鋼繊維補強モルタルの曲げ試験の数値シミュレーション
1.はじめに

鋼繊維補強モルタル(SFRM)は,鋼繊維を混入することにより延性を増した材料といえ,徐々に用途を広げつつある.この鋼繊維補強モルタルの特徴は曲げモーメントを受けるときに発揮され,通常のモルタルと比較して,曲げ強度(抗折力)は2倍以上になるし,破壊するまでに要するエネルギーは数10倍になることが知られている(鋼材倶楽部,1998).したがって,曲げモーメントを受ける部材に鋼繊維補強モルタルを使用することは有効であり,その特性をどのように見積もるかは重要な課題である.

実用上特に重要で種々の構造物の設計に欠かせないのが,任意の寸法を持つ梁の力学特性を見積もる方法である.一つの方法として,規格や指針などで定められた寸法,形状の試験片で得られた曲げ試験結果を用いて,異なる寸法の梁の挙動を見積もることが考えられる.通常の試験片は,断面が 10 cm×10 cmで長さが 40 cm程度の直方体である.これを用いて4点曲げ試験をおこない,荷重−たわみ曲線を求める.荷重−たわみ曲線より引張応力下における応力−歪曲線を,何らかの方法によって推定する.その後,引張応力下における応力−歪曲線を用いて,試験片と別の形状・寸法を持つ構造物の曲げ強度などを見積もり,構造物の設計をする(鋼材倶楽部,1995).この手順には問題点が2つある.一つは,一軸引張試験をおこなわないで曲げ試験結果等により,一軸引張応力下での応力−歪曲線を推定することはかなり困難であることである.もう一つは,一軸引張応力下での応力−歪曲線より,梁の曲げ特性を求める手順も必ずしも確立されていないことも問題点として挙げられる.

著者は,最近開発した一軸引張試験方法を鋼繊維補強モルタルに適用して,その応力−歪曲線を求めることに成功した(福井ら,1996).よって,前述の問題点の一つはある程度解決されたと考えている.本稿では,一軸引張試験より求めた応力−歪曲線から構成方程式を導き,さらに構成方程式を2次元有限要素法プログラムに組み込んで,鋼繊維補強モルタルの4点曲げ試験の数値シミュレーションを行い,曲げ試験結果と比較・検討した結果について述べる.なお,一軸引張応力下での応力−歪曲線より梁の曲げ特性を求める際,問題となる試験片寸法の影響も考慮した.