岩石試験用サーボ試験機の制御性
4.計算機シミュレーションによる検討

 前節では線形理論によって制御性についてだいたいの傾向をつかんだ。以下では、非線形構成方程式を使用した計算機シミュレーションによって前節の議論をさらに深めることにする。図1に示した系を微分方程式の形で書くと次のようになる。

Fd=(1−α/λ)Y (9)
=0.5(E−Fd)/ζ
0.5(dQ/dt)/ζ+Q=I
dY/dt=Q−Λ(dF/dt
=λ・F

負荷、したがって岩石試験片の構成方程式としては、最近著者らによって提案された次式を使用することにする(大久保ら,1987)。

dλ/dt=a(F)n(λ)m/t0 (10)

ただし、
=t・ωn
a={m/(n+1)}m/(n−m+1)

で、t0は変位がY0となるまでの所要時間t0にωnを掛けたものである。式中のmが大きいほど、強度破壊点以降でのFの低下は急激となり、ことにm>n+2ではクラスU特性を示す。すなわち、mを適当に選ぶことにより、強度破壊点以降での荷重−変位曲線の傾きあるいはβを加減することができる。

このβの他に、α、Λ、ζおよびt0を変えてシミュレーションを行い、その結果を図7にまとめて示す。これは、サーボ試験機を用いた試験において、制御信号Eと帰還信号との差Zが、Eの1〜2%となる限界を示したものである。αについては、0.2刻みごとに計算し、制御限界の最も高いαを採用した時の結果を示した。なお、ζとt0とは、制御性にそれ3ぞれ異なった影響を与えるので、別個に扱うべきであるが、ζの範囲を0.3〜0.7に限った場合、縦軸にとった2ζ/t0によってほぼ整理できる。通常の試験機の設定ではほぼこの範囲内で行われることが多いと思う。荷重−変位曲線の傾きβは、強度破壊点以降でも徐々に変化するが、荷重が最大値の1/2となる時の値を代表値と考え、横軸にとった。

図よりまず、Λが小さいほどしたがって、シリンダ内の油の剛性が高いほど、制御速度2ζ/t0が大きいところまで、よい精度で試験が可能であることがわかる。また、適当なαの設定範囲は、βに依存し、おおむねβ+0.2〜β+0.4の範囲内に設定することがよいことがわかる。αをこのように適値にとったとしても、βが大きくなるにつれて、 制御できる限界速度は、低下していくこともこの図からわかる。

さて、制御速度2ζ/t0の増加にともなって、荷重−変位曲線は、どのように変化していくかの計算例を図8(a)と(b)に示した。(a)の場合には、強度破壊点以降で荷重が最大値の1/2となるあたりのβは−0.2となっている。この場合には、2ζ/t0の増加とともに、荷重−変位曲線は次第に上方に移っていく。これは、変位速度を次第に大きくしていった場合の傾向でもあるし、またt0=ωn・t0であるので、試験機の応答性ωnが、次第に低下した時の傾向でもある。(b)の場合、クラスU特性を示す荷重−変位曲線は、2ζ/t0が大きくなると波打つようになり、その振幅が次第に増加していき、2ζ/t0がさらに大きくなると荷重は一気に低下するようになる。構成方程式中のパラメータを種々に変えて検討したが、その結果、強度破壊点以降の傾きβが小さいほど、2ζ/t0の増加による荷重−変位曲線の変化がゆるやかであるのに対し、βが大きい場合にはそれが急激であることがわかった。前述のように図7に示した基準は、ZがEの1〜2%となる時のもので、βの小さい時には、この基準を超えるとZが徐々に大きくなっていくが、ただちに制御不能とはならないのに対し、βの大きい場合には、基準をわずかに超えると制御不能となってしまう。

シミュレーション結果を検証するため、すでに(10)式のパラメータの値のわかっている三城目安山岩、河津凝灰岩、稲田花崗岩の3岩石を用い、試験機Bによって実験を行った。試験片寸法は直径25mm、高さ50mmであり、三城目安山岩ではα=0.3、河津凝灰岩ではα=0.3、稲田花崗岩ではα=0.6とした。制御速度を種々変えて、誤差信号がZがEの1〜2%となる範囲を求めた。その結果は図7に示すように、計算結果とかなり一致することがわかった。

試験機Aを用いて過去に行った実験結果(大久保・西松,1984;Okubo. and Nishimatsu,1985))を再整理してみたところ、これらも計算結果とおおむね一致することがわかった。ただし、この場合にはZの測定は行っておらず、X−Yレコーダの記録紙上から制御できているかどうかを判断しただけである。