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3.三次元応力下への拡張
3−1 拡張するのに必要な変更は
一次元応力下での構成方程式をもう一度記す
dλ/dt=aλσ (3)
一次元応力下では,コンプライアンスの変化速度は応力のn乗に比例するとした.三次元応力下では,これを破壊限接近度σのn乗に比例すると考える.大きな変更点はこれだけであるが,加えてポアソン比が必要になる.なお,実際の計算にあたっては,式を無次元化した方が便利であるが,この点については既報(大久保ら,1998a)を参照されたい.

3−2 破壊限接近度とは
最も簡単なCoulomb破壊基準は次のようにあらわされる.
τ=c+tanφ (4)
この他にも,放物線であらわされるMohrの破壊基準,二次式となるJanachの破壊基準などがある.破壊限接近度とは,応力状態がこの破壊基準にどの位接近しているかをあらわす指標である.破壊限接近度は,応力状態が破壊基準と一致しているとき1となり,これより応力が低いと小さくなる.やや正確さにかけるが,破壊限接近度とは(局所)安全率の逆数と考えてもよい.なお,この点については既報(西松ら,1994)を参照されたい.

3−3 パラメータはどうするか(詳細は後述)
個別には次の章で述べるが,見通しをよくするため,要点を述べておくことにする.nとmは周圧によって変わる可能性がある.理想的には,各周圧でnとmを求めるのがよいが,これには多くの手間を要する.幸いにして,周圧下での強度(破壊基準)と,nの間には関係式が成り立つので,これを使って計算できる.また,著者らの行った実験の範囲内ではmは周圧の影響を受けていない.すなわち,破壊基準がわかっていれば,一軸応力下でのnとmより,周圧下での両者の値が計算できる.

3−4 破壊基準が重要だということがわかったが,
    どの破壊基準がよいか
どれも完璧なものはなく,使い慣れた破壊基準を使うのが一番だと思う.圧縮応力のみ加わる場合には,著名な破壊条件式ならどれを選択しても計算結果に大差はないと考える.ただし,引張応力の発生する場合には,これに対応していない破壊条件式が多いので注意が必要である.著者の経験では,Janachの破壊基準を使用すると,圧縮下ではまずまずの結果が得られるが,引張応力下ではやや疑問点がある.破壊基準と破壊限接近度は,これからも検討しなければならない重要な課題である.なお,既報(Okubo et al. ,1997a)にいくつかの破壊基準と破壊限接近度をまとめておいた.

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3−5 引張応力下での破壊基準についてもう少し説明して欲しい
Coulombの破壊基準等でもみられ,Janachが格段に悪いわけではない.
もう少しマクロな視点から,破壊基準をみつめてみることにする.実用に供されている破壊基準の多くは2つのパラメータを持っている.Janachもそうだし,(4)式のCoulomb破壊基準でも,cとφの2つがパラメータである.2つのパラメータで圧縮から引張までをカバーすることは難しく,どこかに重点をおくと,それから外れた部分の誤差は大きくなってしまう.Janachも例外ではなく,圧縮側に重点をおいてパラメータを決めると,引張側があわなくなってしまう.しかしながら,精密化して3つのパラメータをもつ破壊基準は,パラメータを求めることが難しいため,これまで成功していない(広く用いられていない)ようである.

3−6 ポアソン比に関してどのように考えているか
ポアソン比に関しては,種々仮定を変えて計算してみた.その結果を勘案して,“体積弾性率一定”の仮定のもとに計算をおこなっている(大久保ら,1998a).この仮定のもとでは,破壊が進行してコンプライアンスが増加すると,ポアソン比は次第に増加して0.5に近付いていく.この扱いは,暫定的なものと考えており,今後見直す必要がある.

3−7 実際のFEMではどのような計算アルゴリズムになるのか
弾性計算のFEMプログラムを用いて,陽解法により次のようにおこなえばよい.なお,(3)式の微分方程式を解く際,反復計算により陰解法によっても計算は可能であるが,精度や手間などを考えると,次のような陽解法の方がお勧めである.
@t=t+Δtとする
AFEMにより弾性計算を行う
B各要素の主応力と破壊限接近度を計算する.ついで,(3)式に基づいて,
 オイラー法により各要素のコンプライアンスを求める.
C各要素のコンプライアンスを新しいものに入れ替え,@に戻る
ここでよく誤解があるのが,通常の弾塑性FEMのように増分方式で計算しているのではなく,(1)式に基づいた計算であるため,過去の履歴としてその時刻のコンプライアンスだけを保存して,弾性の再計算を行うことによって,次の時刻の変形解析を行っている点である.

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3−8 計算領域はどの程度にすればよいか
著者が最初の頃にミスをしたのは,計算領域を弾性計算と同様に設定したことである.最初破壊領域が小さいうちは,弾性計算と同様に,岩盤内構造物代表寸法の3倍程度の領域を対象として計算すればよいが,破壊領域が大きくなると誤差が大きくなる.これまでの経験では,{(岩盤内構造物代表寸法)+(破壊領域の寸法)}の3〜 5倍を計算領域とすればまずまずの結果がでる.

3−9 時間刻みの増分はどの程度にすればよいか
プログラミングで難しい点は,時間刻みをどうするかだと思う.具体的な例として,岩盤にトンネルを掘った時を考える.周辺の岩盤の動きは最初急であるが次第に落ち着いてくることが知られている.計算でも同様の結果が得られる.計算精度を保つには,岩盤が速く動く時の時間刻みは短くして,次第に岩盤の動く速度が低下するにつれて,時間刻みを長くするのがよい.これは,数値計算では一般的に言えることであろう.例外はあるが,これまでの経験では,最初の時間刻みをΔt0として,次式のように順次1.1倍して時間刻みを次第に長くすればよい.
Δt=1.1Δt0  (5)
念のためにいっておくが,非線形の計算ではalways trueという事項はほとんどない.上記も例外があるので注意が必要である.

3−10 FEM以外の計算法にも適用できるか
原理的には,弾性計算のできる計算法ならばどれでも可能である.計算速度と計算精度の両者を勘案して,どの計算法がよいかが決まるであろう.

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