硬岩用自由断面掘削機の掘削体積比エネルギーと岩盤物性
4.岩盤調査結果との比較

岩盤調査として,約 1 m 離れた切羽 A,B で区間弾性波速度測定とシュミットハンマー打撃試験を,切羽 A より約 80 m 離れた切羽 C の切羽でシュミットハンマー打撃試験を実施した.区間弾性波速度の測定では,床面より約 1 m 上方の水平線上の切羽に 1 m 間隔で計11点の測点を設け,1 m および 2 m 区間毎の弾性波速度を測定した.シュミットハンマー打撃試験は各測点近傍で実施した.シュミットハンマー打撃値Sと岩盤強度σC (Pa)との関係は必ずしも確立されていないが,ここでは次式(松本ら,1996)を仮定してシュミットハンマー打撃値から岩盤強度を推定した.

   (1)

図-7に原位置試験結果とフロア部での掘削体積比エネルギーの分布を示す.区間弾性波速度は測定した2点の中点にプロットした.

切羽 Aから見ていくと,1 m 区間と 2 m 区間の弾性波速度とはほぼ同じ傾向が見られ,切羽中央で約 4 km/s であるが,中央から右に 2 m 以上離れると,急激に低下している.左側でも同様の傾向はみられるものの,低下の度合いは少ない.シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度は,ばらつきは大きいものの,中央で約 70 MPa と比較的大きく,両側で低下しており,区間弾性波速度と傾向が一致している.掘削体積比エネルギーも中央で最大値 25 MPa を取り,両側では低下する傾向があり,岩盤調査と比較的よく一致している.しかし,中央から右に 4 m 以上離れると掘削体積比エネルギーが急激に上昇している点は岩盤調査と異なる.

図-8に切羽 A の切羽の岩盤観察結果を示す.中央では亀裂が少なく,全体的に堅硬である.右側 3.5 m 付近に幅 10 〜 20 cm の風化帯を伴う亀裂が観察され,その走向はトンネル軸に対して反時計回りに約 60 度,傾斜はほぼ垂直である.また亀裂の右側は硬質な岩盤であった.区間弾性波速度の最も右側の2点は,この亀裂をはさむ形で計測されたため小さい値となったと考えられる.シュミットハンマー試験も,ちょうどこの亀裂のすぐ右側の測点で測定されたため,かなり小さな値となったものと考えられる.また左上方にはヒン岩の貫入が観察され,貫入岩脈に沿って細かい亀裂を伴って軟弱化した部分が広がっており,左側の岩盤も中央よりかなり軟らかいと考えられる.これらのことから,切羽 Aでは掘削体積比エネルギーの変化は地山の硬軟の特性を良く反映していることがわかる.

                            図-8 切羽Aの観察結果

次に切羽 Bでは,区間弾性波速度,シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度および掘削体積比エネルギーは中央より左側で若干大きくなるが,両側壁近くで小さくなる傾向が読みとられ,3者は定性的に一致している.中央部での弾性波速度は 4 km/s と比較的切羽 Aと類似する結果であり,掘削体積比エネルギーも切羽 Aと比較的近い値である.他方,シュミットハンマー打撃値は切羽 Aに比べてかなり小さくなっている.

切羽 Cでは,シュミットハンマー打撃値は中央部の2点が他よりかなり大きくなっている.それを除けば,右側 3 m 付近で 50 MPa と大きく,中央部では 40 MPa 程度であり,両側壁で軟弱な傾向が現れている.他方,掘削体積比エネルギーは右側 2 〜 4 m で最大値約 20 MPa となり,それより右では急激に低下する傾向が見られる.最大値を取ったところより左では若干低下傾向が見られ,左側壁近くでは急激に低下している.このように切羽Cではシュミットハンマー打撃試験と掘削体積比エネルギーは比較的良く一致している.

以上の3つの切羽での結果から掘削体積比エネルギーは,岩盤の硬軟の特性を反映していることがわかった.