一軸圧縮試験における岩石からの電磁波の発生
4.試験条件の影響

3章では,定歪速度試験における電磁波の発生状況を調べたが,試験条件によって電磁波の発生が変化する可能性がある.そこで本章では,試験条件(載荷速度,応力帰還制御,端面の整形の有無)による電磁波の発生状況を調べた結果について述べる.


4.1 載荷速度(歪速度)

3章では,歪速度を10−4 s−1として試験を行ったが,ここでは10−5 s−1と1桁遅くして試験を行った稲田花崗岩の結果を図12に示す.歪速度が10−4 s−1の時と同様に,最終破壊する過程において電磁波が観測されている.図12をみると,約730 s において急激な応力の低下はみられていないが,電磁波が観測されており,そのとき耳で聞こえる亀裂音がした.その他の電磁波が観測されるときには,歪速度10−4 s−1と同様に,応力の急激な低下がみられた.736 s 付近では応力が213 MPa から207 MPa と低下したとき,電界強度は最大で70 dBμV/m となり,740 s付近では応力が200 MPa から180 MPa への低下時に75 dBμV/m となっている.742 s に急激に破壊が生じ,応力は150 MPa からほぼ0となり,電界強度は80 dBμV/m に達している.この他,同一条件で3回の試験を行ったが,ほぼ同様の結果となった.このように,歪速度を小さくしても稲田花崗岩では電磁波の発生を確認することができた.また,歪速度10−4 s−1と10−5 s−1の両者とも,発生した電界強度が最大となったのは,応力が150 MPa付近で急激に破壊が生じ,応力がほぼ0まで低下した時であった.この時に発生した電界強度は,歪速度10−4 s−1および10−5 s−1でそれぞれ85 dBμV/m,80 dBμV/mであり,歪速度10−4 s−1の方が,10−5 s−1に比べて発生する電界強度が大きい結果となった.

4.2 応力帰還制御

(2)式で示される,応力帰還制御(Okubo and Nishimatsu:1985)を用いれば,応力の帰還量を決定する定数αを調整することによって巨視的に破壊を制御することが可能である.すなわち,αを大きくするとゆっくりと破壊させることができ,逆に小さく(マイナス)するとクラスT特性を有する岩石でも急激な破壊を生じさせることが可能である.

ε−ασ/E=Ct (2)

ただし,ε,σ,E,C,tはそれぞれ,歪,応力(Pa),初期ヤング率(Pa),載荷速度(s−1),時間(s)である.

(1)α=0.6の場合

C=10−4 s−1,α=0.6とした時の稲田花崗岩の応力−歪線図を図13(a)に,電界強度と応力の経時変化を図13(b)に示す.図13(a)では強度破壊点以降,クラスU特性を示しながら,ゆっくりと破壊が進行している様子がわかる.図13(b)では,38 s あたりで強度破壊点に達した後,徐々に破壊が進行している過程において,70 dBμV/m 強の電界強度が数回観測されており,電磁波が断続的に発生していることがわかる.

次に,Cを10−5 s−1とした場合における電界強度と応力の経時変化を図14に示す.図では応力が急激に低下しているようにみえる箇所が3箇所あるが,すべて2 s以上の時間を要しており,この場合も,比較的ゆっくりとした破壊が生じていた.図では,強度破壊点以降の10回程度電磁波が発生しており,特に電界強度の変化が観測できた場合には,応力の低下がみられている.このように比較的ゆっくりと破壊が進行する条件においても,電磁波の発生を確認することができた.

以上のように,稲田花崗岩でα= 0.6とした場合,70 〜 75 dBμV/m の電界強度の電磁波が数回発生した.他方,3章で述べたように定歪速度(α= 0)では80 〜 85 dBμV/m の電界強度の電磁波が1,2回発生した.このようにαをプラスにとることによって,破壊の進行が急激に生じず,数回から十数回にわけた形で応力の低下が生じるようになる.電磁波もこれに応じて,数回から十数回発生するが,それぞれの応力低下時に発生する電界強度は小さくなることがわかった.この結果から,電磁波は応力の低下に伴って発生し,その大きさも応力の低下量による可能性が高いことがわかる.

(2)α=−0.6の場合

αをマイナスにすることによってクラスT特性を持つ岩石でも,強度破壊点以降で急激に破壊をさせることができる.そこで,定歪速度試験で電磁波を観測することができなかった三城目安山岩とモルタルを用いて,α=−0.6として試験を行った.この場合,両岩石とも強度破壊点以降で急激な破壊が生じたが,雑音レベル(65 dBμV/m)以上の電界強度を測定することはできなかった.三城目安山岩で,α=0では強度破壊点以降,残留強度となるまで十数s程度要していたが,α=−0.6では強度の70 % 付近から0.02 s 以内に残留強度となっており,数百倍程度の速さで破壊が進行しているが,電磁波の発生は観測できなかった.

4.3 端面

次に,端面整形の有無の影響について述べる.一般的に端面の整形をしていない試験片を用いると,載荷当初から局所的に不均等な応力が作用しやすい.このような場合での電磁波の発生を確認することを目的として試験を行った.

端面を整形していない稲田花崗岩(カッタで切断したままの状態で,端面の凹凸は最大で0.5mm程度)について,10−4 s−1の定歪速度で一軸圧縮試験を行った結果を図15に示す.図では端面を整形していないため,一軸圧縮強度は70 MPa となり,端面整形を施した試験片に比して大きく強度が低下していることがわかる.6sの時点で応力が35 MPa に達したあたりで,最初の電磁波(70 dBμV/m強)が観測されている.このときには,耳ではっきり聞こえる程度の亀裂音を確認した.また,図から強度破壊点に達する直前でも電磁波が観測されることがわかる.強度破壊点に達した後,端面を整形した試験片で実験を行ったときと同様に,応力が急激に下がるところで最も強い電磁波が観測された.以上のように,強度破壊点以降でなくとも,微小破壊時にも電磁波の発生がみられることがわかった.