硬岩用自由断面掘削機の掘削体積比エネルギーと岩盤物性
6.TBMとの関連性

掘削体積比エネルギーは,掘削の能率を表す指標としてしばしば使用される.しかしながら,岩盤の強度が異なる場合,掘削体積比エネルギーをそのまま使用して掘削能率を比較することはできない.そこで,掘削体積比エネルギーESを一軸圧縮強度強度σC で割って規格化した値ESCや,その逆数である掘削能係数が指標として用いられる(西松,1972).

図-7(a)に示した切羽Aの中央では,掘削体積比エネルギーが 25 MPa であるのに対して,シュミットハンマー打撃値から推定した岩盤強度は 75 MPa である.したがって,ESC は 1/3 となる.また,今回得られた掘削体積比エネルギーの最大値は 50 MPa であり,文献(日本建設機械化協会,1996)によれば岩石試験による一軸圧縮強度の最大値は 150 MPaであり,その比は 1/3 となる.したがって,本掘削機における規格化した掘削体積比エネルギーESC は 1/3 程度であるといえる.西松(1972)の文献に示されているデータより計算した代表的な掘削方法の ESC を表-2に示す.表からわかるように,TBMのESC は 0.2 〜 0.5 であり,本掘削機械の値はこの範囲の中ほどに位置する.この観点からも,本掘削機のエネルギー効率はTBMに劣らないといえる.

   表-2 掘削方法におけるESC

福井,大久保(1997)は,TBMのカッタヘッドのトルクと,切り込み深さより,次式を用いて岩盤強度を推定した.

(岩盤強度)∝(トルク)/(切り込み深さ)1.5 (2)

例えば,高取山トンネルから数 km 離れた,同じ六甲花崗岩中の舞子トンネルで使用されたTBM掘削データを分析した結果(福井・大久保,1997)をみると,式(2)から求めた岩盤強度と,シュミットハンマーから換算した岩盤強度は比較的良く一致している.

舞子トンネルで式(2)から求めた岩盤強度は,十数 m 程度の周期的な変動がみられた.TBMでは全断面で掘削するため,式(2)から求めた岩盤強度は切羽での平均値を表す.そこでTBMと対応させるために,本掘削機の掘削体積比エネルギーのトンネル横断面での平均値を,フロア部とアーチ部についてそれぞれ図-9に示した.この場合も舞子トンネルと同様に,十数 m 程度の周期がみられる.この周期は,図-9から分かるように亀裂間隔とほぼ一致する.TBMでは切羽を一度に掘削するために岩盤の平均的な硬軟しかわからないが,本掘削機では切羽面の分布として捉えられるため,亀裂などの状況が視覚的にわかり,地質構造を理解しやすいといえる.

カッタヘッド回転数が一定のTBMの場合,トルクは掘削エネルギーに比例する(Teale, 1965).したがって,式(2)は次のように書き直すことができる.

(掘削エネルギー)∝(岩盤強度)/(切り込み深さ)1.5   (3)

式(3)に基づいて,掘削エネルギーと切り込み深さの関係を近似し,図-5に破線で示す.この場合には,切羽1周あたりのカッタホイールの空転エネルギー(縦軸切片)は,前に直線で近似した場合の値 6.5 MJ より 50 % 程度増加して10 MJ となる.直線で近似した場合と比較して,式(3)で近似した場合の方が良好な一致をすると思われるが差はわずかである.

図-7に示した切羽 A,B,C における掘削体積比エネルギーと ,式(2)より計算した岩盤強度の関係を図-10に示す.図より,掘削体積比エネルギーと計算した岩盤強度の相関はかなり良いことがわかる.特に計算した岩盤強度が 30 MPa (掘削体積比エネルギーが 10 MPa)以上では,両者はほぼ 0 を通る直線上にのる.したがって,ある程度の注意を払ったならば,掘削体積比エネルギーから岩盤強度を推定することが可能といえる.今回の高取山(北行)トンネルでの調査では,図-9からわかるように,ほとんどの場合掘削体積比エネルギーは10 MPa 以上であり,岩盤強度と掘削体積比エネルギーは比例しているとみなすことができる.

図-10 掘削体積比エネルギーES と式(3)より計算した岩盤強度σCの関係