硬岩用自由断面掘削機の掘削体積比エネルギーと岩盤物性
5.掘削体積比エネルギーの分布

掘削体積比エネルギーのトンネル進行方向の分布をコンター図として表した(図-9).図は,トンネル軸方向に 40 m の区間を示し,フロア部とアーチ部とに分けてそれぞれ表示した.ただし切羽面は,図-2(b)に示したように,鉛直方向に曲線的な形状をしているので,カッタホイールの最先端の位置を縦軸とした.

まず,図-9(a)のフロア部から見ていくことにする.この区間では,掘削体積比エネルギーは 5 〜 50 MPa の間に分布しており,20〜35 m 付近の掘削体積比エネルギーが最も大きく,0〜5 m,15 m 付近で最も小さくなっている.全体的に,トンネル軸に対して反時計回りに 45〜60 度程度の方向の等高線が現れる傾向が見受けられる.たとえば,5〜10 m の区間の右側壁近くでは掘削体積比エネルギーが 15 MPa 以上となっているが,左にいくにつれて前方に移り左側壁近くでは 12〜17 m 付近に移動している.この帯状の範囲の中でも 20〜25 MPa の掘削体積比エネルギーの大きな部分が帯状となって同じような角度で現れている.また,右側壁部で 17 m 近傍や 30 m 近傍では 10 MPa 以下の掘削体積比エネルギーが小さな帯状の部分が同様な角度で出現している.これは,掘削中の切羽観察で,風化を伴う亀裂がトンネルの進行に従い切羽の左側に移動していったことと一致している.

このトンネル軸に対して反時計回りに 45 〜 60 度の方向は,図-8に示した亀裂と同じ方向であり,また,図-1に示した須磨断層にほぼ平行に存在する岩盤の亀裂の卓越方向と一致している.高取山トンネル周辺の岩盤は風化作用を受けており,亀裂周辺に風化が生じやすいことを考えると,今回の結果を説明することができよう.また図でトンネル軸に対して時計回りに 10 〜 20 度の方向にも掘削体積比エネルギーが減少しているように見える.例えば,5〜15 m の 20〜25 MPa の領域は 10 m の位置で切断されているように見える.20 〜 30 m の中央もまわりに比べて掘削体積比エネルギーが減少しているように見える.このようにほぼ直交する 2方向に風化などによる劣化が進行することにより,22 m 付近の左側にあるように等高線が楕円状に閉じるような現象がいくつか見られる.花崗岩が風化などによって劣化した場合には,硬質な部分が塊状的になることが知られている。高取山トンネルでも掘削中、硬質な岩盤が切羽に現れた場合には、徐々に切羽に占める割合が最初は徐々に増加しその後減少し、最終的には消滅することが観察され、掘削体積比エネルギーのコンターが楕円状になる現象と一致している。

次にアーチ部について見ると,フロア部と同じ角度で等高線が傾いており,フロア部と近い傾向が見られる.例えばフロア部で比較的強固であった 5〜15 m,20〜30 m で,アーチ部でも掘削体積比エネルギーが大きくなっている.逆に掘削体積比エネルギーが小さい領域は,0〜5 m の左側,10 m の右側から 25 m の右側であり,フロア部とアーチ部とで比較的似た結果となっている.またアーチ部でも,須磨断層に平行な方向や直交する方向に風化が進行しているように見え,そのため等高線の閉合が生じている.アーチ部とフロア部との違いも見られ,25〜40 m のアーチ部の中央で掘削体積比エネルギーが小さい傾向にあるが,フロア部では若干大きくなっている.

フロア部とアーチ部の平均高さの差は 3.1 m であり,水平方向あるいはトンネル軸方向に 3.1 m 変化すれば,かなり掘削体積比エネルギーが変化しているのに比べて,垂直方向の差は少ない.図-8に示した須磨断層に平行な亀裂の傾斜はほぼ鉛直方向であったことから,高角度の亀裂が卓越していることが推定され,この原因の1つと考えられる.