三城目安山岩のせん断強度の載荷速度依存性
5.考察

水田ら31)は,Protodjakonovの装置を用いた一面せん断試験における応力状態の弾塑性計算を行い,破断面に沿った応力分布は不均一であるが,破壊の進行の過程で応力分布が均等化するため,鉛直方向から20 〜 35°(せん断応力と垂直応力の比にすると1.4 〜 2.8)の角度で載荷すればほぼ妥当な結果を得ることができると述べている.本研究では二軸載荷装置を用いているため,Protodjakonovの装置と応力分布は多少異なっているものと考えられるが,せん断強度と垂直応力の比は,1.4 〜 2.8とほぼ水田ら31)が推奨している範囲内にある.

山口・西松17)は,一面せん断試験を行って得たせん断曲線(垂直応力とせん断強度の関係)は三軸圧縮試験から求めたMohrの応力円の包絡線とほぼ一致すると述べている.

何6)の行った三軸試験結果から描いたMohrの応力円と本研究で得られたせん断曲線を図-9に示す.図-9では山口・西松17)の指摘通り,ほぼ一面せん断試験を行って得たせん断曲線はMohrの応力円の包絡線とほぼ一致しており,この点でも今回の試験結果は従来の知見と一致している.ただし,何6)は流離面と垂直方向から載荷しており,本研究で行ったせん断試験とは載荷方向が異なっている.この点は今後の検討事項としたい.

岩石の破壊条件としていくつかの式が提案されており,代表的な破壊条件を表-6に示す.表-6に示したこれらの破壊条件は,応力の次元を持った定数で無次元化することが可能である.Coulumbの破壊条件では無次元化に使用した一軸圧縮強度が変化しても,τ−σ線図上の破壊条件は変化しない.よって,この破壊条件では,一軸引張強度や粘着力は無次元化に用いた値に比例する.他の破壊条件でも上記と同様に考えると,無次元化に用いた強度に比例して他の強度は変化する.表-5で議論したように,載荷速度による強度の変化率はほぼ等しく,粘着力,引張強度(一軸,圧裂,曲げ),一軸圧縮強度の比は変わらない.よって,粘着力,引張強度(一軸,圧裂,曲げ),一軸圧縮強度に関する限り,無次元化した破壊条件は,載荷速度が変化してもそのまま使用できる.

山口ら5),何6),趙7)は,三城目安山岩の三軸圧縮強度の載荷速度依存性に関して報告している.3者が行った,載荷速度10−4s−1の時の各周圧に対する三軸圧縮強度を図-10に示す.図では山口らと何の三軸圧縮強度はほぼ同じであるが,趙の用いた三城目安山岩の強度が小さいことがわかる.各周圧に対する,載荷速度が1桁増加した場合の強度の増分Δσcを図-11に示す.図では趙,何の結果は周圧によらずΔσcはほぼ一定である.山口の結果は多少ばらつきがみられるが,論文中では周圧によらず,Δσcはほぼ一定であるとしている.以上のように三城目安山岩では周圧によらず,Δσcは同じ値であるというのが従来の結果である.また,強度の小さい趙の結果では,Δσcも小さくなっており,一軸圧縮強度において,Δσc/σcはほぼ6.5%であり,山口らと何の結果と同じである.

このような結果を満足する破壊条件は,表-6に示した中ではCoulumbの破壊条件のみである.

山口ら5),何6),趙7)の結果では,周圧が大きくなるとCoulumbの破壊条件より,次式で示すJohansonの破壊条件でB=0.5とした場合(Yanachの破壊条件)がよく一致する.

σ1= σc(1+σ3/σt)0.5       (3)

しかしながら,式(3)において,周圧40MPaでΔσcは一軸圧縮に比べ50%程度増加することとなり,三軸圧縮強度の載荷速度依存性を正しく表現することができない.表-6に示したCoulumb以外の破壊条件においても,三軸圧縮強度の載荷速度依存性は説明できない.