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8.まとめ
8−1 これまでの経験で不足しがちな情報は何か
@ポアソン比:これは意外と計算結果に影響を及ぼすが,応力レベルによりかなり変化するので,この変化を含めてその動向を正確に把握することは困難である.A引張応力下での挙動:引張応力下での挙動はなかなか調べ難いので,使用できるデータが少ない.時間をかけてデータを積み上げていくことが唯一の方法であろう.B長期間にわたる挙動(次に記す).

8−2 長期間にわたる挙動を検討するにはどうしたらよいか
いろいろな手段を使って徐々に検討せざるを得ないと考えている.@実験室実験で数年までの挙動を把握する.A人工物の調査によって1000年程度までの現象を把握する.Bそれ以上の長期間の現象は,自然物の調査による.このほか,分子動力学などのミクロな観点から原理・原則をおさえることが必要だと思っている.このように考えるとなかなか大変だが,時間依存性のよいことは,寸法効果が小さいことだと思う.この利点についても今後検討する余地がおおいにあると思うが,参考までに私見を述べておく.

8−3 地圧を利用した長期挙動の検証とは
まだまだ検討中だが,有力なものの一つに地圧の利用がある.中国の北京近郊における観察結果で,かなり大きな水平地圧が観察された.この近辺には昔かなり大規模な岩体の貫入があった.その際に生じた地圧は徐々に緩和したが,幾分かは現在まで残っていると考えられる.貫入直後の地圧の推定値と現在の地圧から,どの構成方程式が適用できそうか,その構成方程式のパラメータはどのくらいかが,ある程度わかる可能性が高い(大久保ら,1999).

8−4 水とか温度も影響するのと思うが情報は十分か
両者とも不足していると思う.水の影響についてはすでに述べたので割愛するが,温度の影響も無視できないであろう.従来の研究をみると,地球物理専攻の学者をはじめとする理学系の人が多く研究しており,土木や鉱山で対象とするよりずっと深い地点を考えた数100℃以上の温度での実験が多い.著者が調べたところでは,100℃近辺のデータは少なかった.おそらく常温と100℃とで劇的な変化はないと思われるが,長期間にわたる安定性が要求される岩盤内空洞の開発に先立って,水環境下で80℃から100℃程度の範囲のデータは早期に実験で得ておく必要があると思う.

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8−5 最近提案された過去へのシミュレーションとは何か
過去のある時点のモデルを作り,それで現在まで計算をおこなう.この計算を繰り返して計算モデルのパラメータを決める.その後,そのパラメータを使って,現在から将来にむけた予測計算をおこなう.こんな手順で作業をしたことがある.その際に感じたことは,過去のモデルを作るのに大変手間がかかるうえに,習熟した地質屋と力学屋が共同作業をしなければならないことである.そこで,現在のモデルを作り,それを出発点として過去に向かって数値計算をおこない,計算結果を地質屋さんにみてもらう.これを繰り返してパラメータを決めた後,現在から将来にむけた予測計算をおこなうことを提案した.この方がやや手順が省けると思ったからである.しかし,過去への計算は意外と困難であって,数値的な誤差が生じ易いことが判明した.現在検討中であるが面白い研究テーマだと考えている(大久保・福井,1998b).

8−6 計算法に関する今後の課題は何か
構成方程式の開発者として気になっていることは,@歪が大きくなったり小さくなったりした時の扱いと,A大きな歪が生じた場合の扱いである.両者とも難しい問題だが,今後検討していきたいと考えている.他にも,細かい点になると気にかかることや,改良しなければならないことがたくさんある.しかし,これらはあまり本質的な問題ではないので触れないことにする.

8−7 計算結果の可視化に関する課題は
この構成方程式を使用して計算すると,岩盤内各所のコンプライアンスが求まる.激しく破壊している箇所のコンプライアンスほど大きくなるので,コンプライアンスによって色分けした図は,破壊箇所を見易く表現する.他の構成方程式だと,このように破壊に直接結びつく指標をみつけることが難しいと思う.次にどの部分が危ないか(今後破壊が進展しそうか)を表示するために,破壊限接近度を使うことが考えられる.実用的には重要と思うがいくつかの課題を残している.@破壊限接近度そのものが必ずしも確立されておらず,今後,検討する余地がおおいにある.Aすでに破壊してしまった箇所で破壊限接近度が高いところがある.このような部分はもともと負荷能力が小さく,その動向は重要でない.したがって,コンプライアンスの値と破壊限接近度の両者を組み合わせた指標を開発するほうが実状に合っている.

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8−8 コンプライアンスの値と破壊限接近度の両者を組み合わせた
    指標についてもう少し説明してください
コンプライアンスをλとして,破壊限接近度をSと書くことにする.“Aすでに破壊してしまった箇所で破壊限接近度が高いところがある.このような部分はもともと負荷能力が小さく,その動向は重要でない.”を克服するには,次のような指標が考えられる.
S・f(λ) :f(λ)は単調減少関数
最も簡単な候補として,S/λβなどが考えられる.検討中だが,できたら物理的な意味を付加した指標を提案したいと考えている.

8−9 最後に一言 ― クリープと強度の回復 ―
これまでおこなってきた研究のテーマは,対象は変えても粘弾性的性質といえる.クリープというと,なんとなく破壊に向かう行為でよくないことのように思われがちだが,本当は安定な状態に向かう自然の理にかなった現象だと思っている.また,これはクリープといえないかもしれないが,ある条件下においては,強度の回復がおこっていると思う.この点は,特に坑道の長期安定性を考える上では大切なのでじっくりと考えてみたい.数値シミュレーション結果によると,わずかでも強度の回復が期待できると長期安定性が格段に向上する.今後かなりの時間を使って検討する価値があると考えている.

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