掘削ずりの粒度分布と岩盤の亀裂間隔
1.はじめに

岩盤工学の分野において、岩盤の割れ目(節理や断層)の間隔は安定性などを評価する上で非常に重要であり、多くの研究がなされている。原位置においては、通常ボーリングコアからRQDを求めたり、スキャンライン法により割れ目間隔を測定したりしている場合が多い。しかし、割れ目には大小様々な規模のものがあり、原位置の測定では限られた範囲しか測定できない。そのため、計測スケールから工学的に重要なスケールへの変換に関する研究も見られる(山本,1995)。また、亀裂の方向によってはボーリングやスキャンラインの方向によって観測できる亀裂が限られてしまうことも指摘されている。

さて福井ら(1998)では、全断面トンネル掘進機(TBM)による掘削で得られたずりを中心として、粒度・形状特性を報告した。その結果、TBM、ブームヘッダ、発破などの掘削方法の違いによって、掘削ずりの平均粒径はかなり大きく変化するが、その分布特性はほぼ同じであった。すなわち、質量の累積分布が20 %から 90 % となるまで、粒径は2桁程度変化するような広範囲な分布をしていた。掘削方法によって明らかな分布の違いがなかったため、この現象は一般的に成り立つのではないかと考え、陳ら(1999)では一軸圧縮試験を行い、その岩片の粒度分布を調べた。その結果、掘削によって得られた広範囲の分布と同じような粒度分布となった。また、粉体工学の分野でも岩盤の粉砕を行った場合、粉塵や分級機能をもたない粉砕機からの粉製物の粒度分布は、同様の結果となることも従来の研究(粉体工学会,1986)で指摘されている。以上の事項より、岩盤を掘削ないし粉砕した場合には、平均粒径は破砕度合いによって変化するが、一般的に似たような広範囲の粒度分布になるのではないかと考えることができる。

応力の作用により亀裂が形成され、3次元的に閉じた形となってはじめて掘削ずりないし岩片が形成されることになる。そこで、掘削ずりの粒度分布と岩石に形成される亀裂間隔の間には、何らかの関係が存在しているものと考えることができる。本研究では、この点を述べることとするが、似たような発想は地震関連の研究でみられる。地震ではいくつかの統計則が成立していることが指摘されている。たとえば、Gutenberg-Richter則では、あるマグニチュード以上の地震の数の対数は、そのマグニチュードが大きくなれば傾きが -1で減少するというものである。竹内・水谷(1968)では、このGutenberg-Richter則と脆性材料の破壊の関係について論じており、結論として地震、岩盤粉砕、隕石などの大きさはGilvarry(1961)の理論で統一的に説明できるとしている。この他にも関連する研究がみられるが、地震関係ではもっぱら地震の大きさ、すなわち断層長さが問題視されるため、岩盤工学上重要である亀裂間隔に関する研究はほとんどみられない。

本研究では、著者らが過去に行った実際の掘削ずりや、室内試験における岩片の粒度分布に関してまず述べる。次に、従来の研究を交えながら、粒度分布と岩盤の亀裂間隔に関する考察を行うこととする。