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2.一軸応力下での構成方程式
2−1 構成方程式とは何か
一般的にいえば色々な意味があると思う.著者が使っているのは,歪と応力の関係式という比較的狭義の意味である.この考え方によると,一次元応力下での歪εと応力σをコンプライアンスλで結びつけたフック弾性の式は,最も基本的な構成方程式ということになる.
ε=λσ (1)
さて,(1)式に粘弾性(時間依存性)をいれる方法は2つある.一つは,時間とともに非弾性歪が増えていくことを重くみたものである.これは,他の分野でも良く使われる構成方程式で,山口勉氏が博士論文をまとめているとき一緒に検討し,既に論文として発表している(山口ら,1984).もう一つは,コンプライアンスλが時間とともに増加するとした扱いである.現実には,非弾性歪の増加とコンプライアンスの増加が同時におこっている.しかし両者を分離しようとした何昌栄氏は,大学院の5年間取り組んで,5種類の岩石に関する分離に成功しただけである(He et al. ,1990).これから考えて,両者の分離は相当に難しいことがわかる.どちらか一方だけを重くみた式であっても,大きな差がでるのは,応力が大きくなったり小さくなったりするとき(繰り返し応力,fatigue)だけで,岩盤内構造物を対象とした場合には,このような状況は極めてまれだと思われる.
本稿ではλの変化を重くみた構成方程式について考えてみることにするが,構成方程式に含まれるパラメータの求め方などは,他の形の構成方程式と共通な部分が多い.

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2−2 コンプライアンス可変型構成方程式とは
まず,λの増加速度はその時の応力に依存すると考える(dλ/dt=g(σ)).これを勘案して(1)式を書き換えると次のようになる.
dε/dt=dg/dt・σ+g(σ)・dσ/dt (2)
上式の右辺はσのみの関数なので,これは過去の履歴のない非ニュートン流体の構成方程式となる.過去の履歴がないとは,現時点での応力と応力速度が与えられれば,履歴に関係なく変形速度が決まることを指す.ここで対象とするのは岩石の破壊現象であり,当然過去の履歴を引きずるので,(2)式に少し改良を加える必要がある.改良の方法はいくつか考えられるが,有力なものの一つにdλ/dt=f(λ)g(σ)がある.この関数形で最も簡単なのが次式である(大久保ら,1987).
dλ/dt=aλσ (3)
簡単な式であるので,大久保(1992)の表1に示すような解析解がある.この構成方程式によって破壊が表現でき,大久保(1992)の図2に示すように,クリープ曲線,応力―歪曲線,応力緩和曲線を描いてみると,これまでに知られているさまざまな実験結果を再現できる.

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2−3 この構成方程式の長所と短所は
もともと,数値計算向けに開発したもので,最も簡単で,解析解のある構成方程式を探していてみつけたものである.ここではコンプライアンスλの変化だけを考えているので,最近よく使用されるFEM(Finite Element Method)との相性は良いと思う(大久保ら,1998a).この構成方程式を組み込むFEMプログラムに要求されるのは弾性計算機能だけであるので,ほとんどのFEMプログラムが使用可能であり,さらに,一次元(棒要素等)から三次元(4面体,6面体要素等)まで,汎用FEMプログラムに組み込まれたほとんど全ての要素(element)が使用できる.弾性計算機能を使用するだけなので,計算時間も多くの場合短くてすむ.さらに,簡単な荷重条件下では解析解があるので,数値計算結果のチェックは容易である.最大の短所は,2−1で述べたように,岩盤の変形挙動をコンプライアンスの変化だけとして扱っているので,変位が大きくなったり小さくなったりする時の挙動がうまく表現できないことである.幸い,岩盤内構造物を対象とした場合には,このようなことはまれにしかおこらない.

2−4 応力―歪曲線をより一致させるなどの精密化は可能か
その気になれば,いくらでも精密化はできる.この辺の事情は他の構成方程式と同じである.次に記すように,精密化の手段はいくつかある.@λの関数の精密化:これは簡単であり,時として有効な場合がある.また,この精密化にともなう副作用(計算時間の増加,計算結果の安定性の低下等)もほとんどない(大久保・福井,2000b).λの関数を精密化すれば,応力―歪曲線は現実のそれとほぼ同じにすることができる.Aσの関数の精密化:これも技術的には問題ないが,基礎データを採取することが難しい.Bλに異方性を考慮する:λに異方性を考慮すると,塑性論でいうさまざまな流れ則に対応させることができる.しかしながら,塑性論の場合と同じように,流れ則を実験的に確認するのは極めて難しく,現場の岩石・岩盤ではさらに困難である.たった一つの例外は,岩盤が層状になっている場合で,これを検討する価値はあると思う.その他にも,精密化の方法はいくつかあるが,実用性を考えると,あまり精密化を進めパラメータが多くなるのは得策といえない.

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2−5 通常使う線形粘弾性モデルとの関係は
線形と非線形粘弾性論は相反するものだという意見がある.ある面ではこの意見は正しいかもしれないが,著者はそうは考えていない.多くの現象は非線形性をもっているが,範囲を限定すれば線形理論によって議論することができる.しかしながら,具体的な現象(例えば岩石のクリープ)などを考えると,難しくあいまいな点を抱えている.
非線形粘弾性が念頭にあり,これを充分に勘案した上で線形理論を展開しないとその結果には危うさがともない,重大なあやまりを生じることがある.これまでの研究を見ると,線形粘弾性論を展開し,その適用範囲について配慮が不足している場合がある.例えば,あるトンネルの内空変位を線形理論でモデル化するのはもちろん可能である.しかし,このとき次のような点に注意をはらわなければならない.@変形の範囲,A時間の範囲,B地圧の範囲などである.

2−6 塑性論に基づく計算との関係は
塑性論は良くできた理論だと思っている.粘弾性論と塑性論についても両者のファンがいて,それぞれ自分がひいきする理論の肩を持ち,他方をけなすことがあるが,これは感心しない.塑性論に時間効果を加えれば粘弾性をあらわすことができるし,粘弾性論,特に非線形粘弾性論にわずかな変化を与えれば塑性論と同じ結果になる.両者は双子のようなものだと思っている.

2−7 パラメータをどうやって求めるのか(詳細は後述)
パラメータを決めるには,定歪速度試験が最も便利である(大久保・福井,1997b).特に,強度破壊点の少し手前で歪速度を10倍とした時,応力がどの位増加するかを調べればnが求まる.また,強度破壊点以降の応力−歪曲線の傾きを調べればmが求まる.もう一つのパラメータaはピーク強度から計算できる.

2−8 どの位の精度でパラメータを求めればよいのか
これは何を計算するかによる.パラメータの値によって,計算結果が大きく左右されるのは鉱柱のように自由面が多い時である.一方,円形トンネルの内空変位のような場合には,計算結果はパラメータの値によって大幅には変わらない.このような場合には,nは10,20,40,60の4段階程度で,m/nは,1/4, 1/2, 1の3段階程度の分類で間に合うことが多い.これまでの経験でも,現場から採取した岩石でも,この精度でパラメータを求めることは可能であった.

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2−9 数値解を求めるのは簡単か
簡単に一次元応力下における定歪速度試験,クリープ試験,応力緩和試験等のシミュレートができる.注意すべき点は次のとおりである.@非線形性が高いので,時間刻みを小さくしないと誤差が大きくなる.A同じく非線形性が高いので,通常使用する四次公式(ルンゲ・クッタ・ギル等)よりも,一次公式(オイラー)や二次公式の方が使い易い.

2−10 引張応力下にも適用できるか
これも,計算することには何の問題もない(趙ら,1995).問題は引張応力下での信頼すべきデータ(破壊条件や載荷速度依存性など)が少ないことである.

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