硬岩用自由断面掘削機の掘削体積比エネルギーと岩盤物性
2.トンネルおよび掘削機

高取山(北行)トンネルの位置を図-1に示す.本トンネルは,高速道路用2車線トンネルで,兵庫県の六甲山地西南縁の神戸市須磨区に位置し,須磨断層(走向NE,傾斜70°NW),高取山断層(走向ENE,傾斜S)および横尾山断層(走向NNE〜NE,傾斜35〜50°SE)に囲まれる(活断層研究会,1991;藤田ら,1983).地表踏査の結果では,これら3つの断層に平行な亀裂が卓越していた.本トンネル延長の内約510mの区間は硬岩区間で,地質は中生代白亜紀の六甲花崗岩であり,一部硬質のヒン岩脈が介在している.六甲花崗岩は中〜粗粒の黒雲母花崗岩で,淡桃色のカリ長石を特徴的に含み,灰〜淡桃灰色の塊状岩を呈する.この区間での岩盤分類(電力中央研究所方式)はCM〜CLが主で,一部,B,Dが存在する(宮本ら,1996).

      

図-1 高取山トンネルの位置と地質              表-1 硬岩自由断面掘削機 MM130R 主な仕様

掘削機の仕様を表-1に,写真と構造の概要をそれぞれ写真-1,図-2に示す.この掘削機MM130Rは,ロビンス社の矩形断面用硬岩掘削機 MM120およびMM130(Willoughby,1993)を基に,一軸圧縮強度 50〜250 MPa の硬岩の掘削用に開発された.MM120およびMM130のカッタホイールは,水平移動のみ可能であり,掘削断面はカッタホイール径と等しい高さの矩形である.これに対して,新たに開発したMM130Rのカッタホイールは鉛直方向にも移動できるため,自由な断面の掘削が可能である.以下で,その概略と掘削原理に限定して述べるが,詳細については文献(領家ら,1996)を参照されたい.

   

写真-1 硬岩自由断面掘削機 MM130R                      

図-2に示す外径 4100 mm のカッタホイールは 15 rpm で回転する.カッタホイールの外縁に沿って,直径 432 mm(17 inches)のディスクカッタが8個取り付けられており,掘削は主にこのディスクカッタによって行われる.カッタホイールには,さらに,トンネル側壁部掘削用のゲージカッタ(ボタンチップの埋め込まれたローラカッタ)8個と,ずり掻き込み用のパドル8個が取り付けられている.

掘削に当たっては,まず,肩部のグリッパー4個と,前後のクローラの間にある地盤サポート2個で本体後部を固定した上で,カッタホイールを回転させる.次に,ディスクカッタを切羽下半の中央部に当て,所定の切り込み深さ(10〜25 mm)だけ推力用シリンダにより本体前部を前進させる.推力シリンダの変位を固定した後,カッタホイールを移動させて岩盤を掘削する.なお,カッタホイールはコンピュータを使用した変位制御により,プログラムされた軌跡に沿って移動する.

図-3に,高取山トンネルにおけるカッタホイールの移動軌跡の模式図を示す.図中の楕円は各掘削位置でカッタホイール外縁を掘削断面に投影したものである.掘削断面は幅 11.6 m,高さ 7.4 m で,断面積は約 70 m2 である.位置1から出発し,カッタホイールが切羽を1周し切羽中央4に至ると,移動方向を反転させて4→5→6→1の順に掘削を行う.掘削は下半のフロア部と上半のアーチ部に分けることができる.フロア部は,ピッチ(鉛直方向)ブームを固定して,スウィング(水平方向)ブームによりカッタホイールを水平方向に移動して岩盤を掘削する.他方,アーチ部の掘削ではピッチブームとスウィングブームとも動作させ,円弧状にカッタホイールを移動して岩盤を掘削する.

            図-3 高取山トンネルにおけるカッタホイールの軌跡

         図-4 掘削機構の概念図

写真-2に切羽の写真を示す.写真で白く線上に見えるものが,ディスクカッタによる掘削溝である.カッタホイールは,通常は,水平方向に200 mm/s 程度で移動し,図に示すように水平方向に約100 mm 間隔の掘削溝ができる.図-4に示すように,切羽上のある水平断面において位置 Aに掘削溝が形成されたとする.0.5 s 後に次のディスクカッタがBの位置を通過する.その際,Bよりサイドブレーク(side break)が生じてAB間の岩片が取り除かれる.TBMでも同じであるが,ディスクカッタが通過するごとにサイドブレークにより掘削間が連結されること(single-path cutting)は,掘削能率の観点から望ましい.今回の掘削機ではこのような掘削溝の連結がほとんどの場合観察され,何度か同一箇所をディスクカッタが通過し溝が深くなった後やっと掘削溝間が連結される掘削様式(multi-path cutting)はほとんど観察されなかった.なお,TBMの掘削溝間隔はディスクカッタの配置で決まってしまうが,本掘削機の場合には岩盤に応じてカッタホイールの移動速度を変化させることにより掘削溝間隔を調整することができる.

         写真-2 MM130Rで掘削した切羽の様子