田下凝灰岩の長期クリープ試験と構成方程式
1.はじめに

地上における建設物や構造物には,やむをえず環境にかなりの負荷をかけてしまう恐れが常に付きまとう.これを克服する一つの手段として地下空間の利用が考えられる.地下空間にトンネルやドームなどの構造物,あるいは廃棄物の処分場などを設けることは,現在の技術レベルで可能であるし,さらにこれからの技術的な発展を考えると費用の面でも競争力がでてくると予想している.ただし注意しなければならないことは,一旦地下構造物を作ったら長年にわたる保守のことも考えねばならないし,寿命がきたからといってそのまま放置することもおそらく許されないことである(大深度地下利用技術調査小委員会,2000).したがって,地下利用にあたっては,地下構造物を充分慎重に計画し,できる限り長期間にわたって使用することを前提にするのが賢明とおもわれる.ばくぜんと長期間といったが,トンネルなどでは最低数100年,廃棄物の処分場などでは数1000年から数万年の使用が前提となるであろう(核燃料サイクル開発機構,1999).これまでの実績では,土木工学や鉱山学に限らず,設計に際して前提とされる使用期間はせいぜい100年位ではないかと思う.したがって,比較的短期間の使用に関わる物性はかなりよく調べられてきたが,長期間にわたるデータの蓄積はどの分野でも比較的少ない現状といえる.

本研究のテーマである岩石のクリープについて考えてみると,地質学的見地からの超長期にわたる現象解明の要求もあり,長期間にわたるデータの重要性に対する認識は,他の分野よりも深いと思われる.例えば,Ito & Sasajima(1987)は花崗岩と斑れい岩のはりのたわみを長年にわたって観測した.その結果をみると温度の変動などにより,たわみはかなり変化するものの,時間経過に伴うたわみの増加は否定できないように思われる.筆者がかかわった研究でも,西松・山口(1980)が引張クリープを,山口ら(1983),大久保・西松(1986),福井ら(1989),大久保・秋(1993,1994a,1994b),趙ら(1995)が圧縮応力下でのクリープや応力緩和を比較的長期にわたっておこなってきたが,さまざまな制約のためその期間は3ヶ月を超えなかった.たった一つの例外は,原位置のコンバージェンスなどを1年以上にわたって計測したことであった(大久保ら,1984a,1884b).

このような状況下で,長期間のクリープ試験をおこなうことにして,準備を1994年の春にはじめ(大久保ら,1996),現在までに,湿潤状態での田下凝灰岩を対象とした約3年間にわたるデータを2つ得たので発表することにした.以下では,試験経過と得られたデータの解釈を,構成方程式を交えて議論する.