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6.パラメータの求め方
6−1 n の求め方は
サーボ試験機を用いて,定歪速度一軸圧縮試験より求めることを勧める.その際,次に示すa)とb)の選択肢がある.
a)試験片を20本程度使用し,精度よく求めたい場合(秋,1995)
1)10−6,10−5,10−4,10−3−1の各歪速度で,4 〜 5本の一軸圧縮試験を行い,ピーク強度を求める.
2)ピーク強度を縦軸,歪速度を横軸として両対数グラフにプロットし,最小二乗法によりその傾きΦを求めると n=(1/Φ)−1となる
b)試験片数本で,多少精度は落ちても簡便に求めたい場合(Okubo et al. ,1990)
1)歪速度10−6−1でピーク強度近くまで載荷して,応力−歪曲線の傾きが50%接線ヤング率の30〜50%となる点σで,歪速度を10−5−1に変更する.
2)その後,応力−歪曲線の傾きは一旦大きくなった後,徐々に低下する.その過程で,点σでの傾きと同じ傾きとなる点σを求める.応力比σ/σ=101/(n+1)が成り立つので,この式を利用してnを計算する.

地下発電所・地下石油備蓄などの側壁や,鉱山の鉱柱のように,比較的まっすぐな自由面が現れる場合は,nの値により計算結果が大きく異なるので,a)の手法が望ましい.トンネルなどのように円形をしている場合には,nの値の影響はさほど大きくないので,b)の方法でもよい.

なお,クリープ試験からもnを求めることができるが,より多くの時間がかかる.

1)異なった応力レベルで各4〜5本のクリープ試験を行い,平均幾何寿命を求める.
2)n= log(平均寿命の比)/ log(応力比)で求まる.

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6−2 n =(1/Φ)−1となるのはどうしてか
強度は歪速度の1/(n+1)乗に比例して増加する.したがって,強度を縦軸に,歪速度を横軸にとった両対数グラフ上での傾きΦは,1/(n+1)となる.Φ=1/(n+1)を変形すれば,n=(1/Φ)− 1が得られる.

6−3 n の取り得る範囲について説明して欲しい
難しい質問だが,だいたい次のように考えておいてよい
1)n<1 濡れた粒状体(片栗粉,砂など)で観察される.この現象は,多くの場合,体積膨張をともなうのでdilatancyと呼ばれることがある.
2)n=1 ゆっくりと流れる水などではこうなる.ニュートン流体の構成方程式におけるnと考えてよい.
3)10<n<100 岩石ではこの範囲かと思う.
4)n=∞ ある応力に達すると急激に変形が増す場合である.理想的な塑性体の場合のnといえる.
6−4 トンネルの内空変位などの計測結果からnは求められるか
nを色々と変えて計算をし,測定結果と一致した場合のnを推定値とすることは可能と思う.しかし,具体的な手順は確立されておらず,今後の課題といえる.

6−5 m の求め方は
mは,ピーク強度以降における応力−歪曲線の傾きから求めるのが,最も簡単である.まず,大久保・福井(1997b)の図1に示す手順で,ピーク強度以降の応力−歪曲線の傾きを示す角度αを求める.次に同文献の図2を用いて比 m/nを求め,これに既知のnをかけてmを得る.
実験的に全て実証されているわけではないが,水分(湿度),温度,周圧の影響を図2(大久保・福井,1997b)に示す.

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6−6 a の求め方は
歪速度Cでの強度σから,次式によりaを求める.
a=(m/n+1)m/(n−m+1)λ0−mσ−(n+1) C (6)
ただし,λ0は初期コンプライアンス(=1/ヤング率)である.

6−7 (6)式はどうやって導出するのか
(3)式を再掲する.
dλ/dt=aλσ (3)
定歪速度試験では次式が成り立つ.
ε=λσ=Ct
よって,σ=Ct/λとなる.これを(3)式に代入すれば,(3)式はλに関する常微分方程式となり,初期条件t=0,λ=λ0のもとに解ける.
σ=((C/a)(n+1)/(n−m+1)(λn−m+1−λ0n−m+1)/ λn+1))1/(n+1)  (7)
ピーク強度を取る点(強度破壊点)では次の関係があり,これを利用してピーク強度を求める.強度破壊点ではdσ/dt=0なので,dε/dt=C=σdλ/dtが成り立つ.これを(3)式に代入して得られる次式は,強度破壊点で成り立つ.
C=aσn+1λ
そこで,この関係式を(7)式に代入すると,微分することなく代入操作だけで最大値(ピーク強度)を求めることができる.
σc=(C/a)1/(n+1)(m)/(n+1)m/((n+1)(n−m+1)) λ0−m/(n+1)
これを整理してaを求めると(6)式となる.

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6−8 クラスUでは定歪速度試験によって強度破壊点以降の
    応力−歪曲線を得られないがどうすればよいか
クラスUとは,定歪速度試験でピーク強度以降,急激に破壊する挙動(場合によっては岩石)を指す.著者らが開発した応力帰還制御を用いれば,上記の方法によりパラメータを求めることができる(Okubo and Nishimatsu,1985).

6−9 万能試験機しかないがどうしたらよいか
6−7のa)の方法を用いてnを求める.一軸圧縮試験中,変位速度ができる限り目標値となるように,載荷速度調整バルブを操作し,載荷し始めてから,ピーク強度となるまでの所要時間を求める.目標値をできる限り広く変えた一連の試験が終了した後,所要時間の逆数を横軸,ピーク強度を縦軸とした両対数グラフを描き,6−7のa)と同様に,傾きΦからnを求める.
6−7のb)の方法を,万能試験機で実施するのは難しい.

6−10 現場に適用したいときどの試験法がよいか.
     また,ばらつきが大きそうだがどうしたらよいか
大規模地下空洞のように,さまざまな調査ボーリングがおこなわれ,かなりの数の試験片を確保できる場合には,6−7のa)の方法を用いればよい.多くの坑道やトンネルのように,少数の試験片しか用意できない場合とか,試験片ごとのばらつきが大きいと予想される場合には,6−7のb)の方法が適している.

6−11 試験片の作成・大きさはどうすればよいか
試験片は,JIS M0301に規格があり,他の規格でもほぼ同様である.両端面の平行度は,5/100 mm以下に仕上げる必要がある.試験片の大きさとしては,標準的には直径5 cm,高さ10 cmのものが用いられるが,nを求めるために数多くの試験片が必要となるため,もう少し小さい試験片を用いることも可能である.例えば,直径2.5 cm,高さ5 cmの試験片を用いると,試験機の容量の小さいもので済むし,試験片の作製も楽である.ただし,粒径がかなり大きい鉱物(5 mm以上)が入っている岩石の場合には,直径5 cm程度が必要である.

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6−12 どのような環境条件で試験すればよいか.
     また,試験手順で注意すべき点は
岩石は水分量によって強度が変化するため,環境条件を統一することが重要である.雨が降っている時や,夏場などで湿度が高い場合には強度が低下するし,冬場に暖房が入ると湿度が低下して強度が上がる.また,湿度は日変化が大きいので,この点も承知しておく必要がある.載荷速度依存性よりnを求める試験では,延べ20時間程度,よって試験に3日間程度かかる.この間における湿度変化の影響を軽減するには,条件をこまめに変える方がよい.載荷速度(試験条件)をABCDの4段階に変えるとして,“AAAAABBBBBCCCCCDDDDD”の順だと影響がでやすく,“ABCDABCDABCDABCDABCD”の順だと影響がでにくい.

6−13 軟岩を対象としたときの留意点は
試験前の水分管理が問題である.軟岩の場合には,水分が蒸発すると亀裂の発生などの懸念があるので,パラフィンで包むなどの注意が必要である.なお,応力が単調増加するのみで,ピーク強度を示さないことがあるが,この場合にも(3)式は適用できる(大久保,1992).
6−14 軟岩と硬岩でクリープなど粘弾性現象の機構や
     性質に違いがあるか
基本的な機構は速度過程論によって説明できると考えている.したがって,軟岩と硬岩のみならず,鋼,ガラス,高分子などにおいても基本的な機構はほとんど変わらないと考えている.ただし,これは実証されたものでなく,著者の考え(philosophy)である.基本的な機構はあまり変わらないが,結晶の種類,粒子間物質(bonding),水,温度などにより,粘弾性現象の性質は複雑に変化する.その結果,多くの軟岩は,金属でいうhot creepに似た性質を示し,他方,多くの硬岩はcold creepに似た性質を示す.一般論は極めて難しいが,軟岩では速度過程論に基づく流動(分子の並べ替え)が構造物の広い範囲で生じるのに対して,硬岩では局所に限定されるといえる.

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