田下凝灰岩の長期クリープ試験と構成方程式
3.実験結果

3・1 試験片#1と試験片#2の結果

図3にクリープ歪曲線を示す.縦軸のクリープ歪は,載荷開始後1s経過したときの歪を起点とした.載荷動作(バルブを開く)後,0.3sで目標とする荷重にほぼ達するが,若干の振動があることなどから,これらの影響がなくなった1s後を起点とした.横軸は時間の対数である.#1は1994年11月22日に実験を開始した.約1000sまで片対数グラフ上で滑らかに上昇していくが,その後傾きをやや増し,約10万秒後からは逆に傾きが緩やかになる.その後,300万s(35日)後からまた傾きを増す.一方,#2は1999年5月23日に開始した.1000s後までは#1とほぼ同じ傾向で時間経過にともなってクリープ歪は上昇していく.さらにその後も比較的滑らかな曲線を描いて歪は上昇していくことがわかる.

クリープ歪曲線の近似法は各種有るが(Kidybinski,1966;Parsons & Hedley,1966),その内もっとも簡単なベキ乗による近似を採用する.

   (1)

εは歪,σは応力,tは経過時間でα,ν,μは定数である.μをどのように決めるかには任意性があるが,μ=9よって1/(μ+1)=0.1として計算した結果を図3に示す.なお,#1と#2のασνは,それぞれ160×10−6と120×10−6(s−1/(μ+1))とした.#1では近似曲線を測定結果が波打ちながら往復するが,#2ではデータ点と近似曲線との乖離は比較的少ないことがわかる.

さて(1)式をtで微分すると次式が得られる.

   (2)

上で求めたασνとμを代入して計算した結果を図4に示すが,このように両対数グラフ上ではほぼ直線的にクリープ歪速度が減少していくことがわかる.また,このようにしてみると,#1と#2の差は小さくみえる.なお,#2では約3年後の歪速度は毎秒10−12程度であった.

3・2 過去の高い応力レベルにおける試験結果との比較

本論文で発表する実験をおこなう前に,比較的高い応力レベルにて田下凝灰岩のクリープ試験をおこなった(大久保,秋,1994a & 1994b).使用した実験装置は,本論文と同じ空気圧式クリープ試験機であり,測定装置もほぼ同じである.湿潤状態では,63%,68%,73%,78%,82%,87%,92%の7段階の応力レベルで試験がおこなわれ,各段階での試験片の数は8〜11個であった.これらのデータを再整理して,今回の結果と比較してみる.

クリープ寿命はばらつくが,各応力レベルから標準的とおもわれるものを一つずつ選択して描いたクリープ歪曲線を図5に示す.これからわかるように,経過時間が小さいうちはいずれもやや下に凸のクリープ曲線に従って徐々にクリープ歪が増加していく.その後,経過時間が増すと次第に傾きが増し,やがて3次クリープを経て破壊に至る.

図5のままでは各応力レベルでの結果が比較し難いので,次のような操作をしたクリープ歪速度曲線を両対数グラフ上に描いてみることにした.まず横軸の経過時間を寿命tcでわったtとする.こうすることによりt=1で全て破壊することになるが,応力レベルごとにクリープ歪速度が異なる.そこで,試行錯誤の後,クリープ歪速度にtcをかけたεを縦軸とすると,図6に示す様に曲線は2本の実線間の比較的狭い区間に入る.ことにtが小さい間のデータ間のばらつきは小さく,この部分の傾きはある程度の確度を持って議論できる.そこで,今回の実験結果を良く再現した,傾き−0.9の直線を引いてみたところ,tが小さい時の実験結果とよく一致することがわかった.ただし,tが大きくなると次第に両者の間に差が大きくなる.

今回おこなったのは低い応力レベルでのクリープ実験であるが,その挙動は,高い応力レベルのクリープ実験における初期の段階の挙動と似ているといえよう.