石炭強度の載荷速度依存性に関する研究
3.一軸圧縮試験

一軸圧縮試験は容量1500kNのMTS社製サーボ試験機を用い,歪速度を制御しておこなった.図2に模式的に描くように,試験途中で歪が0.15×10−3だけ増加するごとに,歪速度を10−5/sと10−6/sとで交互に変化させ,それぞれの歪速度で描く応力−歪曲線をなめらかに繋いだ.こうしてもとめた2本の曲線を,近似的にそれぞれの歪速度で得られた応力−歪曲線とみなしてデータ整理をおこなった(大久保他,2002).なお,この試験方法は,Okubo et al.(1990)が10年ほど前に提案した方法を改良したものである.Okubo et al.(1990)が提案した方法では,強度破壊点の直前に歪速度を増加し,その時の応力の増加から載荷速度依存性を推定するが,この方法の実施にあたっては,歪速度を増加するタイミングの選定に工夫を要するなど,実験者がかなり試験方法に習熟している必要があった.一方,本研究で採用した試験方法では,歪速度の増減を機械的に行うだけでよく,実験技術の難易度は大幅に低下する.

図3(a)にブロック#2から切り出したX方向の試験片を用いた時の応力−歪曲線を示す.これからわかるように,強度破壊点を過ぎると急激に破壊し,定歪速度試験では制御できない部分があることがわかる.このような挙動を,Wawersik & Fairhurst(1970)はクラスU特性と名付けた.急激な破壊で完全に耐荷能力がなくなったのが2例に対し,ピーク強度の5〜10%程度の残留応力が観察されたのが2例であった.図3(b)にY方向の試験片を用いたときの応力−歪曲線を示す.X方向の試験片と比べると強度が低いことがわかる.クラスU特性を示すことは同じであるが,残留強度は全試験片で観察できた.また,試験片ごとの応力−歪曲線の差異は,比較的小さいとの印象を受けた.図3(c)にZ方向の試験片を用いたときの応力−歪曲線を示す.X方向の試験片と比べると強度が低く,Y方向の試験片と同程度であることがわかる.いずれも,クラスU特性を示すことは他の方向と同じである.Y方向と同様に,わずかではあるが残留強度が観察できた.

試験片の破壊様式には,大きく分けて縦割とせん断破壊とがみられた.しかしながら,破断面の分岐や交差が頻繁にみられるとともに,破断面の凹凸も激しかった.なお,X,Y,Zの各方向について特徴的なことは,試験片の数が少なかったので見出せなかった.この点の解明は今後の課題としたい.

表1(a)に一軸圧縮試験の結果をまとめておいた.これからわかるように,X方向の試験片強度のみがかなり大きく,YとZ方向の試験片の強度は比較的小さかった.図1を参照しつつ考えると,おそらく主炭理の引張強度が,成層面や従炭理より小さい可能性が高いと判断した. 図3からわかるようにYとZ方向の試験片強度のばらつきと比較して,X方向のそれは大きかった.試験片の個数が少ないので,詳しいことはわからないが,考えられる原因の一つを参考までに記しておく.主炭理の間隔は比較的狭いので,個々の試験片に含まれる可能性が高く,主炭理の影響を大きく受けるYとZ方向試験片強度のばらつきは比較的小さい.他方,従炭理の間隔は広いので,個々の試験片に含まれたり含まれなかったりするので,従炭理の影響を強く受けるX方向試験片の強度がおおきくばらついた可能性がある.もしこの説明のように,個々の試験片に弱い面(欠陥)が含まれるか否かが試験結果のばらつきの主因であるとしたら,より大きな試験片を用いることが,最も有効な解決方法といえる.このことは,後で述べる一軸引張試験や圧裂引張試験における試験結果のばらつきに対してもいえる. 試験途中で歪速度を変えたが,図3ではよくわからないので,強度破壊点付近を拡大した例を図4に示す(Y方向,試験片番号7).これからわかるように,歪速度を上げると応力は上昇し,下げると応力は下がる.各歪速度での結果をなめらかに繋いだ曲線を図中に示した.それぞれの曲線から得られるピーク強度より,次式を用いて(大久保,1992a),載荷速度依存性を示すパラメータnを求め表1に示した.

σFS=(dεF /dεS1 / (n+1) (1)

ここで,添字FとSはそれぞれ速い歪速度と遅い歪速度をあらわし,σF とσSは,それぞれ速い歪速度dεF と遅い歪速度dεSでのピーク強度である.計算した結果を表1に示すが,nの平均値は120〜150であることがわかる.表2には,これまでにもとめた岩石のnを参考までに示したが,これらと比べると今回使用した石炭のnは大きく,したがって載荷速度依存性は小さいといえる.