岩石の三軸圧縮試験用可視化ベッセルの開発と試用
4.試用結果

試作した可視化ベッセルを用いて試験を行った.可視化ベッセルの許容周圧は10MPaと比較的小さいので,数MPaの周圧でも,影響が顕著に観察できると予測された田下凝灰岩と土丹を試料岩石として選定した.

試験片は直径25mm,高さ50mmの円柱形とした.田下凝灰岩は,試験片整形後2週間以上,温度・湿度が管理された実験室内に放置し,自然乾燥させてから試験した.土丹は,原位置で採取したブロックを密封して保管し,水分の変化がないように心がけた.試験片整形後,可能な限り短時間の内に試験を行った(大久保ら,2002).

試験は容量500kNのサーボ試験機を用いて,田下凝灰岩では定歪速度10μ/s,土丹では定歪速度100μ/sでおこなった.周圧は,最大圧力35MPaのサーボ式周圧装置で加えた.田下凝灰岩では5.9,7.8,9.8MPaの3段階,土丹でも2.0,3.9,7.8MPaの3段階に周圧を変えて試験した.

試験片端面間の変位は,サーボ試験機に取り付けてある差動変圧器で測定した.また,試験片に加わる荷重は,容量200kNの歪ゲージ式ロードセルで測定した.

4.1 田下凝灰岩での結果

実験で得られた応力―軸歪曲線の例を図4(右側)に示す.縦軸は周圧を差し引いた差応力である.横軸の軸歪は,周圧相当の静水圧を加えた時の歪を差し引いた差歪であり,差動変圧器の測定値よりもとめた.以下で単に軸歪と称するのは,このように差動変圧器よりもとめた値である.なお,今回の実験では,試験片の変形がかなり大きくなったが,応力,歪ともそれぞれ初期断面積,初期長さを基準とした微小変形の場合の式を使用した.

気乾状態での一軸圧縮強度は約15MPaであるが(秋,1995),周圧5.9MPaの強度はその倍程度になる.さらに周圧が増加すると強度が増し,強度破壊点での軸歪も若干増加する.また,周圧が高くなると,強度破壊点以降の応力低下がやや緩慢となる.図4(左側)には,撮影した写真から求めた,試験片の最も膨らんだ部分の横歪を示した.強度破壊点までは軸歪よりも小さいが,強度破壊点付近から急激に増加しはじめ,その後は軸歪と近い値になる.以上で述べた点は,金属製ベッセルを用いた従来の研究結果と定性的に同じである(趙ら,1995;齋藤ら,1998).

周圧5.9MPaにおける試験片の連続写真を図5に示す.なお,この試験片の応力−歪曲線は図4に示してある.軸歪0.02で左側面が膨らみはじめ,軸歪0.04ではその膨らみが顕著になる.右側面も膨らむが,左側面に比べると小さい.また,試験片左上部から右下へと複数のせん断面が成長しはじめる.軸歪が0.06,0.08と大きくなるにつれ,これらのせん断面における滑りが増し,せん断面の終端付近にあたる左側面の膨らみがより顕著になっていく.写真では見難いので,その様子を図6A(a)に示すが,左上から右下方向へのせん断面のほか,これと共役な複数のせん断面も軸歪が大きくなると観察できた.このように,周圧下で試験片がどのように変化していくかを観測できることが可視化ベッセルの第一の利点である.

図5と同じ試験片の下端から9mmの高さより,4.6mmごとに46mmまでの高さにおける横歪の変化を図7(a)に示す.この図では軸歪が0.01増加するごとの変化を示している.図5からわかるように,試験片の上下端はベッセルの金属板に隠れて見えないため測定することができなかった.左から2番目の結果は軸歪が0.01の時のものであり,強度破壊点付近に対応する.このときの横歪は,比較的小さく,高さ方向の変化は複雑で一定の傾向は見出せない.軸歪が0.02となると高さ32mmの横歪が大きくなる.これは左側面上部でせん断面が入りはじめたためと考えられる.軸歪がさらに大きくなると,ほぼ中央の横歪が大きくなるが,端に近い部分の変化は小さく,殊に上部の横歪はほとんど変化しなかった.

表1に示すように,周圧5.9MPaでは図6@のせん断面による破壊モードが7回の試験中3回みられた.この他に,図6Aに示すように,試験片の中央部付近に交差したせん断面ができて横方向に膨らむ破壊モードが4回みられた.この破壊モードでは,せん断面ができて弱くなった部分に,上下の部分がめり込むことが観察された.なお,田下凝灰岩では破壊モード@とAの区別は必ずしも明瞭でなく,@とAの中間ともいえる破壊モードも現れたが,何度も写真や試験片を見比べた後,便宜上どちらかに分類しておいた.

図7(b)と(c)には,それぞれ周圧7.8MPaと9.8MPaにおける横歪の変化を示した.なお,これらの試験片の応力−歪曲線は図4に示してあり,破壊モードはともにAであった.周圧が5.9MPaの場合と同様に,強度破壊点付近に対応する軸歪0.01の時の横歪は小さい.この時の軸方向の変化は複雑で一定の傾向がみられないが,その後は,中央付近が徐々に膨らんでいく.

表1に示すように,周圧7.8MPaでおこなった10回の試験の内,図6の破壊モード@が3回で,破壊モードAが7回であった.一方,周圧が9.8MPaでは,8回の試験中で,破壊モード@が2回,破壊モードAが6回であった.これらの結果より,周圧が増加するにつれて,破壊モードが@からAへとわずかながら移行すると考えられる.また,同じ破壊モードAでも,周圧が増加するにつれて破壊の及ぶ範囲が広がっていき,図6のA(a)から(b)へと移行する傾向が見られた.破壊モードが@やA(a)の場合には,強度破壊点以降は破壊が端面付近まで及びにくく,端面付近の横歪の変化は小さくなる.一方,周圧が9.8MPaで破壊モードがA(b)の場合には,強度破壊点以降もしばらくの間端面付近で破壊が進む傾向がみられた.

以上の議論で軸歪と称してきたのは,サーボ試験機に取り付けられた差動変圧器から求めた変位を試験片初期長さで割った値である.可視化ベッセルを用いた実験では,部分的な軸歪を求めることが可能と考えて,試験片を覆う熱可縮性チューブに測線を描きその長さの変化を測定し軸歪を求めた.

図8に得られた結果の例を示すが,横軸はこれまでと同じ軸歪で,縦軸は試験片中央2 cmの区間の軸歪(以下中央軸歪と呼ぶ)である.中央軸歪は,図8(a)のカット図に示すように,等間隔な5測線の変化を平均し,これを初期長さ(約2cm)で割ってもとめた.

図8(a)は周圧5.9MPaでおこなった試験の内,5回の整理結果を示したものであり,目安として全体軸歪と中央軸歪が等しくなる場合の直線も示した.周圧5.9MPaでは,中央軸歪は全体軸歪とほぼ等しく,直線的に増加しており,ばらつきも小さいことがわかる.図8(b)に示す周圧7.8MPaでは,中央軸歪の方が全体軸歪より大きくなる試験片の方が多く,ばらつきが大きい.図8(c)に示す,周圧9.8MPaでは,中央軸歪の方が全体軸歪より小さくなる場合が3回,逆の場合が2回であった.試験片ごとのばらつきは,周圧5.9MPaと周圧7.8MPaの間といえる.

図8に示した結果のうち,#3@のように表示されている,せん断破壊した試験片については,破壊した試験片が軸対象でないので撮影方向によって中央軸歪が変わってしまい,得られた結果はばらつきが大きく周圧による変化を検討することができなかった.

#1Aのように一部が横に膨らむモードの場合には,周圧5.9MPaより7.8MPaの中央軸歪が大きかった.その原因の一つとして,周圧5.9MPaの方が,中央の膨らんだ部分に,両端の健全な部分がめりこみ易いことが考えられる.周圧が7.8MPaから9.8MPaに増すと,今度は中央軸歪が小さくなる.これは周圧の増加にともなって,破壊モードが図6のA(a)から(b)へと移行し,中央部のみが大きく膨らむことがなくなるためである.

中央軸歪と同様に,試験片中央2cm区間の横歪の平均値(中央横歪)も整理してみた.図9に,周圧5.9MPaの時の|中央横歪/軸歪|と軸歪の関係を示した.軸歪が0.02程度までは急激に増加するが,その後,次第に傾きが小さくなり,軸歪0.04以上ではほぼ一定となる.この一定となったときの値は0.6〜1.1であり,弾性領域でのポアソン比の数倍となる.周圧が7.8MPaと9.8MPaのときも定性的な傾向はほとんど同じであった.ただし,一定になったときの値は,周圧の増加にともなってわずかながら減少する傾向をみせ,周圧9.8MPaでは6回の結果が0.5〜0.8の範囲に入った.

4.2 土丹での結果

図10(a)〜(c)に,実験で得られた応力―歪曲線と破壊した試験片の模式図を,周圧ごとにわけて示す.図10(a)は,周圧2.0MPaでおこなった3本の試験結果である.この場合にも破壊モードはせん断破壊@と部分的な横への膨らみAとに大別できた.ただし,せん断破壊の場合,田下凝灰岩の場合には共役なせん断面のできることが多かったが,土丹では試験片の両端面を結ぶ1つのせん断面ができ,破壊モードの区別がはっきりできた.

図中の試験片#2は破壊モード@で破壊し,その強度は他に比べて高かった.一方,強度のやや低い#1と#3の試験片は,破壊モードAで破壊した.いずれの場合にも延性的な特性を示し,歪が大きくなっても応力低下はごくわずかであった.図10(b)は,周圧3.9MPaでの結果であるが,この場合には3本すべてが破壊モードAで破壊した.この場合にも,歪が大きくなっても応力はほとんど低下しなかった.図10(c)は周圧7.8MPaでの結果であるが,この場合には#1の試験片が破壊モード@で破壊した.周圧2.0MPaの場合と同様に,この破壊モード@で破壊した試験片の強度がもっとも高かった.試験片の個数が少ないので確たることはいえないが,弱い部分を含む試験片は,その部分に多くのせん断面ができて膨らみ破壊モードAの破壊をし,比較的均質な試験片では,せん断面が形成されて破壊モード@となった可能性がある.

試験片(図10(c) #1)の連続写真を図11に示す.参考までに,最終的な破断面の位置を,図11(a)の白線で示した.軸歪0.06になると,試験片の右側面の上部に,左下方向へと進展するせん断面が見えはじめる.軸歪が増加するに従い,せん断面が顕著になっていき,それに伴い横方向への膨らみも増す.なお,周圧が高くなると,熱可縮性チューブと試験片の密着性が増して,歪が大きくなっても熱可縮性チューブのしわが目立たなくなることがわかった.

各周圧から1例ずつ選んで(図10(a) #3,(b)#3,(c)#2),横歪の高さ方向分布を図12に示す.横歪の測定は,試験片を7等分した各高さに描いた側線の長さの変化を,撮影した写真から読み取っておこなった.軸歪が0.01増加する毎の変化を示したが,いずれの周圧でも,最終的には端面から10〜15 mm離れた部分の横歪が最も大きくなる.田下凝灰岩では試験片中央付近の横歪が大きかったのと,かなり異なった傾向を示したといえる.軸歪が0.13における横歪の最大値を比較してみると,いずれも0.16程度であり大差ないといえる.一方,軸歪が0.13における横歪の最小値には若干の差があった.すなわち,周圧のもっとも小さい(a)の場合には,高さ5mmで横歪は最小値となり,その値は約0.03であった.しかしながら,(b)と(c)では,試験片上部で横歪は最小となり,値はいずれも約0.005と小さかった.ここで示した結果に関する限り,周圧が大きい場合の方が,破壊の進行が局所化するように思われたが,試験片の個数が少なく今後検討の余地がある.