TBMの仕様と掘削抵抗の関連について
2.掘削抵抗の基礎式と本研究の目的

著者らが提案している,TBMの掘削抵抗から切羽の岩盤強度を推定する手法(福井・大久保,1997)を簡単に以下に示す.

ディスクカッタを用いた掘削試験の結果は数多く報告されている.実験方法としては,ディスクカッタを岩石に押しつけて,岩石あるいはカッタを移動させる.岩石の種類,カッタ間隔(隣接溝の間隔)および貫入量(カッタの押し込み量)などを変化させて,その時の背分力(カッタの押し込み力)および主分力(カッタ移動方向の力)を調べている.その結果をまとめると次のようになる.

1)背分力Fは岩盤強度σに比例する

2)背分力は貫入量pの0.5 〜 1乗に比例する

3)主分力Fと背分力の比は貫入量の0.5乗に比例する

本研究では福井・大久保(1997)にならい,背分力は貫入量に比例するとする.以上の関係を式で表現すると次のようになる.

     (1)

    (2)

ただし,a,aは定数である.TBMでは,ディスクカッタの背分力の合計が推力となる.また,個々のカッタの回転半径Rに主分力をかけたものの合計がトルクとなる.よって,TBMの推力,トルクは以下の式となる.

    (3)

       (4)

ただし,nはカッタ数である.ここで,式(3)中の岩盤強度はそれぞれのカッタ位置での単純平均値を表し,式(4)中の岩盤強度は各カッタの回転半径の重み付き平均値を表している.式(3),(4)より,岩盤強度は以下のようになる.

      (5)

      (6)

,cはTBMの諸元(掘削径,カッタ径,カッタ間隔など)により変わるが,同一のTBMで掘削した際には定数となる.定数c,cが決まれば,掘削中の推力,トルクおよび貫入量から,岩盤強度を推定することができる.TBMでは,亀裂,断層,風化などの影響を受けやすいこと,また,式(5),(6)は切羽全体の平均値なので,σを岩盤強度と呼ぶことにした(福井・大久保,2001).通常,TBMでは過負荷防止のために,推力,トルクは常時観測されており,貫入量は掘進距離とカッタヘッド回転数から算出でき,この値も通常観測されている.よって,現状のTBMの測定システムで岩盤強度を推定できることになる.

式(5),(6)は,TBMの掘削抵抗(推力およびトルク)から貫入量の影響を除去して,切羽での岩盤強度を求めようとするものである.いくつかのトンネルで,掘削抵抗から推定した岩盤強度をシュミットハンマー打撃試験結果や岩盤観察結果などと比較したところ,両者はほぼ一致し,式(5),(6)の妥当性を示した(福井ら,1996;福井・大久保,1997;福井ら,1998).また,得られた岩盤強度をいくつかの段階に分けることによって,岩盤分類が可能であることも既報(福井ら,1998;松本ら,1998;福井ら,2000)で示した.

今まで著者らは,式(5),(6)式から推定した岩盤強度が一軸圧縮試験やシュミットハンマー打撃試験結果と合うようにc,cを決定してきた.この定数はTBMの諸元によるものであるため,その諸元から算定できるはずである.そこで本研究では,c,cとTBMの諸元の関係について検討した結果を述べることにする.

本研究の第一の目的は,TBMの設計段階での使用を前提とした,より信頼性の高い推力やトルクの推定法を導くことである.TBMの設計に際して,推力やトルクは過去の実績や室内切削試験結果に基づいて推定されてきたが,施工データに及ぼすTBMの諸元(掘削径,カッタ径など)の影響に関して不明な点が多いので,この点を明らかにすることにした.

第二の目的は,掘削抵抗から岩盤強度を求める際に必要なc,cを,TBMの諸元からを推定する方法を導くことにある.掘削当初はTBMの操作に慣れていない点と,表層付近であるため岩盤が比較的軟弱な場合が多いことなどの理由でトラブルが発生しやすいので,岩盤強度を把握する必要性が高い.しかしながら,従来提案した手順に従って岩盤調査結果に基づいてc,cを求めるには,100m程度の区間にわたる掘削データが必要となり,その後にしか岩盤強度を求めることができなかった.この欠点を克服することを目指す.