石炭強度の載荷速度依存性に関する研究
2.実験試料

2.1 試料採取地点と試料ブロック

本研究で使用したジュラ紀無煙炭は,中国北京市西方約26kmの九龍山山麓に位置する門頭溝炭坑で,2000年5月31日と6月1日に採取した.門頭溝炭坑は北京炭鉱の支坑の一つで,1921年に開発がはじまり,最盛期であった1970年代の出炭量は年120万トン前後であったが,2000年7月末に閉山した.

試料ブロック採取場所はこの炭坑のほぼ中央であり,地表面から約350m,海水面から約130mの深さであった.周辺炭層の傾斜は約15°で,炭丈は平均2.2mであった.試料ブロック採取地点の周辺は柱房法により採炭されており,炭柱からコールピックを使用して5個の試料ブロックを掘り出した後,手仕上げで面をできる限り滑らかにした.5個の試料ブロックの内,本研究ではブロック#2を使用することにし,残りのブロックは今後クリープ試験などに使用する予定である.

試料ブロックは1辺が15〜25cmの直方体であり図1に示すように,成層面のほかに,成層面とほぼ直交する主炭理(Major Cleat)と,斜めに傾斜した従炭理(Butt Cleat)が観察できた.主炭理は間隔2〜10mmであるのに対して,従炭理の間隔は3〜30mmとやや広かった.

2.2 実験計画と試験片の作成

試料ブロックを観察したところ,強度に異方性がある可能性が高いと判断した.そこで,図1に示すように成層面と垂直にZ軸を,主炭理と垂直にX軸をとり,X,Y,Z軸方向からボーリングしたコアより試験片を作成することにした.理想的には,従炭理と垂直方向にボーリングしたコアも必要であるが,試料ブロックの大きさが充分でないと判断して見送ることにした.

炭理の間隔から判断して,できる限り大きな試験片を用いた強度試験の方が望ましいことは明らかであるが,これも試料ブロックの大きさから制限を受け,検討の後,直径25mmの試験片を使用することにした.このように比較的小さな試験片を使用することにしても,一つのブロックから抜いたある方向(例えばX方向)のコアから作成できる試験片は,長さ50mmの一軸圧縮試験と一軸引張試験片用が各5本程度と,長さ25mmの圧裂引張試験用が10〜20個程度でしかない.したがって,これまで三城目安山岩などを対象としておこなってきたように(大久保他,1992b),載荷速度を4段階程度に変え,各載荷速度で5本程度の実験を行うことはできないことがわかった.そこで,後で述べるように,一軸圧縮試験と一軸引張試験では,1本の試験片を使用した試験中に載荷速度を増減し,その結果として生じる応力の増減から載荷速度依存性をもとめることにした.すなわち,載荷速度の増減に伴う応力の増減が大きいほど,載荷速度依存性が大きいことを利用した試験方法を試みることにした.

なお,試験は全て気乾状態でおこなわれ,試験室の温度は25±2℃,湿度は60±15%であった.