岩石の三軸圧縮試験用可視化ベッセルの開発と試用
5.考察とまとめ

可視化ベッセルの心臓部ともいえる透明円筒の材料として,今回はアクリル樹脂を使用した.ほぼ同じ位の強度をもつ材料としてポリカーボネートがあるが,透明度が落ちるので採用を見送った.ただし,破壊するまでの吸収エネルギーは,アクリルよりポリカーボネートの方がはるかに大きいので今後検討する予定である(日本機械学会,1994).また,最近になって使用されはじめたPPS(ポリフェニルサルファイド)樹脂の強度は,アクリルの約2倍であるが,著者が検討した限りでは,透明でかつ表面を研磨したとき鏡面状に仕上がるものがみつからなかったので今回は採用しなかった.PPSの持つ高い強度は魅力的であり,利用するにはかなりの工夫が要りそうだが,今後継続して検討していくつもりである.今回主として検討した材料は,エンジニアリング・プラスティックであるが,高強度ガラスについても検討の余地はあると考えている.

2年ほどの使用経験と破壊試験を通じて,初期の設計通り周圧10MPaまでの使用には十分耐えるとの結論を得た.オーリングの種類,取り付け方法,加工精度など細部を改良すれば周圧20MPaまでは使用できる可能性が高いと考えており,近日中にこの周圧での試用を開始する予定である.

透明円筒を通してデジタルカメラで撮影した写真により測定を試みたところ,変位の測定精度は,±0.06mm以下であった.透明円筒を通して撮影したことによる不利はほとんどなく,撮影機材と撮影技術を高めれば,変位の測定精度はかなり上がると考えている.

田下凝灰岩と土丹を用いた三軸圧縮試験をおこなったが,周圧下で試験片がどのように変形していくかを実時間で目視できることが,当然ながら開発した可視化ベッセルの最大の利点であると考える.今後ビデオ撮影をおこない,その映像を画像処理することも考えている.

試験時に撮影した写真から,横歪や部分的な軸歪の測定を試みた.今回使用した岩石に関する限り,試験片を覆う熱可縮性チューブに何本か線を引き,それらの長さや間隔を測定することにより,歪の測定が可能であることがわかった.