岩石の一軸引張試験のシミュレーション
2.一軸引張試験

(1)試験方法

一軸引張試験機としては,容量500 kNのサーボ試験機を用いた.実験では,まず上下のプラテンをねじで固定した後,エポキシ系接着剤をプラテン及び試験片の上下に塗布する.次に試験片を挿入し,圧縮荷重が数10 kg程度になるようにシリンダを動かし,1日程度接着剤が硬化するまで放置する.強度破壊点以降も安定に制御するために,次式で表される応力帰還制御1)を用いた.

ε−α・σ/E=C・t   (1)

ただし,ε,σ,E,C,tはそれぞれ歪,応力,初期ヤング率,載荷速度,時間である.載荷速度Cは10-6 s-1とした.αは応力帰還量を決める定数で,稲田花崗岩では0.45,田下凝灰岩では0.1,その他の岩石では0.3とした.

試料岩石として,稲田花崗岩,三城目安山岩,田下凝灰岩,白浜砂岩,平島砂岩及び諌早砂岩の6種類の岩石を用いた.直径約25mm,高さ約50mmの円柱形の試験片に整形後,温度22±2℃,湿度60±15%の実験室内にて2週間以上放置し,自然乾燥させてから実験に用いた.

(2)応力−歪曲線

通常の一軸引張試験をまずおこなった.その結果は,すでに発表した結果3)とほぼ同じであるので割愛する.

図1に示すように,一軸引張試験中に適宜除荷・載荷した.除荷曲線の傾きの逆数を除荷コンプライアンス(=歪の変化量/応力の変化量)とし,ε1(弾性歪)と,ε2(非弾性歪)に分離した.なお,ヒステリシスのあるときには,ヒステリシススループの中心軸の傾きから除荷コンプライアンスを求めた.

図2に,各岩石の実験結果を実線で示す.図には,非弾性歪と応力の関係も破線で示した. (a)の稲田花崗岩と(b)の三城目安山岩では最初,除荷曲線は応力−歪曲線と重なっているが,強度の50%程度から両者はずれ始める.応力の増加に従いそのずれは大きくなっていき,強度破壊点を過ぎるとヒステリシスが顕著となる.強度破壊点以前の非弾性歪はわずかであるが,強度破壊点以降は割合が増加していき,残留強度領域では歪のほとんどが非弾性歪である.

(c)の田下凝灰岩は,かなり延性的な挙動を示した.除荷曲線は載荷直後より応力−歪曲線とずれている.その傾向は,応力の増加に従い増していき,強度破壊点以降で,応力が強度の50%以下になるとヒステリシスが顕著となる.非弾性歪は,強度破壊点において既に歪の50%を占めており,強度破壊点以降ではさらにその割合を増す.

(d)〜(f)は3種類の砂岩である.諌早砂岩は,稲田花崗岩や三城目安山岩と似ている.平島砂岩は,田下凝灰岩と似ており,稲田花崗岩,三城目安山岩及び諌早砂岩に比べて強度破壊点以前での非弾性歪が比較的大きい.白浜砂岩の強度破壊点以前では,今回用いた試料岩石の中で最も延性的である.他の岩石の場合には,強度破壊点での歪は4〜7×10-4であるのに対して,白浜砂岩は2×10-3とかなり大きな歪となる.この歪はほとんどが非弾性歪である.しかし,強度破壊点以降では強度の30%程度に低下するまで,歪はほとんど変化しない.このように同じ砂岩でも引張時の変形特性はかなり異なる.

(3)除荷コンプライアンス

除荷を開始した応力と,除荷曲線の傾きから求めた除荷コンプライアンスの逆数λ-1との関係を図3(a),(b)に示す.全体的な傾向としては,初期のλ-1が最も大きく,載荷に従い若干上に凸の曲線を描きながら,λ-1は徐々に低下していき,強度破壊点では初期の60〜80%に低下する.その後,強度破壊点以降では応力の低下に従い,若干上に凸の曲線を描きながらλ-1は減少している.

(a)の稲田花崗岩では,最初λ-1は34GPaであったものが,載荷に従い徐々に低下していき,強度の70%程度からλ-1の低下速度が増し,強度破壊点では25GPaと初期の75%まで低下している.強度破壊点以降では応力の低下に従い,ほぼ直線的に低下していき,1.MGPa辺りで若干傾きがきつくなる.三城目安山岩のλ-1は最初,稲田花崗岩の半分の18GPaであったものが,強度破壊点では14GPa程度となり,強度破壊点以降応力の低下に従いλ-1も同様に低下している.田下凝灰岩は初期のλ-1は7.5GPaとかなり小さく,載荷に従い徐々に低下する.

(b)の砂岩でも,(a)に示した場合と定性的には同じである.ただし,平島砂岩や白浜砂岩では,強度破壊点でのλ-1は初期の60%程度と他の岩石に比べて小さくなっている.

(4)圧縮試験結果との比較

大久保ら2)は圧縮試験において除荷・載荷試験を行った.その結果,強度破壊点以前ではλ-1が増加する現象が多く見られ,特に三城目安山岩では初期に比べて2倍程度まで増加した.これは載荷に伴い,亀裂あるいは空隙が閉じるためだと考えられる.強度破壊点以前でもダイラタンシーの発生などが指摘されているように亀裂の進展が生じ,λ-1が低下するが,亀裂などの閉塞が卓越していると考えられる.他方,今回実施した引張試験では,図3に示したようにλ-1の増加は現れず,亀裂の進展によるλ-1の低下が観測された.

圧縮試験の強度破壊点以降では破壊の進行に伴い,λ-1は減少し,定性的には図3で示した引張試験と近い関係が得られた.圧縮試験の強度破壊点以降では応力の低下に伴う閉塞していた亀裂や空隙の開口によるλ-1の低下だけでなく,亀裂の進展に伴うλ-1の低下が現れているものと考えられる.