TBMの仕様と掘削抵抗の関連について
4.施工結果

表1には各トンネルの岩盤強度,貫入量,推力,トルクの平均値を示した(Grandoriら,1995;河野ら,1994;福井ら,1996;福井・大久保,1997;福井ら,1998;松本ら,1998).表中の岩盤強度は掘削抵抗から推定した岩盤強度の平均値であり,花崗岩を主体とする平谷発電所導水路,TEE,香港柴湾送電線および舞子トンネルでは,比較的大きな値となっている.また,岩盤強度が比較的大きいTEE,小河内ダム導水路,香港柴湾送電線および舞子トンネルでは貫入量が小さい傾向も見られる.

既報(福井ら,2000)で述べたように,TBM工法では掘削ずりの排出能力や,支保の建て込みなど後続作業で掘進速度が制限される.そのため,種々の要因を勘案した上で目標値をあらかじめ設定し,この速度をなるべく維持しようとすることが多い.式(3),(4)からわかるように同じ貫入量で掘削した場合,推力やトルクは岩盤強度に比例する.岩盤が比較的軟弱な場合にはTBMの推力やトルクに余裕があるため,掘進速度が一定になるように推力を減少させたり,カッタヘッド回転速度を下げたりして調整する.他方,ある岩盤強度以上では推力あるいはトルクが設計値に近づくため,TBMが故障しないように推力あるいはトルクをある値で制限することとなる.そのため,貫入量が小さくなり掘進速度が低下してしまう.これを模式的に示すと図3のようになる.図3において領域Tでは後方設備の制約から掘進速度はほぼ一定であり,領域Uでは推力あるいはトルクの制約により掘進速度は低くなる.どちらかの制約が支配的であったかは,平均推力を設計推力で,平均トルクを設計トルクで正規化してみればわかる.すなわち,正規化した推力あるいはトルクが1に近ければ領域Uの状態で掘削したこととなる.表1にその値を,図4に両者の関係を示す.で平谷発電所導水路および二軒小屋トンネルのトルクは設計トルクに近く,香港柴湾送電線トンネルの推力は設計推力に近い値であり,主に領域Uの状態で掘削していることがわかる.逆に,道志導水路,小河内ダム導水路および新湯山発電所導水路トンネルでは推力が設計値の20 〜 30 %,小河内ダム導水路および滝里発電所導水路トンネルではトルクが設計値の20 〜 30 %と小さく,領域Tの状態で掘削しており,推力あるいはトルクに余裕があったことを示している.