一軸圧縮荷重下での岩石のクリープ特性
3. クリープ実験結果

3.1 一次クリープ領域における歪、歪速度の経時変化

図2は、載荷後1sでの値を原点とした稲田花こう岩のクリープ歪εの経時変化を片対数グラフ上に示したものである。図より、クリープ歪は約50s経過した後直線的に増加してゆき、その後急速に傾きを増して最終的な破壊に至っているのがわかる。これより、一次クリープ領域では、クリープ歪が経過時間の対数に比例するという対数クリープ則が成り立っていることがわかる。このことは、他の試料でも成り立っている。よって、一次クリープ領域においては載荷後1sでの値を原点としたクリープ歪と経過時間t(s)との間には次式のような関係があることがわかる。

ε=a・log(t) ・・・(1)

直線部分において求めた(1)式のaの値を表2に示す。表2のうち三城目安山岩と河津凝灰岩についての数値は既報の実験結果(大久保・西松,1986)より求めた。稲田花こう岩、秋芳大理石、多胡砂岩に比べて、セメントモルタル、三城目安山岩、河津凝灰岩では(1)式の傾きaが大きな値となっていることがわかる。

図3に稲田花こう岩について得られたクリープ歪速度dε/dt(s−1)と経過時間t(s)の関係を両対数グラフに示す。図において、クリープ歪速度ー時間曲線は、はじめほぼ−1の傾きを持っているが、次第に傾きが水平に近付き、その後急激に増加しているのがわかる。載荷後10s経過した時の歪速度は、稲田花こう岩以外の試料では、既報にも示したとおり、ほぼ10-5s-1程度であったが、稲田花こう岩では、10−6−1程度であった。稲田花こう岩以外では1s以内に設定荷重まで載荷を行っているが、稲田花こう岩では、サーボ試験機を用いて定歪速度で約700sかけて載荷したため、初期の歪速度が小さくなったものと思われる。

3.2 三次クリープ領域における歪、歪速度の経時変化

図2のように、経時変化の対数を横軸に取ったのでは、三次クリープ領域での歪の変化を詳しく議論し難いので、残存寿命Tという概念を導入した(大久保・西松,1986)。

T=t−t ・・・(2)

ただし、tは破壊寿命、tは試験開始時よりの経過時間である。この残存寿命の対数を横軸に取り、各試料の実験結果を表わしたのが、図4である。図4より、多胡砂岩、セメントモルタル、秋芳大理石では、残存寿命が小さくなった時すなわち破壊に近付くとクリープ歪と対数表示による残存寿命との間に直線関係が見られ、次式で示されるような実験式が成り立っていることがわかる。

ε=a・log(T)+b ・・・(3)

直線部分において求めた(3)式のaの値を表2に示す。稲田花こう岩と河津凝灰岩では、クリープ歪−残存寿命曲線はかなり複雑に曲がりくねっているが、これを直線近似して(3)式に当てはめて求めたa表2に示した。表2より、秋芳大理石、セメントモルタルではaの値が小さく、三城目安山岩、河津凝灰岩ではaの値が大きくなっているのが目立つ。また表2より、セメントモルタルについては、一次クリープにおける傾きの方が、三次クリープの傾きの4倍程度になっているが、他の試料では、ほぼ同じ値となっていることがわかる。セメントモルタルを除き、一次クリープにおける歪の経時変化と、三次クリープにおける歪の残存寿命による変化が、定性的にはもちろん定量的にも、ほぼ同じになっている。

図5より、残存寿命が小さくなるに従い、すなわち破壊に近付くと、歪速度が次第に増加しているのがわかる。しかも図より、寿命の大小に拘わらず残存寿命の小さい領域すなわち破壊間近では、残存寿命と歪速度の間には、両対数グラフ上でほぼ直線関係が見られる。このことは、(3)式を時間で微分することによっても得られ、式の形で表わすと以下のようになる。

log(dε/dt)=−log(T)+b  ・・・(4)

ただし、 b=log(a・log(e))

である。ここで、eは自然対数の底である。(4)式におけるbの値を表2に示す。(3),(4)式は、既報で報告した三城目安山岩、河津凝灰岩についても成り立っており(大久保・西松,1986)、かなり一般的に成り立つものと考えられる。

(4)式を残存寿命について解くと以下のようになる。

 T=a・log(e)/(dε/dt) ・・・(5)

がわかっていれば、歪速度を測定することにより、(5)式を用いて、残存寿命を推定することができる。実際の岩盤の計測において、歪の絶対量を測定することは、困難であるが、歪速度なら比較的容易に測定することができると思われる。(5)式のような関係が一般に成り立つとすれば、歪速度が加速的に増加している状態において、歪速度だけで、最終破壊までの時間の予知ができることになる。

3.3 クリープ歪と歪速度の関係

図6にクリープ歪と歪速度の関係を片対数グラフ上に示す。図より、はじめクリープ歪が増加するに従い、歪速度が減少してゆき、ある所で最小となり、その後徐々に増加しているのがわかる。最小歪速度となった時のクリープ歪を表2に示す。表より、実験の範囲では、3・10〜4・10−3程度のクリープ歪になると、歪速度が減少より増加に転じているのがわかる。図6より、三城目安山岩、秋芳大理石、多胡砂岩、河津凝灰岩では、最小歪速度となった時のクリープ歪の所を軸としてほぼ対称となっていることがわかる。ここで、一軸圧縮試験における応力−歪線図とクリープ歪との関係を表すため、クリープ歪速度が最小となる応力と歪の値を図7に小三角形で示す。ただし、図7に示した応力−歪線図は、応力帰還制御(大久保・西松,1984)を用い、載荷速度10−5−1によって得られたものである。図より、三城目安山岩、秋芳大理石、河津凝灰岩及び多胡砂岩は強度破壊点以前、以降の応力ー歪曲線のほぼ中間に歪速度が最小となる所が存在していることがわかる。稲田花こう岩は、応力−歪曲線の内側に存在するが多少強度破壊点以前の曲線に近付いた所に位置しているのがわかる。一方、セメントモルタルでは応力−歪曲線内ではなく、強度破壊点以降の曲線の外側に存在しクリープ歪がかなり大きくなっていることがわかる。三城目安山岩、河津凝灰岩については、2つのクリープ応力で実験を行っている。図7(c)に示すように、歪速度が最小となる点は、破線で示した強度破壊点から除荷した線の上に並ぶ。除荷中の非弾性歪の変化は小さいので、このことは、強度破壊点における非弾性歪とクリープ試験における最小歪速度となった時の非弾性歪が同じ値であることを示している。換言すれば、応力の大きさに関係なくある量の非弾性歪が岩石内に蓄積すると、その後は加速的に変形していくことになる。

破壊直前、すなわち破壊の1s前における応力、歪の位置を小四角形で図7に示した。図より、三城目安山岩、河津凝灰岩、秋芳大理石、多胡砂岩では、ほぼ強度破壊点以降の応力ー歪曲線上に存在していることがわかる。稲田花こう岩では、多少応力ー歪曲線の外側に位置しており、セメントモルタルは、かなり外側に位置している。

3.4 各岩石における特徴

表2よりわかるように、稲田花こう岩では、一次クリープ領域での傾きaより、三次クリープ領域での傾きaの方が大きくなっている。また、図4において、歪速度が一旦急激に増加する所が存在している。この歪速度が極大となる時刻を基準時刻Tsとし、この基準時刻までの時間(Ts−t)と歪速度を両対数グラフに示した例が図8である。図より、基準時刻に近付くにつれて、歪速度が次第に大きくなり三次クリープ領域と同様の傾向を示すことがわかる。また、基準時刻からの経過時間(t−Ts)を横軸として整理したのが図9である。図より、基準時刻以降しばらくの間、一次クリープ領域と同様に対数クリープ則に従った変形の起こっていることがわかる。花こう岩では、試験片の側面が徐々に剥離していく。このような側面での局部破壊が積み重なって最終的に有効断面積が減少し破壊する。よって、図8のような歪速度−時間曲線が得られたのは、試験片の側面より岩石片が剥離したことが原因であると考えられる。稲田花こう岩では、図8に挙げた例以外にも、同様の傾向がしばしば現われた。このような現象が起こる原因について考えてみる。まず、側面が破壊し有効断面積が減少すると、まだ破壊していない領域での応力が増加し、その結果弾性歪も増加するであろう。しかし測定上は、この弾性歪もクリープ歪に含まれてしまう。その結果、一次クリープ領域での傾きaに比べて、三次クリープ領域での傾きaの方が見掛け上大きくなったのであろう。

多胡砂岩は、図7(a)よりわかるように、強度破壊点以降、応力−歪線図が負の傾きを持つクラスT岩石に分類され、一軸圧縮試験を行うと強度破壊点以降徐々にせん断面が形成される。よって、三次クリープにおいても徐々にせん断面が形成されてゆき、図4(b)のように滑らかなクリープ曲線が得られたものと思われる。一方、河津凝灰岩の一軸圧縮試験を行うと、強度破壊点以降、数回にわたりせん断面が急激に形成されることが観察される。よって、三次クリープ領域においても同様に、せん断面の形成が急激に起こり、図4(e)のようにクリープ歪−残存寿命曲線が歪曲するのではないかと考えられる。

セメントモルタル以外の試料では、歪速度が一定となる二次クリープ領域が明瞭に現われなかった。他方、図6(c)からもわかるようにセメントモルタルでは、かなり明瞭に二次クリープと呼ばれている歪速度がほぼ一定になる領域が現われることが多く、その歪速度は10−9−1程度であった。また、図7(b)に示したように、クリープ歪がかなり大きく、歪速度が最小となる点が、応力−歪線図内に含まれない点でも、他の試料と異なる傾向を示した。セメントモルタルの二次クリープ領域で卓越している現象としては、応力腐食に基づくクラックの進展が挙げられる。もしそうであれば、応力が一定であるので、クラック先端部の反応物の濃度が一定であれば、歪速度はほぼ一定となり(Andersonら,1977)、二次クリープ現象を説明することができる。ただし、応力腐食が起きているかどうかは、今回の実験では判断できない。