TBMの仕様と掘削抵抗の関連について
7.TBMの設計に対する提言とまとめ

本研究で得られた,図6図8は従来の知見と異なる.すなわち,カッタ径dによってc,cが大きく変化する点と,c,aが掘削径Dに大きく左右される点であり,これらを式で示すと次のようになる.

  (10)

  (13)

  (12)

,cの算定に際しては,各トンネルで実施した一軸圧縮強度やシュミットハンマー打撃試験結果と,式(5),(6)で得られる岩盤強度がなるべく一致するようにして求めた.このようにして求めたc,cに関して議論を進めてきたが,上記の内容を今一度,検証しておくことにする.

図11に推力の余裕度合を表す平均推力/設計推力とカッタ径の関係を示す.ばらつきはあるものの,最もカッタ径の大きい香港柴湾送電線トンネルでは0.8とほぼ限度に近い値で掘削しており,カッタ径が大きくなることによって,平均推力/設計推力は大きくなる傾向が見受けられる.

図12に平均トルク/設計トルクと掘削径の関係を示す.掘削径が最も小さい平谷発電所導水路および二軒小屋トンネルでは平均トルク/設計トルクが0.7と他に比べてかなり大きく,施工段階でトルクが不足気味であることがわかる.逆に掘削径が8 mと最も大きい滝里発電所導水路トンネルでは平均トルク/設計トルクが0.2とかなりの余裕が見られる.以上のように,単純に設計値で正規化した,施工中の平均推力および平均トルクからも,設計段階における予測よりも推力とトルクに及ぼすDやdの影響が大きかったことが伺える.

カッタ径が大きくなると,cが大きくなることを示したが,表2に示したように,カッタ径を大きくすることによって,カッタ1つあたりの最大荷重も大きくすることができる.そこで,岩盤強度100 MPaの切羽に,表2に示した最大荷重でカッタを貫入した時の貫入量を図13に示す.カッタ径355.6 mmの場合には11 mm貫入できるのに対して,394 mmでは6.2mm,432 mmおよび482.6 mmでは5 mmと,カッタ径の小さい方が貫入量が大きい結果となっている.また,式(13)からわかるように,掘削径が一定であれば,カッタ径の小さい方がトルクも小さくなる.掘削に要するエネルギーの大部分はトルクによって消費されるため,カッタ径を小さくする方がエネルギー効率もよくなるという結果となった.ただし,カッタ径を大きくすることによって,耐摩耗性は向上するために,いちがいにカッタ径は小さい方がよいとの結論を出せるものではないが,今後,設計においては考慮する必要がある.

本研究の結果に基づけば,TBMの推力およびトルクは次のように予測することができる.掘削径およびトンネルに現れる岩盤強度(一軸圧縮強度)は与えられており,カッタ径およびカッタ数は掘削径に応じて決定されるとする.式(10)により定数c,式(13)より定数cが求まる.式(3),(4)にc,c,岩盤強度,掘進速度を入れることによって,推力およびトルクの設計値が決定できる.当然ながら,適用範囲は本研究の扱った対象岩盤とTBM諸元の範囲内である.

TBM工法の場合,軟弱地盤に阻まれることがままあり,膨張性地山でシールドの周りを締め付けられたりした場合には,上記の方法で決定した推力では不足することも考えられる.また,切羽崩落などの場合には,カッタヘッドが土砂に埋まった場合には,トルクが不足することも考えられる.

本研究では,元となったデータは10個でありまだデータ不足の感がある.今後の課題としては,いくつもあげられるがまずはデータの量を増やすことによって,詳細な傾向を把握していきたいを考えている.