一軸圧縮試験における岩石からの電磁波の発生
6.可能性のある応用分野の提言とまとめ

本研究の最終的な目的は原位置での電磁波の観測により,鉱山や土木分野における岩盤構造物(坑道や岩盤斜面など)の崩壊予測法や危険度指標を確立することである.本研究の結果から,原位置においても亀裂の不安定成長が生じた場合には,電磁波が発生しているのではないかと考えることができる.本研究によれば,電磁波の異常な発生を観測することにより,岩盤構造物を破壊に至らしめる亀裂の不安定成長を把握できる可能性がある.なお,岩盤構造物の崩壊は瞬間的に発生するのではなく徐々に加速的に進行していくため,その初期段階の亀裂進展を把握できれば,実被害が生じるまでに対策や避難が可能であると考える.

電磁波の発生機構ははっきりとはわかっていないが,応用するにあたって本研究で得られた重要な結果は,強度が大きく,脆性的な変形特性を示す岩石では電界強度が大きい,ことである.比較的大きな電界強度を有する電磁波を発生しやすい花崗岩,安山岩,苦灰岩などの岩盤構造物に適用しやすいこととなる.

花崗岩は様々な岩盤構造物で利用されており,坑道やトンネルでの山はねがしばしば問題となる.山はねの予知への利用は十分考えられる.安山岩は花崗岩ほどではないが,様々な場所に分布しているので,岩盤崩壊の監視への応用が可能と思われる.苦灰岩が対象となるのは主に露天掘鉱山での鉱石として採取する場合であるため,苦灰岩の斜面崩壊の監視に応用できる可能性がある.

岩盤斜面などの自然災害では,風化した砂岩などのように軟弱化した箇所で発生することが多い.このように,強度が小さいと予想される岩盤では花崗岩などに比べて,電磁波の発生は小さいものと思われる.また大谷石採掘跡に関しても,グループ3にあたる岩石であるため,発生しても電磁波の強度は比較的弱いものと思われる.

本研究でのもう一つの結論は,応力の低下量が大きいほど,発生する電界強度が大きいことである.同じ岩石であれば,応力の低下量はおそらく生じる亀裂の大きさと密接なかかわりをもっているはずである.試験片の大きさを変えた実験を行わなかったので,確かなことはいえないが,原位置においては,試験片規模よりはるかに大きな亀裂が発生するはずであり,その結果,観察可能な電界強度の電磁波が発生する可能性がある.また,大規模な斜面崩壊などでは,複数箇所で何回も電磁波が発生する可能性もある.以上の推測が正しければ,原位置における電磁波の応用は早期に実現できるかもしれない.

実用上問題となるのは,雑音であるが,地表での雑音対策はほぼ不可能であり,対策としては,できるだけ雑音の少ない周波数帯域を探し,その帯域で電磁波を観測することになるであろう.他方,坑道やトンネルの場合には,外部からの雑音は進入しにくい環境であるため,機械関係などの内部の発生源に雑音対策を施せば,雑音はかなり小さくすることが可能であろう.したがって,この場合には,比較的小規模の崩壊も予測できる可能性がある.

本研究はまだ室内試験について検討しただけであり,原位置への適用には,まだ多くのハードルが残されている.しかしながら,AEセンサーなどのように岩盤に直接設置しなければならない観測装置に比べ,電磁波は非接触型であるアンテナで観測できるため,設置が容易であり,費用的にも安価ですむことも予想され,今後さらなる検討を進めていく価値はあると考えられる.