がみられている.電界強度の立ち上がりは,応力が低下し始める時点とほぼ一致している.しかし,電界強度がピークとなる時は,応力低下が最も激しい時に比べ,200 ms程度の遅れがみられる.稲田花崗岩の定歪速度試験における破壊様式は,強度破壊点以降,まず試験片側面で縦割れ状に破壊が生じ,応力の減少を数回繰り返した後,最終的に上下にコーン状のものが残る.また,クリープ試験における3次クリープにおいても,1,2回急激な微小破壊を繰り返した後,最終的な破壊が生じる(福井ら:1989).

この他に同一の試験条件で2本の試験を行ったが,1)強度破壊点以前では雑音以上の電界強度は測定できなかった,2)応力が低下し始めると同時に電界強度は増加し始めた,3)応力が急激に低下してから200 ms程度経過してから電界強度は最大値となった,という点は共通してみられた.

3.2 本小松安山岩・葛生苦灰岩

本小松安山岩は同一条件で3回の試験を行ったが,そのうち1回は電磁波の発生を観測することができなかった.図6は電磁波の発生がみられた2回の試験における実験結果である.図6(a),(b)とも強度破壊点以前において電磁波は観測されなかったため,強度破壊点付近の実験結果を示した.図6(a)では141 s 付近で破壊が生じており,応力は250 MPa から急激に低下している.それに伴い,電界強度は67 dBμV/m(雑音レベル)から82 dBμV/m に増加しており,破壊時に電磁波が発生しているのがわかる.図6(b)では144s付近で破壊が生じており,その時に電界強度は69 dBμV/m を観測している.このように本小松安山岩では,3個の試験片から発生した電磁波の大きさはそれぞれかなり異なる結果となった.なお,本小松安山岩の定歪速度試験における破壊様式は,強度破壊点に達したところで急激に破壊し,最終的に上下に2つの円錐形が残るコーン状破壊である.

葛生苦灰岩においても3回中2回の試験で電磁波が観測された.図7にその2つの事例を示す.図7(a)では56.5 s 付近で応力は200 MPa からほぼ0 MPa まで急激に低下している.この急激な応力低下に伴い,電界強度は65 dBμV/m(雑音レベル)から73 dBμV/m まで増加しており,電磁波が観測されている.図7(b)では68 s 付近で破壊が生じ,その時点で71 dBμV/m の電界強度を観測している.なお,電磁波の発生を確認できなかった試験片の強度は,150 MPa と他の2回の試験における強度に比べてやや小さかった.葛生苦灰岩の定歪速度試験における破壊様式は,縦割れに近い形であり,応力の低下が始まると急激に破壊してしまう.

また,本小松安山岩と葛生苦灰岩の両岩石ともに,応力の低下とほぼ同時に電界強度が増加し始めることと,急激に応力が低下する時に比べて電界強度が最大になる時が遅れることは,稲田花崗岩と同じである.以上のように,本小松安山岩と葛生苦灰岩は,稲田花崗岩の実験結果同様に電磁波が観測されたが,発生する電界強度は稲田花崗岩より小さいことがわかった.

さて,(1)式によって観測された電界強度には遅れが生じているので,仮に応力が低下している時に,デルタ関数状に電磁波が発生したとする.そのインパルス応答を図7(a)に示したが,実際に観測された電界強度の波形とほぼ一致していることがわかる.よって,図5〜7でみられた「応力が急激に低下してから200 ms程度経過してから電界強度は最大値となった」は,(1)式による測定系の遅れによるものであることがわかる.

3.3 秋芳大理石・来待砂岩・三城目安山岩・モルタル

秋芳大理石の試験結果を図8に示す.40 s 付近で100 MPa のピーク強度を示しており,その後徐々に応力が低下しているが,明瞭な電磁波の発生は認められない.秋芳大理石では,強度破壊点直前から,試験片側面で網目状の微細なせん断すべりがみられるようになり,強度破壊点以降,徐々に側面が破壊していき,コーン状の破壊に至る.

図9に示した来待砂岩は,秋芳大理石と比較的似た応力−歪曲線となっている.この場合も電磁波の発生を確認できなかった.来待砂岩の破壊様式は一面せん断破壊であるが,せん断面に凹凸が認められる.

三城目安山岩の結果を図10に示す.図では強度破壊点以降,急激に応力が低下しており,秋芳大理石および来待砂岩に比べて,脆性的である.応力が低下している90s〜110 s の間でわずかに電界強度の増加が現れているようにもみられるが,明確な電界強度の変化は認められない.三城目安山岩は縦割れとコーン状破壊の中間的で両者の特徴がみられるが,明瞭ではない.

モルタルの結果を図11に示すが,応力−歪曲線の形状は三城目安山岩に似ており,この場合も電界強度の変化は観測されていない.モルタルは側面が破壊し,最終的にコーン状破壊となる.

秋芳大理石,来待砂岩,三城目安山岩およびモルタルの4試料では,雑音レベル(65 dBμV/m)以上の電磁波の発生を確認することができなかった.