掘削ずりの粒度分布と岩盤の亀裂間隔
5. 従来の研究とまとめ

本研究では、岩盤を掘削・粉砕した場合の粒度分布が(2)式でほぼ表現できることを紹介し、(2)式が成立するには(7)式のような亀裂間隔の分布となることを述べた。

さて、(2)式(n=1のRosin-Rammler分布)の物理的意味の説明を試みたのは、Gilvarry(1961)である。Gilvarry(1961)では、潜在的なきず(flaw)が応力によって活性化されることによって破壊が進行するとし、edge flaw(破壊面の交線のきず)が独立にランダムに活性化し発達するとし、(2)式のようになるとしている。また、粒径に関する確率密度として(7)式も同論文に記載されているが、(7)式の工学的意味に関する考察は行っていない。竹内・水谷(1968)では地震関係で有名なGutenberg-Richter則と地震断層の長さlに関する分布として以下の式を誘導している。

 ・・・・(8) あるいは  ・・・・(9)

ただしN(l)は地震断層の長さがl以上の数である。一方、(7)式のLの意味を地震断層の長さlとし、n=1のRosin-Rammler分布の粒径が小さい場合の近似式であるGaudin-Schumann分布から地震断層の長さの分布を求め、上式と同じとなるとしている。また、隕石や小惑星の質量分布も引用し、(9)式と同じであるとし地震だけでなく岩盤破砕のRosin-Rammler分布から隕石まで広く成立しているとしている。島崎・長浜(1996)でも同様の論理構成で考察を行っている。Turcotte (1986)、Nagahama (1993)、島崎・長浜(1996)では(8)式のようなべき乗則をフラクタルの関係で検討している。Turcotte (1986)では過去の多くの研究から(9)式のべき数を求めており、その値は-1.44〜 -3.54の間である。またパーコレーション的な考えに基づき、-1.97であるとしている。福井ら(1998)のTBMのデータ(5 g以上の掘削ずりを対象)を再整理した結果、-3.5程度の値となった。これは2章でも述べたように大きな掘削ずりはカッタ間隔で規制されるため、10cm以上のものは出現しにくいことにより、傾きの絶対値が大きくなったものと考え、Turcotte(1986)と比較することは難しいものと思う。このように地震関連のフラクタル的な考察では地震の大きさが重要となるため、(9)式のように大きいものからの累積値を対象とする。他方、粉体工学で主流のRosin-Rammler分布では粉砕性が重要なため、小さいものからの累積値を考えるので、分布における対象としている範囲が異なっているので注意が必要であろう。

TBMの掘削ずりが他の掘削方法のものに比べて、明らかに形状が異なることからその特性を把握しようと考え、掘削ずりに関する研究を開始した。形状に関してはある程度の差が現れたものの、それと関係していると思われた粒度分布が意外と掘削方法によって変化しない点と、粒径にして2桁以上というあまりにも広い分布をしている点がわかった。このように粒径が広く分布するため、切削のように数mm程度の切り込み深さで岩盤を破壊させると、数十μmの粒径の岩片が容易に作製されることになる。金属切削ではこのようなことはなく、ほぼ同じような切りくずとなる。この違いはまず不均質性に起因しているものと考えた。不均質性だけが卓越した場合には、ランダムに亀裂が発生することとなり、(6)式のような粒度分布となる。しかし、実際は(6)式より広い(2)式のような分布をしており、(7)式のような亀裂間隔となっている。これは亀裂があればその近傍は亀裂が発生しやすいことを表しており、亀裂が発生する近傍では応力状態が高くなっているので、亀裂が発生したと考えることができる。山本 (1995)でも実際の亀裂間隔を測定しランダムに亀裂が発生した分布に比べて、亀裂が密集しているとしている。しかし、亀裂があった場合、近傍の応力状態が高くなっても、亀裂が弱面となりそれが移動することによって近傍には亀裂が発生しにくいとも考えることもできる。(7)式の物理的意味については非常にむずかしく、現状では何ともいえないが、何らかの意味で岩盤の破壊特性を表す式と考えており、今後も検討していきたい。