緩み領域の強度回復に関する基礎研究
4.厚肉円筒から取り出した試験片の強度

4.1 一軸圧縮強度(押し込み試験後)

厚肉円筒から取り出した試験片を用いて一軸圧縮試験をおこなった.図7に応力−歪曲線を,図8に一軸圧縮強度と押し込み最大荷重の関係を示す.また,表3には,押し込み試験後に取り出した試験片の物性値を示す.

図7(a)は,自然含水状態における土丹の応力−歪曲線である.試料岩石と試験後の物性値を記した表1と表2を参照しつつ検討を進める.応力−歪曲線は,ばらつきが大きかったが,押し込み最大荷重が大きいほど,一軸圧縮強度が高くやや脆性的となった.試験後の試験片をみると,中央に小さな円錐ができており,この円錐部分が貫入してできたと思われる亀裂が端面より放射状に延びて側面に至っていることが多かった.土丹において最も特徴的であるのは,試料岩石の一軸圧縮強度が5.17MPa(平均値)であったのに対して,押し込み最大荷重で80kN試験後の一軸圧縮強度が8.4MPa(平均値)に達していることである.この様に土丹における強度の回復は著しいものであった.ただし,ここで注意しておきたいのは,試料岩石のヤング率が0.74GPaであったのに対して,押し込み最大荷重で80kN試験後のヤング率は0.24GPaとかなり小さいことである.押し込み試験後の試験片には,平たく変形し易い微小亀裂が多数含まれているためと考えられる.他の岩石でも,押し込み試験後の試験片のヤング率は,試料岩石のヤング率に比べて顕著に小さいのは,同様の理由によるものと考える.

図7(b)に,湿潤状態の田下凝灰岩の応力−歪曲線を示す.押し込み最大荷重が増加するにつれて一軸圧縮強度が増加するのがわかる.しかしながら,応力−歪曲線の立ち上がり部分の傾きは,押し込み最大荷重によってあまり変化しないことがわかる.強度破壊点以降の傾きは,押し込み最大荷重により大きな変化はみられなかった.なお,ここで示さなかった気乾状態の応力−歪曲線は,一軸圧縮強度とヤング率が高いことを除いて,定性的には湿潤状態と同様の傾向であった.気乾状態と湿潤状態の応力−歪曲線が,定性的には同様の傾向を示したのは,以下で述べる来待砂岩でも三城目安山岩でも同様であったので,両者とも湿潤状態の応力−歪曲線のみを示した.一軸圧縮試験後の試験片をみると,両端に円錐ができることが多く,側面には明瞭な縦割れが観察できた.図8(b)には,押し込み最大荷重による一軸圧縮強度の変化を示したが,これからわかるように気乾状態の方が全般的に強度が大きいことがわかる.殊に,押し込み最大荷重が80kNでは3倍強に達している.

図7(c)には,来待砂岩の応力−歪曲線を示す.田下凝灰岩と似た応力−歪曲線であり立ち上がりの曲線の傾きが,押し込み最大荷重にあまりよらない点も同じである.図8(c)に示す傾向も田下凝灰岩と似ており,さらにその値自体も似通っていることがわかる.破壊後の試験片についても,両端面に円錐ができること,また,側面には数本の縦割れがみられることなど,田下凝灰岩とさほど変わった様子は見られなかった.一軸圧縮強度に関しては,田下凝灰岩と来待砂岩とはかなり似た結果を与えるといってよかろう.

図7(d)に示す三城目安山岩では,これまでの3岩石とかなり違った結果となった.まず,押し込み最大荷重がもっとも小さい20kNで,一軸圧縮強度が最大となった.押し込み最大荷重を40kNすると一軸圧縮強度はかえって小さくなり,その後,押し込み最大荷重を80kNまであげても一軸圧縮強度はほとんど変わらなかった.試料岩石の一軸圧縮荷重がもっとも大きな三城目安山岩では,押し込み最大荷重が80kNという値は相対的に小さすぎるのではないかと考えてそれ以上に設定した試験をおこなった.押し込み最大荷重が100kN以上になると一軸圧縮強度はあがるがその程度少なく,今回行った試験条件下における,三城目安山岩の強度回復は小さかった.さて,この一軸圧縮試験後の試験片においても破断面はやや異なっていた.表2に示すように,側面が大きく剥がれ落ち,最終的にはせん断面にそった破壊が生じたと思われる.せん断面には擦過痕が認められ,かなりの距離のせん断すべりが生じたことがわかる.なお,田下凝灰岩と来待砂岩では,気乾状態の圧縮強度の方がかなり大きかったが,三城目安山岩の一軸圧縮強度は,気乾と湿潤状態とで差が認められなかった.

図9の横軸は,湿潤状態の押し込み試験において,押し込み最大荷重を加えた時の軸歪である.また,縦軸は,押し込み試験後の一軸圧縮強度である.これを見るとだいたいどの岩石も一つの下に凸の曲線上にのっている.これから即断するのは難しいが,軸歪を測定することで一軸圧縮強度を知ることが出来る可能性があるといえよう.ただし,図の左端に位置する三城目安山岩だけは,軸歪が増加するとかえって一軸圧縮強度が低下する傾向もみられた.この場合には,軸歪が20kNから40kNに増すと,試料岩石の組織が壊れていく影響の方が,回復より大きいのであろう.なお,気乾状態の結果は示さなかったが,定性的な傾向は湿潤状態とさほど変わらなかった.

一軸圧縮強度は,押し込み最大荷重や側圧とも相関があると考えられる.しかしながら,ヤング率や体積弾性率などの弾性定数が岩石ごとに異なるので,全ての試料岩石を同じ図に描くと,試料岩石ごとにかなり異なる.

4.2 圧裂引張強度(押し込み試験後)

厚肉円筒から取り出した試験片を用いて圧裂引張試験をおこなった.図10に圧裂引張強度と押し込み最大荷重の関係を示す. 図10(a)に示す土丹では,押し込み最大荷重の増加に伴って,圧裂引張強度は単調に増加する.その増加率は,4岩種の中では一番大きい.最大荷重40kNでは,試料岩石の圧裂引張強度よりも大きな値となった.試験後の試験片をみると,通常の圧裂引張試験でもっともしばしば見られるように,載荷点を結んだ破断面が形成されていた.

図10(b)と(c)には,それぞれ田下凝灰岩と来待砂岩の結果を示す.両者に共通していえることは,気乾状態の値の方が大きいことである.ただし,かなりのばらつきがあった.湿潤状態の圧裂引張強度は小さいが,値のばらつきは比較的小さかった.ここで注目すべきことは,定性的な傾向は似ているが,来待砂岩と比較して田下凝灰岩の圧裂引張強度が一貫して小さいことである.一軸圧縮強度の場合には,両者の差は比較的小さかったことを考えると何らかの原因がありそうに思われた.そこで,圧裂試験後の試験片を調べてみると,田下凝灰岩では,土丹の場合と同じように,載荷点を結ぶ破断面が形成されているのに対して,来待砂岩では,両端の強固な円錐をできる限り迂回するような破断面が形成されることが多かった.おそらく,来待砂岩では,比較的強固な円錐が試験片両端に残り易く,このため圧裂引張強度が高くでたのであろう.

図10(d)に三城目安山岩の結果を示す.まず,三城目安山岩の気乾状態では,試験片の側面が剥離し易く,押し込み最大荷重が20〜60kNまでの圧裂引張試験は実施できなかった.湿潤状態では,全ての押し込み最大荷重で圧裂引張試験が実施できた.図からわかるように,圧裂引張強度は,他岩石と比べてばらつきが大きかった.また,押し込み最大荷重にともなって上昇する傾向もなかった.試験後の試験片を見ると,両端には円錐が残るが,側面は真二つに割れて剥離する.強固な両端の円錐部分と,わずかな力でくっついている側面とが,試験前に共存していたと考える.

一軸圧縮強度と同様に,圧裂引張強度と軸歪の間にもある程度の相関があったが,圧縮強度の場合よりは小さな相関係数であった.