TBMの仕様と掘削抵抗の関連について
3.TBMの諸元

著者らが整理した10本のトンネルに関するTBMの諸元を表1に示す.ただし,TEEトンネルに関しては文献(Grandoriら,1995)を整理した結果であり,それ以外のトンネルは,1mごとの施工データを整理した結果である.TBMの諸元については,トンネル技術協会(2000)に詳細に記されているので,そちらを参照されたい.ここでは,本研究で扱ったTBMの概略を述べる.

では掘削径が小さいものから順に並べたが,本研究で扱ったTBMの直径は2.6 m 〜 8.3 mである.現在までに掘削が完了した,国内のTBMの実績としては2.0 m 〜 8.3 mである(トンネルボーリングマシン入門連載講座小委員会,1995;南・森岡,1999)ので,本研究で扱ったTBMはほぼ国内実績の範囲に近い.本研究で対象としているTBMのカッタ径は,355.6 mm (14 inch)〜482.6 mm (19 inch)で,従来の実績290 mm〜482.6 mm(トンネルボーリングマシン入門連載講座小委員会,1996)をほぼカバーしている.

掘削径とカッタ径の関係を図1(a)に示す.掘削径が大きいほど,カッタ径が大きい傾向は見られるが,明瞭ではない.これは,TBMの製作会社によって設計方針が異なることが一因であろう.この他,カッタが摩耗しやすい岩種(例えば,花崗岩)のトンネルでは,カッタ径を大きくすることによって,摩耗しろを大きくし,摩耗によるカッタ交換回数を減らしたいとの考えから,平谷発電所導水路および香港柴湾送電線トンネルでは掘削径に対してカッタ径が大きくなっているものと考えられる.最近の傾向として,岩種に関係なく,徐々にカッタの大型化が進みつつあることも影響している.

図1(b)に示すように,掘削半径をカッタ数で割った平均カッタ間隔は,カッタ径が大きくなるほど,大きい傾向が見られる.ベアリングで支えることができる荷重の限界から,カッタで押せる荷重には上限値が存在する.表2(南・森岡,1999)に一例として示すように,カッタ径が大きくなると,大容量のベアリングを装着できるのでこの上限値が大きくなる.それにより,貫入量を大きくすることが可能となり,カッタ間隔を大きくする傾向がある.

表1では半数のTBMでポールチェンジあるいはインバータ制御によって,カッタヘッド回転速度が可変となっている.刃先とベアリングの温度上昇を抑え,耐久性を確保するために,ディスクカッタの最大速度(切羽における移動速度)には上限が存在し,掘削径が多くなるに従い最大カッタヘッド回転速度は小さくなる傾向が見られる.なお,表2に示すようにディスクカッタ径が大きくなると,この許容される最大速度は大きくなる.

図2(a)に示すように,設計推力F(MN)はほぼ掘削径D(m)に比例している.

F=1.71D (7)

カッタ間隔は掘削径によって大きくは変化しないため,各カッタの合力となる設計推力は,掘削径にほぼ比例することとなる.なお,トンネル技術協会(2000)に掲載されているTBMの諸元と比較したが,その傾向はほぼ同じであった.また図には,75台のTBMの掘削径と設計推力の関係をまとめたMellor and Hawkes(1972)の結果を示す.Mellor and Hawkes(1972)は掘削径に対する設計推力の上限と下限とによって示しているが,本研究で扱ったTBMでは掘削径の小さい場合,その上限を越えており,1972年以前に比べ設計推力が大きくなっている傾向が見られる.

掘削径と設計トルクの関係を図2(b)に示す.各カッタの回転力とそのカッタの回転半径をかけたものがトルクとなるため,設計トルクT(MNm)は掘削径の2乗に近い関係となっている.

T=0.050D (8)

式(8)に関しても,トンネル技術協会(2000)の諸元と比較したが,その傾向はほぼ同じであった.Mellor and Hawkes(1972)に示されている掘削径と設計トルクの関係を図2(b)に示す.推力同様,本研究で扱ったTBMはトルクも1972年当時より大きくなっている傾向が見られる.この理由についてはいくつか考えられるが,当時よりカッタ径が大きくなっていることが一因であろう.

設計推力と設計トルクの関係を図2(c)に示す.式(7),(8)より次式が得られる.

T=0.017F (9)

図には式(9)の関係も示したが,ほぼ一致していることがわかる.