TBMの掘削ずりに関する研究
1.はじめに

全断面トンネル掘進機(TBM)によって得られる掘削ずりは、薄板状の形状のものが多く、他の掘削方法によるものと明らかにその形状が異なる。また経験的に岩盤特性によって、掘削ずりの形状が変化することが知られている。すなわち、硬質な岩盤ほど薄板状となりやすい傾向があり、掘削ずりを観察することによって切羽の岩盤特性を判断することができると言われている。このように掘削ずりは様々な情報を含んでいるものと考えられるが、定量的な評価はなされていない。また、切羽から掘削ずりを運搬する方法・条件の最適性、掘削ずりの再利用・処分方法、粉塵対策などの坑内環境を考えた場合には、掘削ずりの形状や粒度分布が重要である。

そこで、本研究ではTBMの掘削ずりに関して、形状や粒度分布に関して検討した結果について述べる。


2. 掘削ずりの諸元

本研究で使用したTBMの掘削ずりは、滝里発電所導水路トンネル(北海道芦別市)のうち、白亜紀の蝦夷累層砂岩(圧縮強度45〜100 MPa)を掘削した際のものである。ディスクカッタで掘削されたずりは、スクレーパによって切羽から回収され、ベルトコンベアで100 m後方に運搬し、トロッコでずり捨てピットまで搬出される。掘削ずりは、ずり捨てピットから1回あたり約20kgを無作為に回収した。掘削ずりの写真を図1に示す。TBMの掘削でよく見られるような薄板状のものが比較的多いが、粒径の小さなものも多いことがわかる。距離程による掘削ずりの変化を調べるために、時期をずらして6回の回収を行って調査試料とし、採取した距離程で試料名を呼ぶことにする。これらはトンネルの中では比較的強固な岩盤であった。掘削ずりの回収を始めてから軟弱な岩盤に遭遇しなかったため、掘削当初にずり捨て場に処分した軟弱部と思われる掘削ずりを3地点から回収して試料に加え、それぞれ軟弱A,B,Cと呼ぶ。回収した掘削ずりは、実験室で自然乾燥させた後、まず質量が5g以上の掘削ずりに関してそれぞれの質量と、長径、短径、厚さを測定した(図2参照)。次に孔眼寸法0.238〜10.16cmの10種類のふるいにより、ふるい分けを行った。


3.掘削ずりの形状

まず、TBMの掘削ずりの形状に関して述べることにする。図3に質量5 g以上の掘削ずりを対象として、測定した長径と厚さの関係を両対数グラフ上に示す。TBMの掘削ずりの長径は2 〜 10 cm、厚さは0.5 〜 5 cm程度の間に分布している。軟弱Bと距離程2115 mを比べると、長径はほぼ同じような分布をしているが、軟弱Bに比べて距離程2115 mの方が厚さは小さいことがわかる。TBMでディスクカッタは5 〜 8 cm程度の間隔で配置されており、カッタ間隔より大きい掘削ずりは形成されにくいため、掘削ずりの最大値はカッタ間隔程度となっているものと考えられる。

図4に短径/長径と厚さ/長径の関係を示す。図4では全体的にばらついているが、軟弱Bに比べ距離程2115 mの方が厚さ/長径は小さい値に分布していることがわかる。また厚さ/長径の最小値は、距離程2115 mで0.1、軟弱Bで0.2である。硬質な岩盤ほど、TBMの掘削ずりは薄板状の形状が現れることが経験的に知られている。よって、距離程2115 mの掘削ずりの方が軟弱Bの掘削ずりより硬質であることが形状に現れている。

比較のために、さく岩機用のビットで貫入試験を行った際に得られた花崗岩の掘削ずり(質量0.1 g以上)の測定結果を図3に示した。図3では貫入試験で得られた掘削ずりはTBMの掘削ずりの1/10程度の大きさである。また、図4で厚さ/長径は、0.1 〜 0.3の間であることがわかる。貫入試験のビットは先端にボタンチップを埋め込んだものである。チップ間隔の最大は約2cmであるので、掘削ずりの長径はそれ以下となったものと考えられる。また図4で短径/長径は0.4〜1の間にほぼ均一に分布している。貫入試験では静的に載荷・除荷を行った後、掘削ずりを回収し、再度載荷・除荷を行ったため、掘削ずりは二次破砕されることなく回収されているものと思われる。掘削ずりはすべて薄板状の形状をしており、ほぼインタクトな状態の岩石を用いているため、掘削ずりはside breakでの破砕による理想的な形状となっているものと考えられる。

TBMの掘削ずりも理想的に破砕された場合には、図5に示すようにボタンチップと同様に長径の最大値はカッタ間隔に近く、厚さは長径の約0.2倍、短径は厚さと長径の間でランダムに分布するのではないかと考えられる。しかし実際の掘削ずりは、亀裂を含んだ岩盤を掘削したものであり、二次破砕も生じていることが考えられる。亀裂を含んだ岩盤や軟弱な岩盤の場合には、理想的なside breakは生じにくく、厚さが大きくなることが考えられる。この場合、長径はカッタ間隔によって上限があるため、長径の分布はさほど変化はなく、理想的なside breakによるものに比べて厚さが大きくなるものと考えられる。薄板状の掘削ずりに二次破砕が起きた場合には、厚さが小さくなるように割れるより、長径が小さくなるように割れやすいことが考えられる。よって二次破砕では、厚さの変化はほとんどなく、長径や短径が小さくなり、厚さ/長径は大きくなる。以上をまとめると、図5に長径と厚さの概念図を示すように、理想的なside breakによる掘削ずりが、岩盤の軟弱さや二次破砕により、図で左上にシフトするような分布になったものと考えられる。二次破砕に関しては評価が難しいが、岩盤の硬軟の情報が厚さ/長径の値に見られることが考えられる。今回得られた掘削ずりの厚さ/長径の平均値を表1に示す。掘削ずりの厚さ/長径の平均値により大きく2つのグループにわけ、平均値の小さいものを硬質グループ、大きいものを軟質グループとする。

累積質量分布をグループごとに図6に示す。図6(a)の硬質グループでは質量5g以上の掘削ずりは回収した掘削ずりの50%程度であり、累積確率は対数表示した質量とほぼ直線関係が成立しており、質量が1桁増加するごとに30%の累積確率の増加が見られる。(b)の軟質グループも(a)の硬質グループと似た特性を示しているが、全体的に右にシフトしたような傾向が見られる。すなわち、個々の掘削ずりの質量が大きくなっていることが現れており、これは岩盤が軟質であるために、比較的大きな掘削ずりが得られたことによるものと考えられる。


4.掘削ずりの粒度分布

次にふるいわけによって求めた、滝里発電所導水路トンネルの掘削ずりの粒度分布の一例を図7に示す。横軸はふるいの孔眼寸法の対数で、縦軸は質量の累積確率である。図では累積確率が0.4以下でわずかに下に凸の傾向が見られるが、傾向的には片対数グラフ上でほぼ直線関係となっている。

つぎに比較のため、いくつかの掘削方法で得られた粒度分布も図に示した。ブームヘッダの掘削ずりは、風化花崗岩のトンネルを掘削したものである。発破の掘削ずりはMichaudら(1996)による花崗岩の粒度分布より引用した。歯車型ディスクカッタの掘削ずりは藤井(1956)による安山岩の結果より引用した。ただし、藤井の室内試験結果では隣接溝によるside breakのずりは含んでいないため、最も粒度が小さくなったものと考えられる。図では、発破、TBM、ブームヘッダ、室内試験の順に粒子径の累積確率曲線はほぼ平行で、1桁ずつ小さくなっているのがわかる。図6に示したようにTBMの掘削ずりは横軸を質量にした場合、質量の累積分布は1桁程度ばらついているが、図7のように横軸をふるいの孔眼寸法にした場合には、1/3桁程度のばらつきに収まる。

他掘削方法のデータについても、岩石の種類や掘削条件によってある程度の変化は現れるものと思われるが、孔眼寸法を対数表示した場合に大きくは変化しないと考えられる。このように掘削方法によって粒子径は明らかに変化しているが、粒度分布は平行移動したような形であり、粒度による累積分布はほぼ2桁程度の間に分布をしている。

さて掘削方法による掘削効率を表す指標として、西松(1972)は掘削能係数(=一軸圧縮強度/掘削体積比エネルギー)を提案し、平均的な掘削能係数は発破、TBM、ブームヘッダでそれぞれ、10,3,1であるとしている。同じ岩石を破砕する場合の掘削体積比エネルギーはその逆数となり、発破、TBM、ブームヘッダの比は、0.1:0.33:1となる。

粉体工学の分野では粒径を小さくするのに、必要なエネルギーEに関する研究が古くからなされており、経験的に次の3つの式が提案されている(井伊谷,1965;山口・西松,1991)。
Rittingerの式 E=C1・(x−1−x−1
Kickの式    E=C2・log(x/x
Bondの式    E=C3・(x0.5−x0.5
ただし、Cは定数で、x,xはそれぞれ破砕前、破砕後の粒子径を表す。

図7によれば発破、TBM、ブームヘッダの掘削ずりの粒子径の比は100:10:1である。トンネル掘削の場合、x1は充分大きいと考えられ、Rittingerの式では発破、TBM、ブームヘッダの掘削体積比エネルギーは0.01:0.1:1となる。Bondの式では、0.1:0.32:1となり、掘削体積比エネルギーの比率とほぼ一致する。Kickの式ではx1を無限大とすることはできないが、掘削方法によるそれぞれのエネルギーの差は求まり、発破とTBM、TBMとブームヘッダのエネルギーの差は等しいことになり、実際の掘削体積比エネルギーと一致していない。以上のように、単純に掘削ずりの粒子径だけに着目して、3つの式を当てはめた場合には、Bondの式が最もよく一致することがわかった。3章で述べた貫入試験のずりは、ブームヘッダとほぼ同じような粒度分布である。貫入試験の掘削能係数は1.3程度(大久保ら,1997)であるので、ブームヘッダの掘削ずりに近く、貫入試験の場合も掘削体積比エネルギーはBondの式による粒度分布によって説明することができる。

Bondの式において、ボールミルの破砕実験より比例定数が求まっており、無限大の粒子から0.1 mmの粒子に破砕するエネルギーは花崗岩で1 short tonあたり16.56 kWhである。この関係をTBMに対して求めると掘削体積比エネルギーは約10 MPaとなる。花崗岩の一軸圧縮強度を150〜 200 MPa、掘削能係数を3とすると、掘削体積比エネルギーは約50〜70 MPaとなる。桁は一致しているが、かなり大きな差が見られ、定量的な検討は今後の課題としたい。

粉体工学の分野では、粒度分布としてはRosin-Rammler分布(Weibull分布)がよく用いられる(粉体工学会,1986)。
R(Dp)=exp(-(Dp/De))   (1)
Dp:孔眼寸法 De:粒度特性数  n:均等数    R(Dp):Dp以上の掘削ずりの質量の累積確率

TBMのふるいわけによって得られた粒度分布をRosin-Rammler分布確率上に描いたのが図8である。1cm以下ではほぼ直線関係が見られ、その直線からnを求めてみると、0.8となり1より小さいことがわかる。n<1の場合には粒子径が大きくなるに従い、粒子の質量に対する確率密度は単調減少の分布となる(粉体工学会,1986)。また、「nの値が小さいほど粒径分布範囲が広く、粉塵や分級機能をもたない粉砕機からの粉製物ではn < 1となることが多い」(粉体工学会,1986)と記述されており、粉砕機と似た分布をしていることもわかる。

図8では孔眼寸法が1cm以上で直線の傾きが大きくなっており、ほぼ4つの分布が重なるような傾向が見られる。前章で述べたように、ディスクカッタの間隔以上のずりは発生しにくいため、孔眼寸法が10cmに近くなると、累積確率は1となるように分布が漸近したことによるものと考えられる。


5.おわりに

本研究ではTBMの掘削ずりの形状や粒度分布に検討した。岩盤掘削による掘削ずりに関する研究はあまりなく、本研究では主に粉体工学でなされている扱いを参考にしながら行った。掘削ずりは、掘削方法や条件の最適性を考えた上で非常に重要な手がかりとなるものと考えられる。今後の課題は数多くあるが、まずはBondの式と掘削体積比エネルギーの関係から調べていきたい。


参考文献

Michaud,P.R. and Blanchet,J.Y.(1996):proceedings of the 5th international symposium on rock fragmentation by blasting,p.389-396,Montreal

藤井清光(1956):石油技術協会誌,21[No.6],pp.209-218

西松裕一(1972):日本鉱業会秋期大会分科研究会[L-5],p.1-4

井伊谷鋼一(1965)編:粉体工学ハンドブック,p.333-339,朝倉書店

山口梅太郎・西松裕一(1991):岩石力学入門(第3版),p.103-108,東京大学出版会

大久保誠介他:資源・素材学会誌,113[No.9],pp.663-668(1997)

粉体工学会編(1986):粉体工学便覧,p.1-11,日刊工業新聞社