緩み領域の強度回復に関する基礎研究
2.試料岩石と実験方法

2.1 試料岩石と試験片

試料岩石として,土丹,田下凝灰岩,来待砂岩,三城目安山岩の4種類を用いた.土丹は,横浜市下水道局栄処理区東俣野幸浦線(第一工区)下水道整備工事現場で採取した.採取地点の土被りは約50mであり,切り出した岩石ブロックの寸法は20×20×45cmであった.岩石ブロックは濃灰色でやや緑色を帯びており,表面全体が濡れていたので,採取後直ちに濡れた布で包み,さらにビニール袋に入れて密封した.田下凝灰岩,来待砂岩,三城目安山岩は石材店から購入したもので,各岩石ブロックの寸法は10×30×45cm,30×30×30cm,20×20×45cmであった.

三城目安山岩のブロックは流理面が明瞭であったので,これと垂直にボーリングした.他の岩石ブロックの方向性は不明瞭であったので,方向性を考慮しないでボーリングした.ボーリングしたコアより,直径25mm,高さ25mmで,上下端面間平行度±0.05mmの円柱形試験片を作成した.

土丹の試験片は自然含水状態を維持するために,湿った布に包んだ後さらにビニール袋に入れて保存し,試験直前にビニール袋から取り出して試験に供した.他の3岩石は,気乾状態と湿潤状態で試験をした.気乾状態の試験は,試験片を温度25℃,湿度65±15%に空調管理された実験室内に2週間以上保管した後に行った.湿潤状態の試験は,真空ポンプで空隙中の空気を抜いた試験片を,イオン交換水中に2週間以上漬けた後に行った.表1に試料岩石の物性値を示す.

2.2 押し込み試験方法

載荷装置として1,500kNサーボ試験機(MTS社製)を使用した.まず,図3のように試験片を外径50mm,内径27mmの鋼製厚肉円筒に入れ,直径25mmの押し棒によって変位速度5×10−3 mm/s(歪速度 2×10−4/s)で押し込む.試験開始時の試験片側面と厚肉円筒内壁の間には充分な隙間があるので,一軸圧縮応力下で試験片は載荷され,やがてピーク強度に達する.ピーク強度を過ぎてからもなお押し棒を押し込むと,試験片は横に膨らんでいき,やがて試験片側面が厚肉円筒内壁と接触し,荷重が増加し始める.その後も,所定の押し込み最大荷重に達するまで押し棒を押し込み続ける.押し込み最大荷重に達したら試験機を止めて,試験片を取り出す.この試験では,厚肉円筒と押し棒との間に充分な隙間(初期値1mm)があるので,試験片に含まれていた水がこの隙間を通って出てくることがあった.したがって,排水条件下での試験とみなしてよい.

押し込み最大荷重は,19.6,39.2,58.8,78.4kNの4条件としたが,以下の文中ではそれぞれ20,40,60,80kNと呼ぶ.これらの荷重を試験片の初期断面積で割ると,約40,80,120,160MPaとなる.深さ1000mの地中でも初期応力は25MPa程度と考えられるので,今回加えた押し込み最大荷重はかなり大きめであるが,強度回復の有無をできるだけ短時間で調べるためにこのように設定した.なお,原則として同一条件で5回,最低でも3回の試験をおこなった.

試験中,歪ゲージ式ロードセルで荷重を,差動変圧器で変位を測定した.さらに,歪ゲージで,厚肉円筒外壁の周方向歪を測定し,次式を用いて厚肉円筒内壁に加わる側圧(内圧)を計算した(日本機械学会,1994).

pi = εθ E (ro−ri)/ 2ri×(h/ht) (1)

ここで,piは側圧,εθは周方向歪,Eは厚肉円筒のヤング率,roは厚肉円筒外径,riは厚肉円筒内径,hは厚肉円筒高さ,htは試験片高さである.

押し込み試験の後に,厚肉円筒から取り出した試験片を用いて,一軸圧縮試験(変位速度5×10−3  mm/s)と圧裂引張試験(変位速度約5×10−3  mm/s)を行った.載荷装置としては,一軸圧縮試験では1,500kNサーボ試験機(MTS社製)を,圧裂引張試験では10kN万能試験機(東京衡機製造所製)を使用した.なお,圧裂引張試験では球座を使用した.