TBMの仕様と掘削抵抗の関連について
6.考察

6.1 カッタ間隔s/貫入量p

TBMではカッタ間隔をどのように設定すればよいかは,重要な問題である.カッタ間隔を大きく取りすぎた場合には,ディスクカッタが何度か同じ場所を通過した後,やっと隣接溝と連結するので,能率が悪く掘進速度が減少してしまう.逆に,カッタ間隔が小さい場合には,隣接溝との連結は,一度カッタが通過するとただちに生じるが,隣接溝との間隔が短いので能率は悪い.そのため,カッタ間隔には適当な範囲が存在すると指摘されている.例えば,Roxborough and Phillips(1975)ではs/p=7,Snowdon and Ryley(1982)では10の時に掘削体積比エネルギーが最小となるとしている.

表1に示したs/pを見ると,最も大きい舞子トンネルでは21となっており,一度のカッタの通過(カッタヘッド1回転)では隣接溝との連結は生じないと考えられ,比が最も小さい道志導水路トンネルでも6.8とRoxborough and Phillips(1975)の示した限界値とほぼ同じである.このように,現在のTBMでは一度のカッタの通過では隣接溝との連結が生じることはまれなことがわかる.

図9に,c/nとs/pの関係を示す.式(10)で示したように,c/nはカッタ径に強く依存性するためカッタ径も示した.同じカッタ径であれば,s/pによらずc/nはほぼ一定である.よって,今回整理した結果のみから判断すれば,カッタ数nを減らしてカッタ間隔を大きくした方が,TBMの推力は減少すると予測できる.しかしながら,トルクの変数cは,カッタ径だけでなく,掘削径の影響も受けており,詳しい検討は今後の課題としたい.

6.2 カッタ径による掘削抵抗の増大

初期のTBMや室内試験では,カッタ先端刃先角90゜程度のものが多く用いられたが,最近のTBMでは,平型カッタと呼ばれる,カッタの刃先が扁平状のものが用いられており,刃先幅は一般に10 mm 〜 20mm程度である(トンネル技術協会,2000).この形状のカッタが多く用いられるようになった背景には,先端のとがったカッタでは摩耗によってすぐに刃先が丸まり,背分力が増すとともにディスクカッタの外径が減少するため,最初からカッタ刃先を扁平状として,摩耗してもさほど刃先形状が変わらないようにし,カッタ寿命を延ばす工夫がなされている.表3にカッタの刃先幅の一例を示すが,刃先幅はカッタ径にほぼ比例している.

今回の研究対象としたTBMでは,カッタ径が355.6 mmから483 mmに増加すると,刃先幅は30 %程度大きくなる.Sanio(1985),Roxborough and Phillips(1975)のように,c/nは,岩盤とカッタの接触面積に比例すると考えればカッタ径が355.6 mmから483 mmが増大すると,c/nは50%程度増加することになる.しかしながら,図6(a)からわかるように,c/nは5倍になっており,接触面積の増大だけでは説明しきれない.

カッタ貫入の際の模式図を図10に示す.Roxborough and Phillips(1975)の理論的検討のように,カッタ直下の岩盤は圧砕によりほぼ一定の等方圧状態でその値は一軸圧縮強度程度と仮定されることが多い.しかし,先端が平らで幅広のカッタでは,中心部の応力が一軸圧縮強度より高い可能性がある.これは,縦横比が小さく扁平な試験片ほどみかけの圧縮強度が大きくなることと似ており,一種の形状効果とも考えることができる.

図6(b)に示したc/nが,カッタ径の影響を強く受けた点に関しては,c/nと同様に上記の事項がその要因として考えられる.式(11)のaであるが,これが掘削径の影響を強くおけている理由は判然としないが,ゲージカッタの影響が1つには考えられる.カッタヘッドの外周部付近ではカッタが斜めに配置されており,そのため,切羽に鉛直に配置されているものより,推力に比べトルクが大きくなりやすい.掘削径が小さくなると,斜めに配置されたゲージカッタ数と全カッタ数の比が大きくなる.そのため,掘削径が小さくなるとaが大きくなることが考えられる.