三城目安山岩のせん断強度の載荷速度依存性
1.はじめに

岩石の強度・変形の時間依存性は,岩盤構造物の長期安定性を評価する上で重要な特性であるとの認識から,古くより多くの研究がなされてきた.載荷速度を変化させた時の強度の変化を調べる試験1)-8)は,クリープ試験9)-12)とならび,時間依存性を調べる手法として一般的に用いられており,圧縮応力下において数多くの研究結果が報告されている.

圧縮応力下では載荷速度依存性に関する知見はかなり得られているが,せん断強度,一軸引張強度など圧縮応力下以外での載荷速度依存性の知見8),13)-15)は非常に少ない.福井ら16)は三城目安山岩を用い,載荷速度を1桁増加させると一軸引張強度は6.5 %増加することを示した後,一軸圧縮強度,一軸引張強度,圧裂引張強度および破壊じん性値の載荷速度依存性に関する従来の結果をまとめ,載荷速度が1桁増加した際の強度の増加率はほぼ6.5%と,三軸圧縮強度を除く強度の増加率は定量的に同じであることを示した.

この結果は,様々な応力状態での載荷速度依存性が比較的単純な関係となっている可能性を示唆しており,もしそれを示せれば今後の研究を進める上で有用と考える.例えば,比較的試験が容易な一軸圧縮強度の載荷速度依存性を調べることにより,一軸引張強度など,他の応力状態での時間依存性(載荷速度依存性やクリープ特性など)を推定することができ,構成方程式のパラメータを減らすことができる.しかしながら,比較的,強度のばらつきが小さく,多くのデータが公表されている三城目安山岩でさえ,実用上重要なせん断強度に関する特性はほとんどわかっておらず,関係を定量的に議論するための知見は整っていない.

せん断強度は,土質力学の分野では実用上最も重要な特性であるため,直接にせん断強度を求める試験方法(直接せん断試験)が提案され,岩石についても同じ考えを適用して,せん断強度を測定することが試みられている17).Petit18)は一面せん断試験を行い,垂直応力による破壊進展状況の違いに関して論じている.しかしながら,岩石の場合,このような直接せん断試験結果の報告は比較的少なく,むしろ不連続面でのすべり特性を調べる研究が多く見られる.Indraratna & Haque19)は不連続面を有する軟岩を用いて載荷速度を変化させた実験を行い,載荷速度の増大によりせん断応力が増加すると報告している.地震関連の研究では,スティク・スリップに注目した実験的検討が多く行われており,見かけの摩擦係数はすべり速度に依存することが指摘されている20).地すべりに関して,斉藤21)はすべり変位が一次(変位速度減少),二次,三次(変位速度増大)クリープと似た特性を示すことを指摘しており,地すべりにおいても時間依存性の存在が明らかとなっている.Zhao8)はpunch試験を行い,粘着力の載荷速度依存性を調べ,載荷速度の増加により粘着力が増加するとしている.古住ら22)は来待砂岩と東北大理石を用いて,一面せん断疲労試験を実施し,せん断特性に時間依存性が存在することを示している.関連する研究はおこなわれてきたが,不連続面を有する岩石の研究がほとんどで,岩石のせん断強度に関しては,載荷速度依存性を示すかどうかすらわかっていないのが現状である.

本研究では一面せん断試験用に新たに二軸試験機を作製し,三城目安山岩のせん断強度の載荷速度依存性を調べることとした.さらに,一軸圧縮強度,三軸圧縮強度,引張強度の載荷速度依存性との関係を明確にした上で,破壊条件の載荷速度依存性に関して考察した結果について述べる.