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1.はじめに
1−1 はじめに
岩石の粘弾性的性質ないし時間依存性挙動をあらわすためにコンプライアンス可変型構成方程式を提案してから13年が経過した(大久保ら,1987).この構成方程式の提案にあたっては,実用性を重んじて,枝葉の部分にこだわらずできる限りパラメータの数を減らしたつもりであるが,それでもなお,構成方程式の数値計算やその際に用いるパラメータを求めることは必ずしも容易ではない.
ここでは,これまでの経験をもとに,岩石を対象にした構成方程式とそのパラメータの取得法について,できる限り簡明にまとめてみる.その際,忙しい研究者や技術者が拾い読みできるように,FAQ(Frequently Asked Questions)という形式を用いることにしたが,ここでいうFAQは普通とやや違う意味で使うので予め断っておきたい.このところインターネットでホームページをみていると,FAQという言葉が目立つようになってきた.もちろん,FAQは英文のパンフレットには古くから使われてきたものであり,そんなに目新しいものでも珍しいものでもない.普通は,読んで字のごとく,ホームページ等の主文を読んで,あるいは別の資料を読んだ読者が持ちやすい疑問を,質問と回答の形でまとめたものを指す.よって,回答は明快であり結論を持っている.しかしながら,本稿で提示する質問の過半は,著者が自分自身に対して問い掛けて続けているものであり,明快な回答のある質問はむしろ例外である.著者が長年にわたって考え続け,いまだはっきりした回答を得ないものも提示し,おおかたのご意見を伺いたいというのが,このような形でまとめた目的の一つである.

1−2 岩石を対象とした研究の意義と特徴は
岩石を対象にすることの最大の利点は,相手が絶対的な意味をもっていることかと思う.工業材料はどれも所詮人が開発したものであり,その内の一つの特徴をとことんまで追いかける気にはならない.それと比較して岩石は自然にあるものであり,人を超えた存在かと,このごろいまさらながら感じる.たまたまだが,三城目安山岩を主対象に選び,圧縮応力下での挙動にだいたい15年,ついで引張応力下での挙動に10年を費やしてきた.最近やっとせん断応力下での挙動を調べるのに取り掛かった次第である.地質を専門とする研究者は,特定のフィールドをずっと調べる人がいるようだが,岩石力学の研究者にも特定の岩石を1研究者がずっと追いかけるのも面白いかと思っている.最も,一生かかっても,1岩石のほんの一部の性質しかわからない可能性が高いが,それはそれでかまわないと考えて研究を進めてきた.

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1−3 岩石の粘弾性について特筆すべきことは何か
岩石を扱って最初に驚いたことは,破壊(変形)のモードが変形速度に依存しないことであった.もう少し具体的にいうと,ボールペンの軸などに使われている高分子材料を200℃くらいに暖めると水あめのようになる.両端をつかんでゆっくりと伸ばすと次第に延びて細くなっていく.これは一種の曳糸(spinning)である.しかしながら,できるだけ速く引っ張ると脆性破壊をし,その破面は鏡面状となる(一種のmelt fracture).岩石の場合には,削岩機による破壊から数ヶ月かかってクリープ破壊したものまで,破面の状況は見た目では変わらない.これはずっと考えてきた事項の一つだが,今もって,不思議に思っていることの一つである.

1−4 ピーク強度以降の特性を調べる意味は何か
よく,この質問を耳にする.トンネルや坑道を掘削した後の壁面近傍には,掘削の影響により「ゆるみ領域」と呼ばれる,弾性波速度や剛性がかなり低下した領域が存在する場合が多い.このゆるみ領域は,掘削により生じた圧縮応力あるいは,引張応力のため局所的にピーク強度をこえてしまった部分である.そのため,トンネルや坑道の安定性を評価するには,ゆるみ領域の特性を示す,ピーク強度以降の特性を調べる必要がある.また,岩盤構造物の破壊の予測をおこなう上で,実際に破壊した時にはどのような特性になるかを知る必要がある.例えば,クリープ試験における三次クリープ特性を調べた結果,大久保・西松(1986)の図7に示すように破壊時刻の予測が可能となった.この三次クリープとピーク強度以降の特性は密接な関係が存在することも明らかとなっており(福井ら,1989),そのような意味でもピーク強度以降の特性を調べることは重要である.

1−5 岩石ではピーク強度以降の性質を調べるのが難しいようだが
岩石の応力―歪曲線は強度破壊点(ピーク強度となる点)を境にして,それ以前とそれ以降に大別される.これまでは,ずっと強度破壊点以降に重点を置いて研究をおこなってきたが,これは強度破壊点以前の粘弾性に興味がなかったわけでなく,かえって難しく解決するのに時間がかかりそうに思えたからである.10年ほど前から,少しずつだが,強度破壊点以前の粘弾性について検討をしてきた.例えば,湿潤状態の田下凝灰岩にピーク強度の30%の荷重を加えて3年間ほど計測をした.実験をする前は,数日で一次クリープがとまり,それ以降のクリープ歪の増加は測定可能な値以下(だいたい10−12 s−1)になると予測したが,3年間経っても検知可能なクリープ歪の増加が続いた.ある方のご意見では,測定器などのドリフトの可能性があるとのことだったので,アンプなどを新調して再度同じ条件下での測定を開始した.図1に示す二度目の測定も3年間に達したが,一度目とだいたい同じ結果を得ている(大久保,2000a).このような低応力レベルでクリープ歪が増加し続けることはなかなか説明しがたいことと考えている.これと関連して,例えば田下凝灰岩を例にとって説明すると,気乾状態と湿潤状態で強度は大幅に変わる(大久保・秋,1994).これはよく知られたことだが,同時にヤング率も大幅に変わる.ヤング率→弾性的→可逆的と考えることには無理があり,ヤング率が変化するのは粘弾性に起因する可能性が高いと思われる.このように,強度破壊点以前の領域においても,不明なことは多数あり,この領域に関しても検討を継続的におこなっていく予定でいる.

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