三城目安山岩のせん断強度の載荷速度依存性
4.せん断強度と残留強度

(1) 載荷速度依存性

表-2に条件ごとのせん断強度を示す.せん断強度の載荷速度による変化を図-6に示す.図-6(a)は垂直応力10 MPaの結果であるが,ばらつきはみられるものの,載荷速度の増加によりせん断強度が増加していることがわかる.図-6(b),(c),(d)はそれぞれ垂直応力20,30,40 MPaの結果であるが,載荷速度の増加によりせん断強度は増加しており,垂直応力10 MPaの時と傾向的に同じである.

圧縮試験では,載荷速度を1桁変化させた時の強度の変化を求め,強度の載荷速度依存性を議論している5).本研究でもこれにならい,図-6で載荷速度の対数にせん断強度が比例するとして,載荷速度を1桁変化した際のせん断強度の変化Δτを最小二乗法により求めた.垂直応力ごとのΔτを表-3に,垂直応力との関係を図-7に示す.図-7には最小二乗法で近似した結果を直線で示したが,ばらつきが大きいもののΔτは1.3 MPa前後である.ばらつきが大きい理由の1つとしては,従来の研究5)-7),16)では載荷速度を4通り(4桁)に変化させたが,本研究では3通り(3桁)であったため,試験片毎のばらつきの影響が表れやすくなったためと考えられる.

表-2に各条件で得られたせん断変位2 mmでの残留強度を示すが,表-2からは残留強度の載荷速度依存性を判読することができなかった.Tabagus23)らは,一面せん断試験において残留強度で応力緩和試験を行い,時間の経過とともにせん断応力が低下したと報告しており,残留強度でも時間依存性が存在することが明らかとなっているが,せん断応力の低下の割合は,一軸圧縮や一軸引張状態で同様の試験を行った場合に比べ小さいとしている.今回の実験結果でも破断面ができた後の載荷速度依存性は比較的小さいので,試験片のばらつきなどの影響で,残留強度の載荷速度依存性を明らかにすることができなかったと考える.残留強度の載荷速度依存性は岩盤構造物の長期安定性などにおいて重要であり,せん断変位量がより大きくなった時の挙動などは今後の課題としたい.

(2) 垂直応力依存性

図-8にせん断強度と垂直応力の関係(せん断曲線)を示す.図-8(a)は,載荷速度5×10−5 mm/sの結果であるが,垂直応力とせん断強度にはほぼ直線関係が見られる.図-8(b),(c)は,それぞれ載荷速度5×10−4,5×10−3 mm/sの結果であるが,図-8(a)の場合とほぼ同様である.

垂直応力0の場合のせん断強度を区別するため,以下では粘着力と呼ぶことにする.図-8から求めた粘着力と内部摩擦角を表-4に示す.表からは,粘着力は載荷速度の影響を受けており,載荷速度が1桁変化した場合,粘着力は平均すれば1.1 MPaずつ増加している.他方,載荷速度によらず,内部摩擦角は46°であることがわかる.載荷速度の内部摩擦角への影響はなく,粘着力にのみに影響を与えており,図-7の整理結果と整合している.

図-8に残留強度と垂直応力の関係も示す.図-8(a)に示した載荷速度5×10−5 mm/sの結果では,垂直応力と残留強度にはほぼ原点を通る直線関係が見られる.また,直線の傾きは44°であり,内部摩擦角(46°)に比べてわずかに小さいが,かなり近い値である.図-8(b),(c)に示した載荷速度5×10−4,5×10−3 mm/sの結果も図-8(a)の場合とほぼ同様である.

(3) 粘着力の載荷速度依存性

以上の結果をまとめると,図-7からは載荷速度が1桁変化すると粘着力は1.1 MPaずつ増加しており,表-4からは載荷速度が1桁変化すると粘着力は1.3 MPaずつ増加している.この差は求め方の違いからであり,両者の平均値から,載荷速度が1桁変化すると粘着力は1.2 MPa(6.1 %)程度ずつ変化するといえる.

一軸・三軸圧縮試験や一軸引張試験でも載荷速度の増加により,強度が増加することが知られており,その関係は以下のような式で近似されている.

強度 ∝ C1/(n+1)        (1)

Cは載荷速度である.また,クリープ試験における,クリープ応力とクリープ寿命tの関係は次式で近似されている29).

クリープ応力 ∝ t1/n        (2)

粘着力に対して,式(1)が成り立つとして,n を求めると38となる.従来の研究において,三城目安山岩を用い,様々な強度に関して載荷速度依存性やクリープ試験などから求めたnを福井ら16)はまとめており,これと本研究で得られた結果をまとめて表-5に示す.各強度は表-1からもわかるようにかなり異なっているため,式(1)より強度の変化の絶対値は各強度に対して異なるが,変化率(載荷速度による強度の変化/強度)はほぼ同じであるので,一軸圧縮強度,一軸引張強度,圧裂引張強度,破壊じん性値(モードT)のすべてにわたり,nは38前後の値をとる.このように種々の試験でnはほぼ似通った値となっていることについて,大久保ら15)は,各強度は破壊じん性値の時間依存性と直接関係したものであり,試験法によらない可能性があるとしており,今回実施した粘着力に関しても同様の結果となった.