石炭強度の載荷速度依存性に関する研究
7.まとめ

本実験の結果をまとめると次のようになる.

1.石炭の一軸引張試験を実施してその完全応力−歪曲線を求めることができた.一軸引張試験で得られた完全応力−歪曲線は,かなり延性的でクラスT特性を示すとともに,興味深いことにある程度の残留強度が存在することがわかった.

2.一軸引張強度と従来もっとも普通に用いられてきた圧裂引張強度とを比較したところ,圧裂引張強度は一軸引張強度の2〜3倍となることがわかった.この点は,今後検討する必要があるだろう.

3.少数の試験片で載荷速度依存性を調べるため,試験途中で歪速度を増減させ,それに伴う応力の増減を観察する方法を採用した.新しい試験方法が石炭に適用可能であることを示したことは本研究の成果の一つである.この試験方法はまだ開発して日が浅く,ある程度の誤差の生ずる可能性を否定できないが,石炭のように,各試験片の強度のばらつきが大きい試料では,今のところ他に変わるべき試験方法を思いつかない.

4.その結果,一軸圧縮応力下でも一軸引張応力下でも,石炭の載荷速度依存性は比較的小さいことがわかった.なお,一軸引張応力下での石炭の載荷速度依存性を実験的に求めたのは本研究が最初と思う.

今回は比較的短時間で,かつ定まった時間で実験を終えることのできる載荷速度依存性について調べた.この載荷速度依存性についてさらに検討を進めるとともに,クリープ試験や応力緩和試験も追加して,時間依存性について総合的な判断を下せるようなデータを揃えることが今後必要であろう.また,今回の試験では石炭ブロックの寸法が充分でないことから,直径25mmという,比較的小さな試験片を使用しておこなった.そのため,個々の試験片に弱い面が含まれたり含まれなかったりして,試験結果が大きくばらついた可能性がある.実施はなかなか困難であるが,より大きな寸法の試験片を使用した追試験が今後望まれる.

今回の実験結果より,一軸引張応力下と一軸圧縮応力下での完全応力−歪曲線が得られたので,例えば著者らが提案したコンプライアンス可変型構成方程式の各定数を求めることが可能であり(大久保・福井,1997),さらにそれを利用して有限要素法を用いた各種シミュレーションを実施することができる(大久保他,1998).これらについては,実験を追加して定数の値の確度を深めつつ今後実施していく予定である.