石炭強度の載荷速度依存性に関する研究
4.一軸引張試験

一軸引張試験は容量10kNのサーボ試験機を用い,歪速度を制御しておこなった(福井他,1995).一軸圧縮試験の場合と同様に,試験途中で,歪速度を10−6/s(70sの間)と,10−7/s(300sの間)とで交互に変化させた.

図5(a)にブロック2から切り出したX方向の試験片を用いた時の応力−歪曲線を示す.これからわかるように,強度破壊点を過ぎても急激に破壊することなく(クラスT特性),定歪速度試験で制御可能であることがわかる(Wawersik & Fairhurst,1970).また,ピーク強度と比較してかなり大きな残留応力が観察された.破断面は載荷軸と直交する場合が多く,この場合には主炭理にそって破壊したものと思われた.少数ではあるが,載荷軸と斜交する破断面が観察された.この場合には従炭理の寄与が大きかったと思われる.図5(b)にY方向の試験片を用いたときの応力−歪曲線を示す.X方向の試験片と比べると強度がかなり高いことがわかる.クラスT特性を示すことは同じであり,さらにピーク強度と比較してかなり大きな残留強度が全試験片で観察できた.Y方向試験片の破断面には,激しい凹凸がみられた.おそらく従炭理がもっとも大きく影響していると思われるが,同時に成層面と主炭理もある程度の影響をおよぼすので複雑な形状の破断面が形成されたものと思われる.図5(c)にZ方向の試験片を用いたときの応力−歪曲線を示す.X方向の試験片と比べると強度が若干高いが,Y方向の試験片よりは小さいことがわかる.いずれの応力−歪曲線も,クラスT特性を示すことは他の方向と同じである.Z方向試験片の破断面については,X方向試験片の場合と似た傾向がみられた.

表1(b)に一軸引張試験の結果をまとめておいた.これからわかるように,Y方向の試験片強度が最も大きく,ついでZ方向であり,X方向の試験片の強度は最も小さかった.この結果は,一軸圧縮試験の強度の異方性から類推した,主炭理の引張強度がもっとも小さいという予測と一致する.

試験途中で歪速度を変えたが,図5ではよくわからないので,強度破壊点付近を拡大した例を図6に示す(Y方向,試験片番号9).これからわかるように,歪速度を上げると応力は上昇し,下げると応力は下がる.各歪速度での結果をなめらかに繋いだ曲線を図中に示した.それぞれの曲線から得られるピーク強度より,(1)式を用いて,載荷速度依存性を示すパラメータnを求め表1(b)に示した.これからわかるように,かなりのばらつきをみせるが,一軸圧縮強度の場合とほぼ同じで,100〜140であることがわかる.