石炭強度の載荷速度依存性に関する研究
1.はじめに

石炭の一軸圧縮強度に関する研究は,古くからおこなわれており(例えばEvans et al.,1961a),特にその寸法効果に関しては注目すべき成果があがっている(Bieniawski, 1968;Mark & Barton,1996).また,引張強度に関しても,主として圧裂引張試験(Brenbaum & Brodie,1959)や曲げ試験(Pomeroy et al.,1956)により,その異方性を含めて研究がなされてきた(Evans,1961b).しかしながら,石炭の強度に関する研究のピークが数10年前であったこともあり,最近の機器と手段を使用した研究結果にはとぼしいきらいがある.例えば,一軸圧縮強度の載荷速度依存性や,さらに1歩進んで時間依存性挙動については知られているところが充分とはいえない.一軸引張応力下での挙動に関しては,公表されている研究成果はほとんどなく,強度の載荷速度依存性はもちろんのこと,より基礎的な完全応力−歪曲線についてさえ定説があるとは言い難い.

わが国の炭坑は諸般の事情で少数になっているが,世界規模でみると石炭の重要性は今後増す可能性が高く,石炭の基礎的な力学特性を調べる意義は十分あると思われる.また,今後の大規模地下空間利用においては,夾炭層を含む地域の開発もありえると考えている.

本研究では,実用性を重んじて,比較的少ない試料を用いて,圧縮強度と引張強度の載荷依存性を調べる方法を試行することにした.既報(大久保・西松,1986)で述べたように,これまで調べた岩石に関する限り,載荷速度依存性は岩石の時間依存性や粘弾性的性質と密接なかかわりを持っている重要な性質であった.今後の研究にゆだねられるところが多いが,石炭に関しても時間依存性を調べる際の第1歩として,強度の載荷速度依存性は適当と判断して本研究を実施した.